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12 悪役令嬢の勝利

 王都で起こったクーデターは、アグレシア公爵軍によって鎮圧された。

 まず、首謀者の一人であったジェイコブ騎士団長が捕らえられた。王城を占拠していた近衛騎士団は団長を失って混乱したところを制圧され、中にいたルミーリオ王子やその側近も捕らえられた。

 この時点で既に現国王のリュクスは死亡しており、国王殺しの罪でルミーリオ王子以下、関わった主要な貴族は全員処刑された。


「ふう。これからが大変だよ。国内にも国外にも、不穏分子はたくさんいるからねぇ。」


 父の言う通り、暫くは気を抜けないだろう。


 国王と王太子を失った国で、代わりに王となるのは、ルミーリオ王子のはとこにあたる人物に決まった。リュクス王の前の王は優秀な人物だったが子どもがなく、そこから、王家の血はやせ細っていた。

 新しい王を支えるため、父が摂政として国政を担う。新王は王になることが想定されていなかったから、教育不足なのだ。

 王国には4大公爵家と呼ばれる有力貴族4氏がいたが、今回の反乱に子息が関わっていなかったのはアグレシア公爵家のみであり、自然と、発言力ではアグレシア公爵家が頭一つ抜ける状況となった。


「まあ、戦争で勝ったわけではないからねぇ。他の公爵家は息子が暴走しただけで、それぞれの当主はクーデターに関わっていなかったようだし。うちが調子に乗って恨みを買いすぎたら内乱になってしまうよ。でも、今の優位のうちにできることはしないとね。」

「隣国にも気をつけないといけませんわよ。西の国の王は欲深いから。」


 私が指摘すると父は頷いた。


「そうだな。エドモンド、兵を率いて西の国境でしばらく軍事訓練だ。こちらに備えがあると思ったら手出しはしてこないだろう。」

「え、僕が行くの? 田舎とか嫌いなんですけど。」

「……お前は。いつまでも我侭な子どもじゃないんだぞ。いずれ公爵家を継ぐのだ。人手不足もあるし、これからは色々と仕事を回していく。経験を積め。」


 父の叱咤に兄は仕方なく従った。兄は愚かとまでは言わないが、父に比べると大分足りない。


「ふう。暫くは忙しいのか。嫌だなあ。遠くに出張したら、折角仲良くなった女の子たちとも会えなくなるじゃない。」


 兄はブツブツと文句を言っているが、案外、楽しそうな顔をしている。面倒でも混乱した状況を楽しめるのが、我が家の血筋だ。


「ねえ、関係各所を黙らせて、国が落ち着いたら、次は何するの?」


 無邪気に兄が聞いてきた。そう、これで終わりでは勿論ない。


「そうですわね。ふふ。次は、どうしましょうかね。ふふふふふ……。」


 楽しい私の日々は続く。











 お わ り 。 

完結しました。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

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