その12
相変わらず、ほぼ毎週末、私はKと呑んでいました。
私の奥さんは、それに対して文句は言いませんでしたが、呆れたようにこう言っていました。
「よくそれだけ話すことがあるね」
私は思いました。
――確かに……。
でも、毎回何を話していたのか、思い出せません。
恐らく、どうでもいい話を酔っ払いながらダラダラ話していたので、記憶に残らなかったのでしょう。
同じような話を毎回していたに違いありません。
でも覚えていない。
だから飽きることもない。
Kに対する“いやぁ〜な感じ”は相変わらず私の中で燻っている一方で、ほとんど気を使うことがなくなっていたKとの関係は、とても心地良かったのです。
そんな付き合いが続いていたのですが、ある時からKから“呑みの誘い”が来なくなりました。
二週間、三週間、一ヶ月……。
Kからの連絡はありませんでした。
さすがに変だな、と思い、Kの携帯に電話してみます。
呼び出し音は鳴っているようでしたが、Kが電話に出ることはありませんでした。
それから何度かKに電話してみましたが、やはり出ません。
何かあったな、とは思いました。
ですが、お互い住所を教えていなかったので、Kの家へ行くこともできません。
私はKに電話するのをやめました。
三ヶ月後の、ある週末。
私の携帯に着信がありました。
ディスプレイには、Kの名前。
私は電話に出ました。
「ああ、オレ。どう? 今から呑まない?」
いつものKの口調です。
私は、とりあえずKが無事だったことに安堵し、しばらく連絡がなかったことを切り出そうとしました。
ですが、やめました。
どうせKは、
「会ってから話すよ」
そう言うに決まっているのです。
私は「いいよ」とだけ答え、私の地元の店で呑むことになりました。
あの“いやぁ〜な感じ”が、また沸々と湧き上がってきます。
家を出て、いつもの店へ向かいます。
私は心の中で念じていました。
――頼むから、厄介なことにオレを巻き込まないでくれよなぁ〜。




