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『侵略者(バグ)の動きがコマ送りに見えます 〜絶望の未来から戻った平社員、世界最速の狙撃手として人類を救う〜』  作者: 水原伊織


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最終話:日報と、缶ビールと、新しい明日

日光絶対不可侵要塞での戦略会議が滞りなく終了し、各国軍の将校たちが次々と退室していく。


「佐々木顧問、本日はありがとうございました」


大和猛が帽子をかぶり、佐々木に向けてピシッと綺麗な敬礼を送る。


「ああ、お疲れ様。大和艦長も、ヤマトの整備よろしく頼むよ」

「ハッ! 次の『第4波』でも、我がヤマトの主砲でお望み通りの穴を開けて見せます!」


力強い言葉を残し、猛も作戦室を後にした。


静まり返った広大な作戦会議室。

一人残された佐々木は、深くスツールに腰掛け、大きく息を吐き出した。


(ふぅ……やっと一巡したか)


1周目の記憶では、大洗の地盤は沈下し、エジプトはアリの群れに噛み砕かれ、大阪湾からの猛攻によって関西戦線は崩壊していた。

そして日光の要塞など影も形もなく、人類は追いつめられて全滅したのだ。


だが、今は違う。


横須賀、大洗、エジプト、そして大阪湾。

すべてを完璧に『リスキル』し、未来の惨劇を片っ端から塗り替えてきた。

世界規模の統合部隊『A.G.I.S.(エイジス)』が立ち上がり、目の前には人類反撃の象徴である絶対要塞が聳え立っている。


ぽつんと静かな部屋で、佐々木はノートパソコンを開いた。


「さて……」


画面に表示されたのは、かつて見慣れた株式会社●●の社内インフラシステム。

営業二課・佐々木達也のグループウェア画面だ。


【日報作成画面】


佐々木はキーボードを叩き、文字を打ち込んでいく。


『業務内容:A.G.I.S.最高幹部会議への出席。および日光要塞の防衛構想策定。

備考:大阪湾での海将種撃破に伴う出張手当の申請について、山本課長へ確認予定。

所感:エジプトのビールも悪くないが、やはり日本の缶ビールが一番だと再確認しました。』


送信ボタンをポチッと押す。


数秒後。


ピピッ!


『佐々木くん!! 君は世界を救う会議の真っ最中に何の日報を書いてるんだ!? というか出張手当の申請書類が重厚すぎて経理部が泡吹いて倒れたぞ!!』


画面の右下に、山本課長からの悲鳴のようなチャット通知が飛んできた。


佐々木はフッと口元を緩め、パソコンをパタンと閉じた。


「よし、今日の仕事終わり」


会議室の窓から外を見やる。

要塞の向こうに、夕日に染まる美しい日光の山々が広がっていた。


ポケットから冷えた缶ビールを取り出し、プシュッと心地よい音を立てて蓋を開ける。


「未来は変えた。……次は、一頭残らず駆除して完全勝利といきますか」


どこまでも平社員のスタンスを崩さない最強の男は、夕日を浴びながら、美味しそうにビールを飲み干したのだった。




ご愛読ありがとうございました。

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