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第10話 シオン君の過去が解き明かされる…と言うほどの情報ではないです。

※第一部『魔法大会編』はこちらからお願いします!

 https://ncode.syosetu.com/n0962lq/1/

「あはは! それはシオンも災難だったわね! フランソワの指導は間違っていないわ、まぁ、アタシを読み切れていなかったかもしれないけれど!」


 カラカラとビアンカが笑う。お茶会よ。紅茶じゃなくてコーヒーだけど。


「もう、勘弁して、というかカスティリオーネ伯爵がいないならそう言ってもらえれば!」


 ヤケ気味にスコーンを齧り付いたわ。クリームもジャムもたっぷり、なのが私流よ。ビアンカは厳格なクリーム派だけど。


「すんません、ミルクもらえます?」

 シオンが挙手。


「ミルク?」

「そうなの、ビアンカ。コーヒーとミルクって相性がいいのよ!」

「それなら、試してみようかしら」


 アレフが手を叩くと、静々と女官が現れてミルクを持ってきたの。ビアンカにしては珍しく文句を言わない女官長よ。よく気づくのよね、いろんなこと。ちなみにコーヒーは予想通りセシルお兄様が仕入れたモノらしいわ。一杯銀リブラ…いいえ、ここでは考えることやめるべきね。


「あら、美味しい」

「でしょ?」

「よく知っているわね。セシルはご存じ?」

「いや…知らなかった。向こうではそのまま飲んでいたからさ」

「向こう?」

「コンスタン王国だよ」

「お兄様、コンスタンに行ってたの!?」


 えっと…コンスタン王国って、いわゆる「東側」、ルグ教徒の国だから国交は無いはずだけれど。

「お姫様の密命でね」

 セシルお兄様が意味ありげにウインク。皇王な。アレフがぼやいたわ。アレフ、少しお堅くなったかしら?

「聞くところだと、向こうではコーヒーが一般的みたいね。シオン、もしかして東方の出身?」

「いや、その…実は」

「実は?」

「生まれ、よく覚えてなくて」

「そうなの!?」

 私が素っ頓狂な声をあげちゃった。ビアンカがジト目で見たわ。


「友人じゃないの?」

「も、もちろん友人ですわ、ですが出自を深掘りするのはその…ほほほ」

 ただの研究材料、とは言えないわ、流石に!

「仲良いんですね、二人とも」

 シオンがいい感じに話題を変えてくれたわ。彼もあまり触れて欲しくないのかも。


「ええ、仲良しよ。昔からね。よくシャルロイド公爵家には遊びに行ったわ。フランソワと二人でイタズラしたり、アレフとセシルも混ぜて探検をしたり!」

「で、ローランお兄様に叱られるのよ」

「兄上は昔から厳格だからなぁ。公爵家長男ってのは大変だね」

「お前も公爵家だろ」

「アレフ、次男なんてのは気楽なもんさ。家を継ぐわけでもないし」

「そう言えば、ローランお兄様はお変わりない? 随分とお会いしてないわ」

「元気も元気よ、今日も判例集を片手にバシバシやってると思うわ」

 ローランお兄様、王立学院の卒業後は法制局に入ったのよね。極めてお兄様らしいと思ったわ。


「この前仕事をぶん投げておいたけどさ、『セシル、お前も手伝え』なんて言われてさ。僕は法令より人情派、って逃げてきた」

「…今度王都に寄ったら、何か持って行くわね」

 ローランお兄様の苦労が目に浮かぶわ。

「兄弟仲良くしなさいな。またすぐ出港なんだから」

「確かに、お兄様がアリアにいるのは珍しいような…」

「放蕩息子かな? 俺も一応官僚だからさ、色々あるんだよ」

「次のご出港はいつ?」

「八月の上旬かな、あいつらにも休みくらいやらないと。俺も欲しい!」

「あいつら?」

「乗組員さ」

「元海賊の、な」

 アレフが毒付いたわ。


「と、雑談も楽しいのだけれど、そろそろ本題に入りましょうか」

 このまま話し続けてたら夜になっちゃうしね。

 シオンが少し緊張を見せたわ。

「さっき、出自を覚えていない、と言ったわよね。今はどこにお住まいなの?」

「シラカヴェルです」

「シラカヴェル…?」

「随分と辺境だな」

「知ってるの? アレフ」

「シュタイル島の北の果て、シラカ山脈のどこかに『ヴェル』という集落があると聞いたことがある」

※作者註:シュタイル島…アリア本島の東にある島。シャルロイド公爵領が位置する。


「随分と遠いところね! 一人で暮らしているの?」

「いえ、叔父がいて…叔父の話だと、両親は事故で亡くなって…俺が幼い頃に引き取った、とか。あいにく、まるで覚えていなくて」

「そうなの…苦労したのね。それで、叔父様に育てられたのね」

「そうっす」

「王立学院にはどうして?」

「叔父の勧めで…お前の魔力なら通じるはずだと」

「確かに信じられない魔力だわ。魔法の師はいるの? 叔父様?」

「叔父も多少、魔法は使えるけど、教えてはもらってないっす。自然にできたというか」

「なるほど…」

 ビアンカが少し沈思したわ。


「それで、フランソワが調べてる、と」

「そうよ、でも、全然わからなくて。今のところ仮説も立ってないけど、そうね…シオンの魔法が特殊、なのはわかったわ」

「というと?」

「魔法大会で、気圧測定を行ったのよ。基本的に魔法が発動すると『加圧』されたわ。でも、シオンの魔法だけ、『減圧』したの。まるで質量を消しているみたいに」

「消してる…」

 そこでビアンカの手が止まったわ。どうしたのかしら。

「なぁ、フランソワ」

 代わりに、アレフが口を開いたわ。

「つまり、普通の魔法は『何かを加えている』、一方でシオン君の魔法は『何かを消している』ということか?」

「そうね、今手元にあるデータだと」


 そこでパン、とビアンカが手を叩いたわ。こういう時のビアンカって、何か隠してるのよね…。何かしら。余程のことだけれど。詮索するのも野暮よね。一応、今は皇王様なんだし。

「面白いデータだわ、フランソワ! また、データが集まったら教えて頂戴ね。でも、安心だわ。これならグランド・ディベートでロッサム教授をコテンパンにできるんじゃない?」

 そういえば。

「学院長も言っていたけど、グランド・ディベートって何かしら?」

「あら? セドリック先生から聞いてない?」


 聞いてないわね!

ビアンカ皇王って何を考えたんですかね。やっぱり闇属性なんですかね、シオン君。


※本作は「カクヨム」および「アルファポリス」にも掲載しております。

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