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【第二部開幕】魔法大会の裏で動く影。皇王ビアンカは黒髪の少年シオンに目を付ける――「一度、会いに行こうかしら?」

☆第二部公開開始です!

 第一部:魔法大会編 こちらからお読みください!

 https://ncode.syosetu.com/n0962lq/1

「あーーーもーーーー、あたしも行けばよかったーーーーー!」


 通例王城というものは静謐で厳かなものであり、咳き一つ許されない環境であるはずなのだけれど。


 少なくとも、アリア皇国においてそれは当てはまらない。否、当てはまらないわけではない。ただ、時折例外があるだけで(というには回数が多い)。


「政務があっただろ」

「そんなもの後回しでいいのよ、後回しで! 頭抱えても解決しない話ばっかりなんだし」

「いや解決してくれよ」

「できるならしてるわよ!」


 驚くなかれ、これが皇王ビアンカと親衛隊長アレフの日常茶飯事である。


 そもそも二人の付き合いは長い。長いというか、生まれた時から一緒、というのが正しい。


 三つ子の魂百まで、というがビアンカの場合は三歳どころか生まれた時から基本的な性格はまるで変わっておらず、我儘、横暴、その上で類まれなる超魔力、ついでに教師陣が舌を巻くほどの頭脳を持って生まれたという恵まれるに恵まれた女性だが、おかげで乳幼児の頃から懐かず、静まらず、ということでそれはもう何人も乳母を変え、メイドを変え、と散々に苦労をかけたのだ。


 そのビアンカが唯一懐いたのがアレフの母親だった。平民ながら胆力の塊のような彼女はビアンカを立派に……育てたわけではなくて、彼女はビアンカに王家としては余計な経験をこれでもか、と植え付けた。

 

 すなわち、平民としての生活である。


 アレフもその生誕からビアンカに振り回され続け、散々に絞られた……わけではなく、このアレフも武芸と知能に優れており、あるいはビアンカのせいで鍛え上げられ、気づけば王立イスタルシア学院に平民特待生として進学し、三年間みっちりビアンカの側仕え(下僕)を務め上げ、ついでに平民初の評議会員という名誉まで掻っ攫い、そのまま王城勤めになったわけであるが、流石に平民のままで登城させる訳にはいかぬと、ロックバード伯爵家の養子縁組させることとなり(その際に「アリア王家分家のシャルロイド公爵家のさらに分家のそのまた分家の…という具合に架空の「それっぽい経歴」がでっち上げられたのだが)、こうして一応貴族身分を得て、名実共にビアンカの配下、あるいは従者、もとい国家公認の奴隷におさまったという次第である。


 長々と経歴を述べたが、要するに二人きりになるとお互い地が出る、という事だ。


「で、フランソワは? 楽しそうな事、してるじゃない」

「ああ。あの子はやっぱり天性のものがあるんじゃないか。平民を従えてリーダー格だったぞ」

「あたしも鼻が高いわ!」

 お前の娘じゃ無いんだし、とは言わない。面倒ごとは極力避けるべきなのだ。


「それで、報告は受けたけれど。学院長自ら謝罪という名目で」

「魔吸槽は直ちに修復するのと、魔法大会の当面自粛、だな」

「自粛しなくてもいいと思うのだけど」

「今回は大きな被害がなかっただけで」

「まぁね。それから、黒髪のシオンとかいう子」

 ビアンカが声を潜めた。


「実際、なんなの? あの子は」

「わからない、としか」

「学院長は闇の眷属かもしれぬ、なんて言ってたけど」

「勇者じゃなくて?」

「どう思う?」

「俺にわかるとでも?」

「確かに勇者伝説はあるし、実在はしていたみたいだけれど、じゃあ彼はその勇者の子孫なのか、というのも不自然なのよね。私の記憶がある限り、この大陸で黒髪の一族がいるなんて聞いたことがないわ。それよりも、魔力測定の『黒色』の方が気になるもの」

「五大系統に該当色なし、イメージ的にも闇が合う…と」

「消去法だけれどね」

 ビアンカは納得していない様子。それもそのはず、闇魔法は古代ロスタリア統一時代よりも遥か彼方、聖者ヤーヴェ誕生よりも以前、いわゆる神話といわれる故事に残されているばかりなのだ。いわゆる創世記にはこのような記載がある。


 初めに、混迷(カオス)があった。


 混迷(カオス)の淵に、分かたれぬ光と闇あり。 聖なる神は『真白き光の精(ルクス)』を放ち、古き魔は『底無き闇の徒(エレボス)』を解き放てり。


 ルクスは詠唱す。すると白昼が敷かれ、大地を固め、生けるものを育み、ついには自らの似姿として「人」を創りたもうた。


 エレボスもまた唱えり。すると永夜を呼び、大地を腐らせ、命の灯を吹き消し、人心に争いの楔を打ち込んだ。


 永き相剋の果て、光の精は闇を世界の果てへと()い落とし、勝利を宣した。


 光の精はその肥沃なる土を撫で、祝福を授けてこう呼んだ。


 『中つ庭(ミルドガルド)』と。


「考古学者なんかは、シルバで発見された古代遺跡こそ神話の正当性を示すものだ、なんて言っているけれど」

「確証はないだろ」

「まぁね。ともかく、シオンとやらは経過観察ね…一度会いに行こうかしら?」

「どうやって」

「名目なんていくらでもあるでしょ。視察でいいじゃない。王立施設なのよ」

「誰が調整を?」

「もちろん」

「…時間かかるぞ」

 アレフが溜息を漏らした。こういうのは、大抵アレフの役目なのだ。


「あ、あと一つお願い」

「なんだ?」

「これ、もう何本か貰ってきて頂戴」

 レモンソーダの空き瓶である。

「…在庫があれば」

お陰様で無事に第二部開始にたどり着くことができました!

ビアンカ皇王とシオンの接触、ぜひご期待ください!


ーーーー

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※本作は「カクヨム」および「アルファポリス」にも掲載しております。

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