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某年1月2日。晴。  作者: あみれん


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34/34

その34

「えぇーーーーーっ!」


私と奥さんは同時に声を上げました。

これまで、腫れ物に触れるように維持していた二人の沈黙が破られました。

Kが「電車に乗った」、というクダリあたりから、「やるな」という予感と共に私の体は自然と臨戦態勢をとっていましたが、見事に突破された感じでした。


Kは私達の変化に気がついていないかのように、同じペースで話を続けます。


「でさ……次の瞬間、アレ、死んでねぇよ、オレ、そう思った」

「でさ、体が動かないんだよ。そしたら人がオレのいるところに降りてきてさ、直ぐに駅員も来たよ」


「”人”って……」


「普通の……乗客の人っつーの?知らない人だよ」

「で、担架に乗せられて、その後、病院に救急搬送された」


私は喉元に燻っている言葉を飲み込みました。


なんで…助かったの?ーーーー


こんな言葉が出かかる私自身の幼児性に、私は嫌悪感を感じました。


「それで入院。しばらく右半身が動かなかった」

「同じ部屋に入院している爺さんから言われたよ」


あんた、それ、あんたの叔母さんに救われたんだよ。あんたの叔母さんが「まだ死んじゃダメだ」、あんたにそう言ったんだよ。


「オレも、”そうかな〜”、そう思ってさ、拾った命だし、”大事にしよう”って思った」


私はビールを喉に流し込むと、大きく息を吐きます。


Kは今、私の目の前にいます。

Kは今、この瞬間に生きているのです。

そして、自由に動ける状態にあることも知っています。

しかも、私はこれまで、フィクションのようなK劇場をさんざん観てきました。

K劇場には慣れているはずでした。

なので、安心してK劇場の話を聞けるはずです。


ところが……


この20年間で、私の耐性が落ちてしまったのでしょうか。

それとも、K劇場は絶え間なくバージョンアップしているのでしょうか。

つくづく思います。


自分はこの男を何と呼べばいいのだ?


友人……違う。

飲み友……違う。

バンド仲間……これも違う。


「オレ、しばらく看護師に、下の世話をしてもらってたんだよ。看護婦、上手いんだよ、扱いが」

「ひょい、って感じでつまんでさ、サッと尿瓶に入れるんだよ。慣れたもんでさ」


Kは、ヒャヒャヒャ、と笑います。

私と奥さんは笑いません。


「で、ある日、来たんだよ、二人の男が病室に」

「紙をバッとオレにかざしてさ、『何で私がここに来ているのか、分かっていますね?』」


「そう言った」ーーーー

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