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氷光恋愛  作者: グレンリアスター
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エピローグ

 地面に脱ぎ捨てていたローブを拾い、アリスに羽織らせる蒼。

 彼女は大剣を背負い、アリスを両腕で優しく横抱きする。


「さぁ……帰ろう」

「うん」


 蒼はアリスと共に研究施設から立ち去ろうとした。

 その時、


「待ちなさい!」


 男の切羽詰まった声が響いた。

 振り返るとそこにいたのは、眼鏡を掛けた白衣の男。

 眉に皺を寄せ、彼は額や首元から汗をにじませていた。

 そして男の手には、黒い拳銃が握られている。


「その子を返すのです」


 余裕のない声で喋る男。

 しかし蒼は恐れず、アリスを手放さない。


「君はなにもわかっていない。その子は人類の希望。この世界からモンスターを殲滅することができる聖女。終わろうとしているこの世界を救えるのですよ!?」

「……だから?」

「あなたがやっていることは人類救済の奇跡を奪っているのと同じです!このままでは世界は滅んで……!」

「滅べばいいわ。そんなもの」


 無機質な声で蒼ははっきりと告げた。


「アリスを犠牲にした平和な世界で生きるぐらいなら、クソったれな世界でアリスと生きたほうが幸せだわ」

「なっ!」


 男は目を大きく見開きながら、後退る。

 あまりの衝撃的な言葉に彼は驚きを隠せない。


「あなたは人類全てを敵に回すのですか!?」

「なら全てを敵に回すわ」


 全てを凍結させるような冷たい目で男を睨む蒼。

 彼女はアリスを強く抱き締め、静かで低い威圧の声で告げる。


「アリスを不幸にするものは全て凍らせる。どんな敵だろうと殺す。アリスが幸せになるのなら……私は……」




「化物になるわ」


 それは氷の女王の警告。

 私の大切なものに手を出す奴らは、命を奪うという強い意思。

 男は「ヒッ」と悲鳴を上げて、荒い呼吸を漏らす。

 手から拳銃が滑り落ち、彼は床に尻もちを付く。

 ガタガタと肩や脚、唇などを震わせることしかできない白衣の男。

 そんな彼に背を向けた蒼は、小さな唇を動かす。


「それと……ここから脱出したほうがいいわよ。崩壊するから、ここ」


 蒼は右手に持っていた装置のボタンをカチリと押した。

 直後、連続的に鳴り響く爆発音。

 部屋全体が大きく揺れ、男は驚愕する。


「な、なにを!?」

「ここに来る時、あちこちに爆弾をしかけたのよ。アリスを不幸にした場所なんて……存在しない方がいい」


 感情のない声でそう言い残す蒼は、アリスを抱えたままバイクに跨る。

 エンジンを起動させ、アクセルを回した蒼はその場から走り去る。

 小さくなっていく彼女の背中を、白衣の男は見ていることしかできなかった。


<><><><>


 崩壊していく巨大研究施設。

 それを遠くから見ていたアリスは、蒼の肩に頭を乗せる。


「蒼……本当によかったの?」

「なにが?」

「蒼がやったのは、政府に喧嘩を売ったようなものだよ?」


 心配そうに見つめてくるアリス。

 そんな彼女の頭を蒼は優しく撫でる。


「宝物を守るためなら化物に……本当の氷の女王になる。そう決めたから、いいの」

「蒼……」


 アリスは瞳を潤ませる。

 胸の前でギュッと拳を作る彼女を、蒼は愛おしそうな目で見つめた。


「アリス……私は伝えたいことがあるの」

「……なに?」


 蒼はアリスの頬を優しく撫でる。


「アリス……あなたと出会えてよかった。あなたの光が、私の氷の心を溶かしてくれた」

「うん」

「誰よりもあなたが大切。ずっとずっと……そばにいたい」

「うん!」


 頬を徐々に赤く染めていくアリス。

 蒼は自分の頬が熱くなるのを感じながら、自分の想いを言葉に乗せた。


「私はあなたを……愛してる」


 それは告白だった。

 ハンターとして孤独に戦い、生きてきた少女の愛の告白。

 それを聞いてアリスは涙を流し、口を閉じたり開いたりする。

 彼女は指で何度も涙を拭うが、それでも止まることはない。

 

「私も……蒼のことが!」


 アリスは鼻水を垂らし、涙を流しながら明るい笑顔を浮かべる。


「大好き!」


 アリスは蒼を強く抱き締めた。

 口元を緩ませながら、蒼もアリスを抱き締める。


「これから一緒よ」

「うん……ずっと……ず~とね!」


 お互いに唇を近づけ、重ねる二人の少女。

 愛の口付けをする氷の女王と光の聖女。

 そんな彼女達を、雲の隙間から差し込む太陽の光が照らす。


 まるで祝福するかのように。

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