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第14話 ギルテニアへ向けて出発! ちなみにイメージは伊賀の山越えです。

ストックが溜まったので、今日から完結まで毎日投稿に切り替えました。引き続きよろしくお願いいたします。

 出立は8月2日にしたわ。すんなり行っても往復で十日の日程だもの。旅の準備とか、学院への外泊届けとか、現時点の研究成果のまとめなんかで三日くらいは必要だったから。それに、一つ大事なことがあって。


「顕微鏡を持っていきたいの?」

 そう、セドリック先生から許可を頂きたかったの。顕微鏡は先生の私物だし…。

「無理を言ってすみません。でも、顕微鏡を改造できるなら、試したくて!」

「そうね…」

 セドリック先生、そこで少し悩んだわ。そして、ぽつりと言ったの。

「あの人も、喜んでくれるかしら」

「…先生?」

「ううん、ごめんね、フランソワさん。ええ、良いわ。ぜひ持って行って。そして、私に真実を見せて欲しいの。ごめんね、一緒に行けなくて」

 先生には息子さんがいるから、長くは空けられないの。

「いいえ…! ありがとうございます、セドリック先生! 大切に扱います!」


 ついでに、王都にも寄ったの。少し遠回りだけれど、セシルお兄様ももうすぐ出港のはずだし、多分ハーベストムーンの頃は海の上でしょうしね。あいにく、ローランお兄様はご不在だったけれど。

「8月10日には出航する予定さ。まったく、お姫様にも困ったもんだ、人使いが荒くてさ」

 セシルお兄様はそう言って肩をすくめたわ。


 参加メンバーは私、ニコラス、エラリー、それから。

「ホントに美味いものあるのかよ」

 シオンよ。この前、美味しいものをご馳走するって約束したでしょ。


 というのは名目で、護衛が目的よ。ギルテニアへと向かうレガリア街道は往来も多いし、王都もギルテニアも目を光らせているからまずは安心なのだけど。

「いやいやフランソワ、仮にも公爵令嬢だよ、何があるかわからないよ」

 というエラリーの勧めで連れてくることにしたの。ということで総勢四人、結構なメンバーよね。


 ちなみに。

「アルフォンスにはヴィクトールの事を調べてもらってるよ〜」

 とのこと。エラリーが押し付けたらしいわ。

 ちょっと暑いけれど、天気も良いし旅には最適、最初は皆、ハイキング気分だったのだけれど…。


「ねぇ、フランソワ」

 一番最初に根を上げたのはエラリーだったわ。

「…これ、いつまで登るの?」

「あそこまで?」

「いやいや、フランソワはん。流石にラテラル山には登りませんわ」


 そうなのよ。王都とギルテニアの間にはアルバ山地が横たわっているの。

 前も言ったけれど、王都って盆地でね。南も西も東も、山に囲まれているのよ。唯一、北側だけはセダンテ川があるの。割と山がちで、急流が多いアリアでは珍しく、緩やかに流れる川よ。なので水運が発達していてね。河口にあるエヴェイユ港までは船で一日の距離、なのだけれど。


 ギルテニアに向かうには山越えしかないのよね。ちなみに、エヴェイユ港から船で向かうと、半島を大回りする必要があるから余計に時間がかかるのよ。ざっと1週間くらいだったかしら。

 という事でレバント街道が一番の交易路になっているのだけれど。


「馬車は~。馬車とか!」

「無茶言ったらアカンで。こんな山、馬車が走ったらすぐにダメになるわ」

「諦めて、エラリー」

 大陸には広大な平地を活かした乗合馬車が発達しているらしいわ。猛スピードで駆け抜ける代わりに乗り心地は最悪、と聴いたことがあるけれど。


「というかさ」

 エラリーは相変わらず不満そうね。

「どうしたの?」

「なんで公爵令嬢のフランソワがのしのし歩けるのよぉ」

 そうねぇ。

「シャルルも坂ばっかりだし、本島と違ってシュタイル島はこれ以上の山ばっかりだし…割と山には登ってますから」

「シラカに比べたら平地だな」

 シオンの故郷らしいシラカのあたりはアリアどころか大陸でも有数の大山脈だからね。

「それを比較するのはどうかと思うわ」

「無理〜」

「というか、アリアに住んでたら山ぐらい登るやろ」

「あたし、バッサの生まれ~」


 バッサ島は本島の南西、サトウキビの産地…は前も言ったと思うけれど、あの島は確かに山らしい山はないのよね。それにしても。

「シャトーブリアン商会って、本部はシャルルじゃなかったかしら?」

「そーだけど、男爵家としての領地はバッサだよ。一面サトウキビ畑なの」

「そういえば…」


 悪く言うと成金貴族なのよね、シャトーブリアン男爵家って。本業の金融で稼いだお金を元に爵位を買ったわけだけれど、丁度後継者に悩んでいたバッサのある男爵の後釜に収まった…が創設の由来だった気がするわ。


 ともかく、なだらかな山道(エラリー的には人生初の急坂)を越えて、一つ目の宿場街、ルミナ・ポストに到着したわ。

「温泉…はないのね」

 がっくしするわ。山と言えば温泉、のイメージだったのだけれど。

「詳しくは知らんけど、アリアの温泉地と言えばもっと西の方やな。行ったことないけど」

 とのこと。たった三島だけれど、アリアってば驚くくらい色んな場所と地形があるわ。

 ちなみに、翌日はもっと急な、本格的な山登りになるのだけれど。

「やだ~!」

 エラリーが悲痛な声を上げたわ。


 峠の町、パッソコルが二つ目の宿場街ね。修験道の聖地でもあるらしいわ。アリアって他の大陸からしたら奇妙な国なのよ。ヤーヴェ教も入っているけれど、なんだかんだ昔ながらの神様を信じているというか…。


「あ、お社」

 エラリーが指さしたわ。こう言ったお社は割とどこにでもあるわね。学院にも小振りなのがあるのよ。教会派は眉を顰めているけどね。

「お参りしましょ」

「せやな、神さんは拝める時に拝まんと」


 二つ建てられた木柱が聖域の証、その奥の建屋が本殿よ。お社、なんとなく心地いい湿気と言うか、洗われるような空気感が好きなの。鬱蒼とした森に囲まれていてね。ここでディベートをしたら精霊論を支持してしまいそうな雰囲気があるわ。

 コインを放り込んでお参り。シオンが戸惑っていたわ。シラカヴェルにはお社はないのかしら?

「コインを入れて、柏手を打って、お祈りするのよ」

「やってみる」


 一緒にお祈り。私はグランド・ディベートでロッサム教授をコテンパンに言い負かすことをお願いしたわ。シオンは何をお願いしたのかしら。他人のお願いを尋ねるのは野暮、ってやつだから聞かないけれど。

 ちなみに、夕食は名物という、『花崗岩の石焼ステーキ』を頂いたわ。お肉は牛じゃなくてジビエなの。日によって変わるらしいけれど、今日は鹿だったわ。野性味溢れて都会じゃ味わえないシロモノね。

「花崗岩はな、アルバ産地の名産なんや」

 ニコラスが補足してくれたわ。

「ギルテニアでもようけ使っとるで。何しろ丈夫で加工台に最適なんや! 他にも石灰やら珪砂やら、色んなモノが採れるわな」


 三日目、ここからは下りよ。エラリーも元気になったわね。宿場街はポルタ・ポストと言うわ。街の外れに切通しがあって、そこから先はギルテニアみたい。

 それから、加工場らしい建物がいくつかと、海男にも負けない筋肉隆々の男たちが何人も。アルバ山地を振り返れば、王都から見える森林豊富な山の姿は消えていて、白くむき出しになった山肌が見えたの。アルバ(白色)山地の由来ってこれかしら? たしかに、花崗岩も石灰も白色の鉱物だからね。きっと男たちは採掘屋だわ。


 面白いのが、ポルタとギルテニアの境界に頑丈な鉄扉と門番がいたこと。槍と鉄砲で武装していて、割と本格的な装備よ。しかも24時間体制らしいわ。

「自治区やからな」

 ニコラスの補足、第二弾。

「町の治安は自分らで守る、そういう事ですわ」

 ニコラスは誇らしげよ。王侯貴族ではなく、自分たちで街を守る…。良い文化よね。でも、どうやって意思の統一を図るのかしら?

この前Twitter(X)で友人が『フリーレンって手ぶらなのが違和感ある』と言ってましたけど、まぁ言わんとしたいことは分からなくもないです。私も登山はやるので手ぶらで荒野を旅するのはどうなん…と。

魔法で何とかしてるんでしょうけど。フランソワらはどうしてるんですかね?(設定考えてないです)


※登山好きな方のブクマ&応援お待ちしてます! インドア派も歓迎!

※この作品は『カクヨム』および『アルファポリス』でも連載しています。

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