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コイ  作者: 高泉 恭
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リンゴは何故赤い?


最近僕の頭の端に住み着いている疑問は、そのような単純でどうしようもない問いだったーーー

答えなど見つけられはしないような。

たぐり寄せられそうも無く、つかみ所の無い、とてもとても広大な謎だった。



ーーーあなたはどうして、僕の前にいるのでしょう。



やはりそれは今日も答えを見つけられそうも無く、夜は更けていく。







ぽちゃり。


水面がゆらめいた。池に棲む真紅の鯉が跳ねたのだろう。少しだけ背筋を伸ばしてみるが、ここ縁側からは鯉の姿など見えず、知れるのはやはり水面がゆらいだことだけだった。

あの池が映し出す漆黒の闇夜と満月が歪む。それを見ていると、非現実の世界の住人であるような気持ちになってしまう。空が歪み、月が円を失うなど、到底あり得ない話だからだ。ただ、美しい女の人が月に帰っていく話ならある、それも所詮つくり話だけれども。


遠くで鳥が鳴いている。いまこの瞬間、この暗闇のどこかを駆けている。


たまにふと思う。夜のこの池は現実を見せないと。なぜなら、これは決して闇夜と月しか映し出さないからだ。だから、実はそこで泳いでる鯉などここからじゃ見えはしない。変なものだ。


ひゅるりり、と、秋の夜に移り変わる間際の少し冷っこい夜風が肌を撫でる。そして身体をすり抜けていく。

夏の夜は好きだ。

僕をどこかの世界に連れてってくれるから。


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