サブストーリー① 漁師と鯨油と鯨肉と
フェンリル・ベルク沖にて…
「おい! テメェらまだ見つからねぇのか!」
船ごと包み込まれそう荒波の中で、セシルの怒号が響く。
8月30日、日暮れ前。
フランソワに『鯨を一頭』要望された直後である。
「お頭ぁ!」
「お頭じゃねぇ! 艦長だ! 見つかったか!?」
「へい! 間違いねぇ、クジラ船でさぁ! でっけいのを曳航してやがる!」
「おい、お前ら喜べ! 海賊旗よーい!」
途端に、甲板が歓喜で溢れ上がった。
「艦長ぉ! いいんですかい!?」
「何がだ!」
「バルトロメの旦那、置いといてよぉ!」
「構わん! 緊急事態だ! 全員戦闘準備!!」
ひゃっほぉおおお! と飛び跳ね、剣を抜き、銃を振り回し、そしてラム酒の瓶が割れ、回し飲みで乾杯!
その間にも、哀れなクジラ船との距離はみるみる縮まっていく。
「…セシル様?」
ヨナスが首を傾げた。
「なぜ海賊旗が?」
「…みなまで言うな」
クジラ船がこちらに気付き、逃亡を図ろうとした。が、名実ともにミルドガルド最速を誇るノイエ・エーテル号から逃げられるはずもなく、斧やら銛を片手に絶望的な交戦を決意している様子。
「おい、お前ら! 俺らはなんだ!」
セシルが問う。
「へぇ! 艦長! アリア一の海軍でさぁ!」
「バカタレ、今は海賊だ! あと今はお頭だ! いくぞ、海賊旗ラム・リーパー(ラム酒の死神)の力を見せてやれ! あと、あくまで「お話し合い」だからな! 分かったかこの低脳ども!」
何ヶ所かから「この前は「海軍」って言えていってやしたぜ」、というセリフは魔法を使って黙らせた。
そして、大砲を数発。停船させる。
「おい、そこのクジラ野郎! 鯨油をありったけよこしやがれ! これでいいか!?」
ちゃんと金貨を放り投げるのが、あくまでセシルであった。
「赤身も「強奪」したんですか?」
ヨナスが尋ねた。
「いや…オマケらしい…?」
船長は鯨油のみで満足するはずないと考えて、クジラ肉の中でも数%しか取れない、極上の赤身肉を多めに渡したのだった。
推奨BGM:『ヨー・ホー』(カリブの海賊より)




