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氷光は希望となりて闇を切り裂く  作者: varugure
1章 天使、草原を旅す
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寄呪騎士パラレティック戦-2

 金属と金属がぶつかり合う音が空間内に響く。

 漆黒の剣が振るわれるたび、地面にある黒い液体は刃となって私たちに襲い掛かってくる。

 周りにいた寄生虫(触手)はその体を乗っ取ろうと執拗に向かって来るのだが、何とか回避することはできていた。

 フレイムの方もカースナイトの攻撃を防ぎながら他のものを回避するのは、結構ギリギリな感じだった。

 地面からの攻撃もうざいが……寄生虫がうっとおしい。

 何十、何百匹どころか……何万匹ものの数の寄生虫が一斉に向かって来るのだ。


「おい、これはちょっとやばいんじゃあないか? 触手がうぜー。」

「どうするの、燃やす? ちょっと数を減らさないと難しいと思うよ。」


 触手は『鑑定』してみたら、種族は寄生虫だったから、燃やせるはずだ。

 虫系なら大体燃やして倒すことが可能だし、寄生虫だったらなおさら効くだろう。


「思いっきり燃やしてしまえ。 虫だろうと触手だろうと燃やせば何とかなるだろう。」

「じゃあ、カスナイト任せても良い?」

「ああ、任せろ。 要するにいつもの感じでやればいいんだろ。」


 そうフレイムが言うと、早速カースナイトの注意を引き付けようと動き出した。


「くらいやがれ、『時空斬』!」


 青い斬撃がカースナイトと後ろの寄生虫たちを数匹切りつけた。

 寄生虫たちもフレイムの攻撃の方に反応して大半がそっちのほうに行ってくれた。


「よし、今あいつらはフレイムの方に意識が向いているから、私のところはだいぶ余裕が生まれてきたな。 先ずは自分の周りにいる寄生虫を駆除するか。 『黒焼剣』。」


 黒き焔は寄生虫たちを跡形もなく燃やそうと襲い掛かってきた。

 寄生虫たちは焔から逃れるべく、仲間を盾にしたりしていたが……。

 無慈悲にも、焔は盾になったものも、したものも、全てを燃やし尽くしていった。


「結構凄いなこの光景、なかなか見れるもんじゃないな。 黒い焔は瞬時に燃え広がるからねー。 密集しているところじゃ、危ないからなかなか使えないもんね。」


 少し時間が経っただけで、空間全体が黒い焔に覆われた。

 皮肉にも生きるために逃げまどっている寄生虫たちが、黒い焔を全体に広めているのだ。

 黒い焔によって寄生虫は大量に死んでいくが、それと同じくらいの量がカースナイトから出てくる。

 地面も黒い焔が燃え移り始め、周囲の温度が上がってきた。

 そしてついに、カースナイトのところまで黒い焔が燃え広がった。


「っ! ナ、ナンダコレハ?」

「熱っ! おい、氷天使。 お前それはやばいって、俺らが死んじゃう!」

「悪かったって、でも寄生虫たちはくたばったし、地面からの攻撃も止んだよ?」


 このことを何も知らなかった二人は困惑していたが、すぐに戦いを再開した。

 黒い液体って燃えるんだなーと驚いていたら、私は重大なことに気が付いた。


「あれ? 黒い液体は燃えるって……あ、ヤッバ!」


 地面にあった黒い液体は、気体になってこの空間を維持しようとする。

 また、黒い液体は壁となって空間と空間の間を遮断している。

 そして黒い液体は可燃性物質で、今も空間内の温度が上がり続けていると言ったら……。

 起こることは一つしかない!

 そう、ば・く・は・つ・だー!

 やばいな、防御魔法をフル展開して死なないようにしなくては!


「なあ、氷天使……なんか焦げ臭くないか?」

「フレイム、私の近くに来い! この空間もうすぐ大爆発起こすぞ!」

「は!? 何で!」

「いいから来い!」


 私が全力でフレイムを呼びかけると、フレイムはカースナイトとの闘いを中止して近くに転移した。

 カースナイトは私達を逃がさないとでもいうかのようにこっちに向かって走ってきた。

 爆発についてなんだが、空間遮断は意味ないし、普通の防御魔法も多分意味はないだろう。

 となると、直接体力とか再生力を上げて、自身の防御力を上げるべきだな。


「『遅延再生』『硬化』『命盾』『再生補助』!」

「『再生強化』、強化はこれでもういいか。 あいつを弱体化してやるか『腐食魔法』『耐性弱化魔法』『再生阻が――」


 魔法を唱えている最中で空間内が最高温度に達した。

 その時、空間内は大爆発が起き、視界が一瞬にして白色の光に染まった。

 耳が壊れるほどの爆発音が至近距離で聞こえ、カースナイトの断末魔が、かすかに聞こえた。

 空間が壊れる音が聞こえ、激しい衝撃が、爆風が私たちを襲った。

 ハンマーで強く頭を殴られた以上の衝撃を感じながら、私たちは意識を落とした。



「っ……んっ、ここは?」


 目が覚めたら、そこは先ほどまで立っていた草原だった。

 すぐ横を見ればフレイムが気絶していた。

 そして、私はカースナイトのことを思い出した。


「あ、そうだ。 カースナイトはどうなったんだ?」

「……っ! 痛っー、おおーちゃんと生きている。 良かったー。」


 私がカースナイトを探そうとしたら、フレイムも気絶から覚めたようだった。


「フレイム、何とかなったな。 だが、まだ終わりではないよ。」

「ああ、そうだな。 カースナイトがまだ死んでいるかどうか確認できていないからな。」


 周りを見回すと、体の大半が消し飛んでもなお動こうとしているカースナイトがいた。

 再生魔法もうまく働かないのか、傷は治りそうな気配はなかった。


「うっわ、こいつあれでもまだ生きているのかよー。 しぶといな。」

「でも、さすがにもう楽にさせてやるか。」

「そうだね、楽にさせてあげよう。」


 フレイムは剣を取り出し、それをカースナイトの心臓に突き刺した。

 このまま死んでたまるかと言っているかのように、最後まで抵抗していたが……。

 カースナイトの生命反応が消えたことを感知することが出来た。


「はぁー、ようやく終わったー。 疲っかれたー。」

「だな。 じゃあ魔石を回収して、毒消し草採取をしながら帰るとするか。」


 私たちはカースナイトから魔石を取り出し、死体は白焔で燃やして灰にしといた。

 残った鎧は持って帰ってもいいとは思うが、何か呪われていそうだから浄化した後に粉々にしておくことにした。

 今回の討伐クエストは予想以上に高難易度だったな。

 出来るだけ楽なクエストが良いなーと言ったのに、こんなボス級の奴を相手することになるなんて聞いていないよ。

 良かったー、天使ちゃんが無事で。

 ついでになんかヤバそうなものも死んだし、結果オーライかな。

 いざとなれば、うちのスライムを向かわせようかなと思ったけど……。

 問題なかったみたいだね。

――今日も仕事をサボる鑑定神

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