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勇者さま、山田であっています。
ーーー免許センター
13:00
「中村、さっさとやるぞ」
視力検査室の前で、腕を組み待ち構える勇者。
中村は、少し遅れて戻ってきた。
「あら?勇者ちゃん、もう終わってるわよ」
「……何がだ」
「視力検査。次は4番窓口ね」
「聞いていない」
勇者は眉間に皺を寄せる。
「言ったと思うんだけどなぁ」
軽く流す中村に、勇者はため息をついた。
ーーー4番窓口前
待合は人で溢れ、番号はまだまだ先だった。
勇者がドカッと椅子に座ると、その隣に中村も腰を下ろす。
「懐かしいわねぇ」
「何がだ」
「昔は、あなたの隣にいたのに」
「誤解を生む言い方はやめろ」
中村はくすりと笑う。
「……ほんと、変わらないわね」
「何がだ」
「さぁね」
勇者は不機嫌そうに視線を逸らす。
少しの沈黙。
「なんで、僧侶どもが市役所にいる」
「仕事よ」
「仕事?」
「生きていくためのね」
さらりと答え、中村は前を向く。
「ここ、意外と居心地いいのよ」
「魔物もいるがな」
「魔界があるんだから、当たり前でしょ」
「……」
勇者は、言葉を失う。
遠くで番号が呼ばれる。
「山田勇者さまー」
「……山田ではない」
立ち上がりながら、小さく呟く。
「はいはい、勇者ちゃん」
中村は、楽しそうに笑った。




