寄呪騎士パラレティック戦-1
私たちはカースナイトを倒すべく武器を振るったが、カースナイトに剣で虫を払うかのように簡単に弾かれてしまった。
そしてすぐに攻撃に移ったと思ったら、剣を弾かれて体勢を崩したフレイムに轟音と共に剣を叩きつけた。
金属と金属がぶつかり合う音と共に、身体が潰されていくような鈍い音も聞こえてきた。
「ガハッ!?」
剣で叩き切られたフレイムは地面に叩きつけられ、その衝撃で大地が割れた。
思いっきり直撃した為なのか、フレイムはすぐ起き上ってくるような気配はなかった。
「フレイム、大丈夫か! クッソ、こいついくらなんでも強すぎんだろ。」
「…………ああ、何とか、無事だ。」
心配になって声をかけると、しばらく時間が経った後に、返答があった。
フレイムはすぐにその場から撤退して、私のすぐそばまで戻って来た。
「氷天使、こいつはまじでヤバイ。 今までで戦ってきたやつの中でかなりヤバい部類だ。 はっきり言って、死なずに帰ってこれるか分からないレベルだ。」
「まあ、多分そうだろうとは思ってはいたが……ってそんなことよりも体は大丈夫なのか? さっき思いっきり直撃していただろ?」
「体の方は、まあ何とか大丈夫だった。 装備の異常なランクに助けられたよ。 潰れたり、折れたりした部分は再生スキルで何とかなりそうだ。」
いや、今ので問題なかったのかよ……。 流石だなあいつ、もう人間やめていない?
体は大丈夫でも、普通は痛みで悶絶するレベルだと思うんだけど。
あ、そっか。 そういえばあいつ、痛覚機能オンで何度も死んでいた変態の一人だったな。
そんなことをしていたら流石に体も慣れてくるか。
「そ、そうか。 まあ、体の方は大丈夫だったとして。 私たちはプレイヤーでゲーマーだよ。 特にムリゲー的な条件、難易度を何度も潜り抜け、クリアしてきたやつらだよ? 今更そんなレベル差がどうとか、体格差がどうとか、フィールドがどうとかで諦めるようなタイプだと思う?」
「いいや、むしろ望むところだ。 ムリゲーだろうと何だろうと突破するのが生きがいだな。」
「そういうことだ。 死なずに初見クリアをしろということぐらい余裕でやってやるよ! 行くぞ、フレイム! この異世界人を舐めているクソナイトにゲーマーの本気を見してやるぞ!」
「了解、この堅物ナイトをボッコボコにしてやるぜぇ!」
――光は消え、闇が世界を飲み込む……死と苦痛はいつも音無くやって来るものだ。
果てなき闇に落ち、かつての栄光が消えた今、我は世界の影であり闇である。
覚悟を決め、死と絶望に抗え。 異界からのモノよ。
我は貴様等を脅威と判断した故に全力を持って排除する。
全ては我の の為に――
唐突にそんなことが聞こえ、私たちはカースナイトを見たが、特に何か言ったような気配はなかった。
まあ、どんなことを言おうが関係ない。
向かって来るなら真正面から叩きのめすだけだ!
私たちは再びカースナイトに向かって駆け出し、切りつけようとした。
「ナンドヤッテモ――オナジコトダ!」
「さあ、それはどうかな?」
カースナイトは私たちを再び剣で叩き切ろうとしたが、それはもう見たから避けることが出来た。
カースナイトは避けられたことに舌打ちをしていたが、今度は魔法を唱え始めた。
「氷天使、あれを頼んだ!」
「オッケー、あれね。 『マジック・ジャミング』。」
私が『マジック・ジャミング』を唱えたら、カースナイトが発動しようとしていた魔法が空気に溶けて消えていった。
『マジック・ジャミング』とは、その名の通り相手の魔法発動を阻害して、不発させる魔法だ。
なぜ、これだけ日本語じゃなくて英語読みなのかは疑問なのだが。
発動しようとした魔法が不発に終わったことに驚いたカースナイトは固まった。
「氷天使ナイス、これをくらいやがれ! 堅物騎士、『白焔剣』!」
「なら、私からは『死滅照皇剣』!」
白い焔と暁の光がカースナイトの体を切り裂いた。
その体に深い切り傷ができ、遠くまで吹っ飛んだ。
激しい激痛が来たのか、倒れた後もしばらく痙攣していたが、だんだん傷口を黒い液体が覆っていき治していった。
そして、カースナイトは再び立ち上がった。
「再生持ちか……結構しぶとくなりそうな相手だな。」
「そうだな、だがあっけなく終わってしまうよりも全然いい。」
「相手は想定外の力量で驚いたみたいだな。 固まっているみたいだし。」
カースナイトは剣を構えて、今度はこっちに向かってきた。
先ほどは使わなかった血でできた剣を振るってきた。
剣を振るうたびに剣から血が周囲に落ちていく。
剣と剣が交差するたび、衝撃波が周囲に舞い、血の霧が発生する。
「何のために血を撒き散らかしているんだあいつ。」
「なんか、特殊なスキルがあると思うなこれは。」
しばらく振るっていたが、何度も受け止めているうちに消えてしまった。
だが、また血が体から出てきて剣の形をとった。
「にしても、周囲に血を巻き散らかす意味が分からないな。」
「空気が悪い気がする、もうそろそろ何かやってくるんじゃない? その時に分かると思う。」
「やっぱりな、一回くらってみないと分からないか……。」
「いや、わざわざ攻撃をくらう必要はないよね……。」
ふと、カースナイトの方を見ると……黒と赤の剣を交差し、打ち鳴らしていた。
周囲の空間が歪み始め、撒き散らかされていた血は私たち全員を囲むように動いていた。
カースナイトからはさらに黒い液体と霧が出てきて、私たちの視界をふさごうとしていた。
「な、なんだよこれは!? 結界系か? それとも――」
「――創世系だろうね。 あくまでもこれは予想だがな……。」
「だが、創世系とはいってもこんな……『野生に居ましたよ』的な感じの奴がそんな使ってくるようなものだったっけ?」
「まあ、多分劣化版だろうけどね。 下位魔法のような立ち位置かもな。」
水の滴る音が聞こえ、外からの音が一切聞こえなくなった。
今、ここと外界が遮断された瞬間だろうな。
光はほとんど届かないように作られているのかは分からないが、視界が晴れた今でもほとんど何も見えない。
見えると言ったら、底なしの暗闇だけだ。 近くにいるフレイムならかろうじて見えるのだが……。
「果てなき闇に落ちとはこういうことだったのか? 何か他にも意味がありそうな気がするが。」
「今そのことを考えていても、時間の無駄だ。」
「そうだな、これが終わったら考えればいいか。 今の私達じゃ何もわからないかもしれないし。」
「それよりも、あいつはどこにいる? さっきから全く見当たらないが……。」
暗闇の先を頑張って見てみると、そこに薄っすらとカースナイトが見えた。
黒い光を放……っているかは分からないが、何か禍々しい雰囲気を感じた。
何も無いところから黒い剣を取り出し、周囲からはカースナイトから出ていた触手が大量に現れた。
「あいつから出てきた触手が大量に出てきたよ……。 大量に集まっているところを見ると、気持ち悪いなこいつ等。」
「なんかぬめぬめしていそうだしね。 ただ、触手だけはちょっとな……。 てか、寄生虫に見えるし。」
「なあ、床から煙が出ているんだが、これは……?」
ふと地面を見ると、黒い液体に地面は覆われており、そこからは黒い霧を出し続けていた。
きっと、これがこの空間内を作り上げ、維持し続けているんだろう。
そして、その液体はカースナイトから流れ続けているから、いつまで経ってもこの空間が解除されることはないだろう。
試しに地面に『虚空砲』を撃つことにした。
爆発と共に地面が抉れ、元の地面が少し見えたのだが、すぐに元通りになってしまった。
「ちっ、やっぱり先にこいつを倒さないといけないのか。 この床……壊してもすぐ戻りやがる。」
「と言うことは、結界も同じだろうな。 ゲーマーの血が騒ぐぜ……この絶体絶命的な状況を乗り越えてやるか!」
私たちはこの危機的状況を乗り越える為、再びカースナイトと剣を交えるのだった。
光は消え、闇が世界を飲み込む……?
これは一体どういうことだ。
しかも、異界から来ただと!?
おい、バカ神! サボってねえで仕事しろ!
――バカ神の同僚




