表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/33

第8話 公爵令嬢は鬼教官!? 拝謁特訓と『超えらい人』への口上。

 取り急ぎ、今すぐ研究というわけにもいかなくなったわ。

「シオン、礼節は学んだ!?」

「いや?」

「でしょうね! 参ったわ、先週言われていたのに…」

「えっと、皇王様に会えるってこと?」

 エラリーが首を傾げた。


「そういうことよ、いえね、ビアンカは細かいことは気にしないのだけど、随行員が誰かわからないから、少なくとも口上くらい言えるようにならないと…。シオン、今から特訓よ!」

「なんで!」

「なんでも! 退学とか嫌でしょ?」

「そりゃ困るけど、横暴じゃないか」

「わがまま言わない! 私も同席するから、お願い、最低限だけは覚えるようにして!」

「ええ…」

「今度ご馳走するから!」


 私もね、引け目があるの! なにしろ前日まで忘れてたんですから。学院長先生、もしかして不安になって来られたんじゃ…。いいえ、絶対そう、ああ、公爵家として恥ずかしいわ! せめて、せめて恥をかかないようにしなくちゃ…!

「まぁ、美味いものが食えるなら」

 シオンが単純で良かったわ!




「いいこと、シオン。まず、皇王様は他の貴族とは別物です。天上人です。雲の上の人です」

「…超えらい、ってことでいい?」

「……いいわ!」

 良くないけど、今はアリア皇国史を語る暇がないの。


「いい、覚えておいて。まず、シオンからの発言は許されません。直接会話するのもダメです」

「どういうこと!?」

「超えらい人に直接会話するのは恐れ多い、とかまぁ色々あるの! ともかく、正式な謁見なら、随行員がいるはずよ」


 ああ、随行員がアレフなら良いのだけれど! 公式行事だし、侍従長、もしかしたら典礼官が同座する可能性もあるわね。典礼官ってカスティリオーネ伯爵よね…厳しいのよ、あの人。私もビアンカと一緒に何度か雷を落とされたわ! もう子供じゃないんだし、完璧な作法をお見せしないと…。


「なんでフランソワが真っ青になってるの?」

「過去のトラウマよ! ともかく、ビアンカ皇王の隣におっさんが立ってるから、彼が何か言うまではしゃべっちゃダメ! あと、ビアンカ皇王を直接見ちゃダメ!」

「なんだよそれ、天井でも見上げてればいいのか?」

「皇王様より上を見るなんて許されないのーーー!」

「難しすぎだろ」

「とりあえず、靴、もしくは膝あたりを見て、ビアンカの! ちがう、ビアンカ皇王様の! 多分座ってるから!」

「多分って…」

「いいから、私を皇王だと思って、直立不動!」

「…こんな感じか?」

「ふらふらしない!」

「ええ…」

「重心は真下、真下よ! 右や左に偏っちゃダメ!」

「面倒だな…」

 姿勢だけで三十分かかったわ。


「…休憩しない?」

「し、仕方ないわね…」

 私も疲れてきたわ。リンダにお茶をお願いする。コーヒーは「ここぞ!」という時に取っておきましょう、高いし。



 お手洗いとお茶を済ませて再開よ。

「いいこと、シオン。おっさんがこう言うはずよ『ビアンカ皇王様は恐れ多くも貴殿に興味を持っておられる』、そうしたらこう返して『シオンと申します。ビアンカ皇王陛下、拝謁の光栄に感謝いたします』って!」


 一番簡単なやつにしたわ!

 私だと、そうね。

「アリア皇国が至宝、ビアンカ皇王陛下。拝謁の光栄、身に余る誉に存じます。 シャルロイド公爵家は長女、フランソワ・アリエル・ド・シャルロイドにございます。 太陽の如き陛下の御前にて、言葉を捧げるお許しを賜りましたこと、深く感謝申し上げます」

 くらいは言わないと「公爵家の令嬢は作法も覚束ないらしい」くらい言われるからね!


 なのだけれど。

「えっと…シオンと申します、ビアンカへい…か? はい…感謝します」

「全然ちがーう!」

 今度は二時間かかったわ。

「し、シオンと申します。ビアンカ陛下。拝謁に感謝します」

 …もっと短くしたわ。これが限界よ。

「つ、次は想定問答…なのだけれど…」

「…腹減った」

「そうね!」

 夕食の時間ですしね! 続きは夜!




「あふ…むにゃ…」

「フランソワ、フランソワ!」

「ふえ?」

 エラリーに小突かれて目が覚めたわ!

「フランソワ君?」

「は、はい、何でしょう教授!」

「この古文をだね…」

「えっと、『天なる父よ、我らが犯せし過ちを赦したまえ。至高なる御子の御盾みたてによりて、御国みくにの門は開かれん』でしょうか!?」

「…その通りだ。今度は寝ないように」


 バレてたわ!

 何って、翌日よ! ビアンカの巡幸よ! 私としたことが講義中に寝るなんてありえないわ…。そりゃ、古文のカスパー先生、ちょーっとボソボソ話すし、私にしたら知ってる内容ばっかりだから退屈、ってのもあるのだけれど、あいにく必修科目なのよね、ロスタリア古語。


 それは脇に置いておいて。

「で、シオン君の特訓はどうだったの~?」

 無事に? 講義が終わった後に、エラリーに尋ねられたわ。

「…何とかするわ」


 何とかなったわ、ではなく、何とかするわ、で察して頂けるかしら?

 口上はどうにかなった…なった、という事にしましょう。

 問題は想定問答よ、というか問題しかないわよね。シオンったら、すぐに「あー、知らねぇ…いてっ、し、知りません…」とか、「いや、俺にも…痛いって! お、お、俺…じゃなくて…わ、わた、わたくし、存じて…存じ…おり…ませぬ! です?」なんて状況で!


 ちなみにシオンが痛がっているのは私が定規(教鞭の代わり)で叩いたからよ。


「シオン君、良く逃げなかったね…」

「それだけは褒めてあげたいわ」


 今度、本当に美味しいものをご馳走しましょう…。何が良いかしらね。あの子、お肉ばっかり食べるし。少しは野菜も食べさせないと!


「お母さんかな?」

 エラリー、流石にそれは無いわ。


公爵令嬢のスパルタ教育(一夜漬け)の成果はいかに!?

…これ、科学小説のはずなんですが。どこ行ったのかしら。

どうでもいいけど、シオン君よく耐えますね。僕なら拗ねます。


※「面白そう!」と思って頂けたらぜひブクマを!

※本作は「カクヨム」および「アルファポリス」にも掲載しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ