253.リロトの過去⑤
ベンティ派はベンティが独自に考えたわけではなく、リロトと相談して立ち上げたということか。
ガニスはそこには触れなかったけれど、知らなかったのだろうか?
「ガニスさんは二人が相談してベンティ派を立ち上げたと知っていたんですか?教会で話を聞いた時はベンティ司祭が一人で立ち上げたような口調でしたが」
私はガニスに訊いた。
ガニスは困った顔をして言った。
「流れは全てリロトから聞いています。聞いた上でリロトから教徒奉事者をするように頼まれましたので。ただ、ベンティ派の誕生秘話としてはリロトを混ぜるわけにはいかなく」
つまりは、私たちに話してくれたのはベンティ派の誕生秘話だったということだ。
「その後アリソタ様は何度も何度もファボニウス派に戻るようにとルノソクの教会へ説得に来ており、相変わらず闇のオーラをまとっておりましたので心配になってリロトにも教徒奉事者として入ってもらうことにしました」
なるほど、リロトが今回の人生で教徒奉事者になったのはガニスの希望だったようだ。
「あらあら、影はリロトさんが前回の人生とは違う動きをしたから違和感を覚えたのね」
影が頷いた。
リロトは言った。
「ベンティさんに雷を落とした後、ベンティさんがどういう動きをするか見張っていたということですか?」
影が頷いてからリロトを指した。
リロトは「オレ?」と口にしてから訊いた。
「オレのことも見張っていたということですか?」
影は頷いた。
それを受けてリロトが影に訊いた。
「オレが黒い像と契約したあとも見張っていたということですよね?俺が何していたのかも見ていましたか?」
影は首を横に振った
リロトが意外そうな顔で「見てない?」と確認するように訊いた。
影は頷いてから、リロトを指し、そして影自身を指してから、仕置き箱を指した。
その動きを見てクレマンスが怪訝そうな顔で言った。
「おやおや、リロトさんに閉じ込められたということ?」
私たちは一斉にリロトを見た。
リロトが身に覚えがないと言ったような顔で「え?」と声に出した。
「オレはそんなことしてないです」
影は首を横に振った。
「あらあら、影はあなたがやったと言っているわ」
ロランスがそう言うと、影は首を横に振った。
「あらあら、リロトに閉じ込められたわけではないの?」
影は頷いた。
ファビアンが顎に手を当てて言った。
「リロトくんが黒い像と契約した直後に影は仕置き箱に閉じ込められたということか」
すると影が頷いた。
「おやおや、そうなの?つまり、あなたはリロトさんが黒い像と契約するところは見たのね」
影は頷いた。
ミレーユが少しばかり不満そうな顔をしてリロトに訊いた。
「黒い像が危険だという認識はあったのに、どうして今回の人生では黒い像に契約したの?」
リロトは困った顔をした。
「それが正確には分からないんです」
「分からない?」
「もしかしたら油断していたのかもしれません」
「油断?」
「先ほども話した通り、ベンティさんから黒い像と契約させられる方法を聞いていましたから、左手の薬指に針を刺され、その指を黒い像に押し付けらさえしなければいいと思っていたのです」
「違ったということ?」
「違ったのかは分からないです」
「あらあら、どういうことかしら?」
リロトが苦笑いをした。
「酔いつぶれたので」
私たちは一斉に「え?」と聞き返した。
「オレの最後の記憶はアリソタ様に酒を飲まされて、気づいたら記憶を失っていて」
「おやおや、酔いつぶれている間に契約させられたということね」
リロトは苦笑いのまま「おそらく」と頷いた。
ファビアンは影を見た。
「その直後に影は何者かによって仕置き箱に閉じ込められた」
影は頷いた。
「結局誰によって閉じ込められたのか分からずじまいか」
すると、ガニスが「あの」と言った。
「おやおや、何かしら?」
ガニスは仕置き箱を指した。
「その箱、私は見覚えがあって」
「あらあら、そうね。6回目の人生ではルノソクの教会に埋められていたのだったわね」
ガニスは困った顔をした。
「そうなのですが、私は人生を繰り返していないのでリロトの6回目の人生の記憶を私は持っていないです」
「あらあら、そうだったわ。ということは、今回の人生で見たということかしら」
ガニスは「はい」と答えた。
ガエタンが訊いた。
「それは本当か?」
「はい。あまりに特徴的な箱なので記憶違いではないと思います」
「おやおや、どこで見たのかしら?」
「ファボニウス大司祭が」




