表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/253

101.希望

 春子が勇者召喚に巻き込まれて召喚されたのは本当のようだ。


「サンバチスト様も勇者だけを召喚したつもりだったから、一緒にもう一人現れて驚いていたもの」


 サンバチスト様にとっても予定外のことが起きてしまったようだ。


「でも、ハルコには申し訳ないことをしたけれど、一緒に来てくれて良かったわ」


 遥は「良かった?」とクレマンスに聞き返す。


「召喚した時、勇者エイタがあまりにも幼かったのよ。召喚してから三日三晩ずっと泣き続けてね。ハルコがその間ずっと付き添ってくれてね。母親代わりになると覚悟を決めてくれて。勇者エイタも次第にハルコに懐いてくれるようになって、この世界で生きていく覚悟を決めてくれた」


 クレマンスは悪気無さげに話しているけれど、その話を聞いている遥は複雑そうな顔をしている。自分の親が突然奪われた上、その親が他の子の親代わりをしていたと聞いているのだ。あの日、春子が消えたあの日、遥もずっと泣いていた。私もつい、あの日のことを思い出して複雑な気持ちになった。

 遥はクレマンスに訊ねる。


「二人は元の世界に戻りたいと言わなかったんですか?」


「もちろん言ったわ。ハルコはあなたのことも話していた」


 クレマンスの回答を聞いて、遥はますます複雑そうな顔をする。


「でもね、無理だったの。サンバチスト様の召喚は異世界で死の扉に入りかけた人間を呼び出すものだから」


「死の扉?」


「死の扉にサンバチスト様が召喚の扉を上書きするの。その扉を抜けてこの世界にやってくる。もしも戻りたいというのであれば、召喚の扉を設置した場所に戻ることになる。つまり死の扉の直前ということなの」


 その話はハイリスのシンファルから聞いた話と一致していた。シンファルは死の扉のことは言っていなかったけれど、戻る場所は直前までいた場所と言っていた。

 遥は表情を失ったような顔で再びクレマンスに訊いた。


「もう元の世界には戻れないということですか?」


「その可能性が高いとは思うわ」


 遥の顔はさらに表情を失った。

 クレマンスは遥の表情を見て慌てた。


「おやおや、絶望しないで。可能性はゼロではないのよ」


 遥の顔に表情がわずかに戻った。


「ゼロではない?」


 クレマンスは遥の顔に両手を当てて微笑んだ。


「あなたたちの存在は希望なのよ」


 遥は目を開いて「希望?」と聞き返す。

 クレマンスは微笑んだまま頷いた。


「ロランスから話を聞いたときは驚いたわ。元の世界で竜巻に巻き込まれて、この世界にやってきたのでしょう?そこに死の扉がなかったとは言えないけれど、少なくともサンバチスト様の召喚の扉を抜けてきたわけではない。つまり、この世界とあなたたちの世界をつなぐ何かしらの方法があるということだと思うの」


 クレマンスの話に急に希望を見いだせた気がした。

 遥も同じ想いだったようで笑顔になっていた。

 クレマンスは私たちの反応に少し慌てたような反応をした。


「おやおや、期待はしすぎないで。その方法は私には分からないの。今はサンバチスト様も不在だから」


 そこにマルセルが反応した。


「サンバチスト様が消えた理由はクレマンス様もご存じではないのですね」


「ええ、あまりにも突然だったわ」


「予兆も無かったのですね」


「私もロランスと同じよ。突然結界が消滅したことでサンバチスト様が消えたことを知ったわ」


 私はクレマンスに訊いた。


「タイムリーパーからも聞いていないのですか?彼の以前の世界ではサンバチスト様は消えていなかったのですか?」


 クレマンスはしかめ面をした。


「おやおや、それを私も聞きたいのよ。でもね、今ビンルイがどこにいるか分からなくて」


 意外な回答だった。


「勇者パーティに同行しているわけではないのですか?」


「おやおや、私もそう思ってファビアンやガエタンに訊いてみたのだけれど、今は一緒にいないと言うの」


「今はということは、その前は一緒にいたのですか?」


「エンガ王国に入ってしばらくは魔王国側に現れるダンジョンまでの案内をしていたらしいわ」


「いつから一緒にいなくなったんですか?」


「いつからというのは分からないけれど、サンバチスト様が消える前には既に一緒ではなかったようよ」


「サンバチスト様が消えたこととタイムリーパーが勇者パーティから離れたことに関連は?」


「それも含めてビンルイに確認を取りたいのだけれど…」


 クレマンスは困ったような顔をした。

 それ以上の情報はクレマンスからは得られなかった。

 クレマンスは再びダヴィッドを呼び寄せた。


「彼女たちを勇者たちが暮らしていた家に案内してあげて」


 ダヴィッドはクレマンスの指示に「かしこまりました」と頷いた。

 私たちが部屋を出る間際、マルセルが思い出したようにクレマンスに話しかけた。


「クレマンス様はヴァッヂ王国にAクラス魔物が出るダンジョンが出現したことご存じですか?」


 クレマンスは驚いた顔をした。


「おやおや、そうなの?」


「はい、一週間ほど前にシャルタル王国ユドレスの冒険者ギルドの方から聞きました」


「サンバチスト様が消えた影響かしら。ベンチャ王国も警戒が必要ね。情報ありがとう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ