第悟空(80)章:はじめてのろんこーこーしょー 05
「あ、あのさ。」
「はっ、なんでございましょう!」
「う゛」
……。コントか?
「……と、とりあえず落ち着いて欲しいかな、って。
うん、皆にも生活があるだろうし、できれば多めに渡して置きたい気持ちはあるけど、したら今度はこっちの取り分がなくなっちゃう。……と、いうわけで、俺は考えた。爺、小姓を呼んでくれ」
「は、ははっ」
北山が小姓を呼びに行く。今からやるのは、ある種の、そして明らかなものなんだけど、まあ気づくのは後世の人達に任せましょうか。
「呼んで参りました」
「おう。……えーとだな、前に作った小道具、あったろ。みんなに配ってくれんか」
「ははっ」
そして、小姓が配り始めたものを見て、皆が奇妙な顔をする。うん、それは想定済み。そして、今からやるのは、みんな想定してないでしょう。
「ではこれより、論功行賞改め御恩入札会議を行う!」
「は……は!?」
「小姓、説明!」
「ははっ。
……皆様方に配りましたのは、皆様の勲功を記すための紙に御座います。そして、その勲功に対して、殿が判断してそれを数値化し、その数値をまずは返します。
そして、数値を返された後に、その数値を以て、御恩候補権益を順に発表しますので、皆様方はその手持ちの数値を配分して、御恩を指名してもらいます。
そして、最も高い数値を申告した者が、その御恩の権利を得ます。そして、権利を得られなかった方は、数値を申告する前に戻して頂き、次の権益の指名をして貰います。
順次それを権益ごとに行っていって、権益の配分が終わってもなお勲功の数値が残った方は、次回の論功行賞までそれを持ち越して頂くと共に、数値の高い方から順に、殿に数値の保証のための感状を受け取ることになります。この感状は、数値の保証を兼ねたものなので、大切に保管していて下さいませ。
そして、重要なことは、数値が高い方は、複数の入札に挑戦して頂いても構いませんし、一つの権益に全数値を入れても構いません。
そしてもう一つの注意点としては、数値を書くための紙には名前を書かないで頂くことです。一人一人、殿が吟味致しますが、公平性を期すために、記名はせずに殿には誰がどの勲功を挙げたか判らない状態で、吟味して頂きます。
勿論、取り違えないように細心の注意を払いますし、それに一人一枚ずつの提出になるので、殿と対面せずに我々が間に入って、一人一人きちんと吟味することになります。
さて、何か質問はございますでしょうか?」
「と、殿っ!!!」
あー、案の定叫んだ奴がいたか。……って、斉藤んとこの嫡男じゃねーか。丁度良い、アイツに言えば、皆も黙るだろう。
「遊んでいるのでは無い、というのは、一応最初に言っておこう。と、いうのも、だ。論功行賞というものは、奉公を評価し、そして論じて御恩を与えるのだろう?
だったら、皆が納得するか、妥協するか、それは不明だが、希望するものを与えて、同時に奉公に適切な御恩を与えるには、この方法が一番手っ取り早いと思ったわけだ。
……ああ、当たり前だけど、落札対象の御恩に発表順序はないぞ。一応、あるにはあるが、皆には秘密にしてある。
まあ見てな、土地以外にも、恩賞というものはいっぱいあるんだから」
ざわつく家臣団。うん、それは一応、想定済み。
「ああ、草々。基本的に首級以外の奉公も、きちんと評価する予定だから。特に小荷駄や金創、奉行衆や忍びにもきちんと恩賞は与える。だから確り働けよ?」
「殿っ!!!」
「俺はいたって真剣だが?」
……斯くて、「古今未曾有」と噂される、垣屋続成家を象徴する論功行賞術、「奉公入札のこと」はここに発動した。
まあ言ってしまえば、オークション形式で払うのは金銭ではなく勲功を数値化したもの、ということではあるのだが、この「勲功を数値化したもの」を適切かつ公正に判断するのは、至難の業であった。そして、続成は案の定、その数値計算に於いて、とんでもない解決方法をもくろむこととなる……。




