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魔力塔の姫君  作者: 夢子
令嬢生活

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イェネーブル王国のその後③

残酷だと思われる表現が出ます、苦手な方は飛ばしてください。(__)

 イェネーブル王国の国王のハンフリー・イェネーブルと宰相のサイラス・ロックスがいつもの如く会談を行っていると、(廊下)の騒がしさが室内へと伝わってきた。


「なんだ、やけに騒がしいな、ここには誰も近づけないように言っていたはずだが?」


「はい、そのようにしております。護衛も少し離れたところにいるのですが……何かあったのでしょうか?」


 外の様子を見ようと宰相が部屋の戸へ向かうと、バンッと勢い良く扉が開き、第一王子のヘイリー・イェネーブルが許可もなく入ってきた。


「父上、宰相、お久し振りですねぇ、お元気そうで何よりです」


「だ、第一王子殿下?!」

「第一王子、お前、何故ここに?! 今は大事な会議の最中だぞ! すぐに出ていけ!!」


 父親からの言葉(命令)を聞き、正妃に似た美しい顔で微笑む第一王子。

 ヘイリーの持つ色合いは、フリージアとよく似た金色の髪と王妃に似た青空のような水色の瞳だ。


 その見た目は王子様そのもので、残虐性があるとは誰も気づかない。

 年齢も三十となるはずだが、部屋に引きこもり中の(第二王子)のライリーよりもずっと若く見える美丈夫だ。


「アハハハッ、()()()会議ですか? ああ、ええ、そうですねぇ、貴方にとっては悪だくみも会議となるでしょう。ですが私はその無能な会議を目当てにここに出向いたのですよ。父上、貴方を引きずり落とすためにねぇ……」


「はぁ? 何をーー」


 ハンフリーが間の抜けた返事を返した瞬間、「【燃えろ】」と第一王子が魔法を唱えた。

 するとハンフリーの顔にボッと勢いよく炎が纏わりつき、ハンフリーは突然の攻撃に悲鳴を上げる。


「ギャー! 熱い、熱い! 早く、誰か助けろ!」


「へ、陛下!」


「宰相、動くな! お前も攻撃するぞ!」


「ーー!」


 顔が燃えて床に転がるハンフリーを助けなければと思いながらも、第一王子が恐ろしくて宰相は動くことが出来ない。


 熱い熱いと喚く父親を、第一王子は薄笑いを浮かべ楽し気に見つめる。


「ハハハ、良いざまだ、無様ともいいますがねぇ……」


 そして数分後、第一王子はハンフリーが言葉を発することが出来なくなったことを確認し「【消火】」と呪文を唱え炎を消した。


 顔だけに大やけどを負ったハンフリーは、顔中の皮膚が爛れ見ることも辛いほどの状態になっている。

 国王を知っている者が今のハンフリーと会ったとしても、誰も気付かないと言えるほどのありさまだ。

 呼吸も出来ているのか怪しい姿、宰相も思わず目をそらした。


「あ……ああ……だ、誰、か……」


「……陛下……」


 部屋中に焦げ臭い臭いが広がり、名を呼んだことで空気を吸い込んでしまった宰相は吐き気を催す。

 助けを求めるハンフリーの下へ駆け寄ることも出来ず、その場で口を押えた。


 きっと今の自分は酷い顔をしているだろう……


 殺人鬼を止めることが出来なかった名ばかりの忠臣。

 この先そう呼ばれることが宰相には想像が出来た。


「ハハハッ、父上、いい気味ですね! 第一王子であるこの私を王位から外そうなどと、戯けたことを考えるからこんな目に合うのですよ、ハハハハッ!」


 宰相とは反対に、第一王子には良い笑顔が浮かぶ。


 どうやら第一王子ヘイリーは、第二王子ライリーをこの国の王とし、魔力塔への魔力供給源としてヘイリーを入れるというハンフリーの考えに気付いていたようだ。


「次の王はこの私だ! それは誰にも変えることは出来ない事実! たとえ王である貴方が反対してもこの私が新国王だ! 私は必ず貴方よりも立派な王になる! この場でそう宣言してみせますよ、父上、アハハハハ!」


 楽しくて仕方がないと、待ちわびていた玩具を手に入れたような様子のヘイリー。

 子供のように嬉々としたその笑顔は、美しい顔の作りも相まって尚更残虐的に映って見える。

 

「さて、宰相……新しく国王となったこの私と今から会談とやらを始めようか?」


「……は、はい……ヘイリー陛下、宜しくお願い致します」


「ああ、それで良い、お前は素直だな……」


 宰相は新国王を認めるしかない。

 もしヘイリーの言葉を断れば、自分もハンフリーと同じように丸焦げになることは確実。

 人を痛めつける趣味を持つヘイリーならば喜んで手を下す、それが分かっていた。


「宰相、ではまずコレを……ああ、いや、失礼。前国王を魔力塔に繋げ、こんなものでも一応は王族だ、多少の役には立つだろう。国の為にも前国王には最期に大仕事をして貰おうではないか、それでこそ立派な引き際と言える、なあ、そうだろう?」


「はい……畏まりました……その通りに……」


「うむ、頼んだぞ」


 宰相は魔力塔を知る護衛を呼びだし、死にかけの前国王を布に包むと魔力塔へと連れて行く。

 第二王女の時と同様、奴隷に指示を出せば、もう動けなくなったハンフリーは道具と一緒。

 魔力を死ぬまで吸われ続けるしかなかった。


「陛下……申し訳ございません……」


 宰相は小さな溜息を吐き前国王を見送った。

 そして決意を固め元居た会議室へと戻る。


 するとそこには、第二王子のライリーと第一王女のモリーナが居て、二人とも顔色を悪くし椅子に座っていた。


 部屋に漂う空気から、何があったのかを二人も悟ったらしい。

 自分たちがこれからどうなるのか。

 不安を抱えた第二王子も第一王女も新国王ヘイリーの前、怯えているようだった。


ライリー(第二王子)モリーナ(第一王女)、お前たちに新たな国王として命令を出す。王族として北と南の塔へ行き、魔力を奉納しろ。それが王族としての義務だ、分かったな」


「あ、兄上、あの、私には魔力がありません、そんなの無理です」

「お兄様、私も魔法使いではないのですよ、だから魔力を奉納だなんて、そんなこと出来るわけがありません」


「黙れ、愚か者!」


「ひぃっ!」

「きゃあ!」


 バチッと音がして第二王子と第一王女の足元で火花が散る。

 幼いころから兄に色々と()という名のものを受けてきた二人は、小さな脅しでも恐ろしくて仕方がないようで、さっきよりも顔色が悪くふるふると震えていて気の毒なほどだ。


 だが宰相にはヘイリーに反抗し彼らを止める意思などない。

 宰相にだって家族もいるし、自分の命が惜しい。


 遊んでばかりの役立たずな王族を、命を懸けて守るほどの忠誠心などとっくに持ち合わせてはいなかった。


「いいか、お前たち、これは()()だと言っただろう? 自分に魔力がないのなら魔力を持つ者を作るか奪えばいい、学園を卒業していない魔法使いの卵でも、魔力持ちの平民でも、奴隷でも、何でも自分たちで見繕え! それが無理なら他国から盗めばいい! いいか、私は父上ほど優しくはない、出来ないなどという言い訳は今後一切聞かないぞ! もし私の命令が聞けないのならば、お前たちを王族から外し私の奴隷とするまでだ、いいな? 分かったな?!」


「ひっ! す、すみません」

「は、はい……分かりましたわ……」


 何度も首を縦に振り、言うことを聞くと答える第二王子と第一王女。


 ヘイリーの奴隷になるなど死刑宣告と同じこと。


 彼の虐待趣味の相手になるよりも、北と南の魔力塔暮らしの方がまだマシ。

 二人はそう判断したようで、ヘイリーは満足そうに頷いた。


「宰相、魔力が少しでもある奴隷を用意しろ。王家の血を引く奴隷がいたならならば赤子でもなんでも魔力塔に入れる。暫くはそれで魔力球を満たせばいい。前国王では数日も持たないだろうからな」


「はっ……畏まりました……」


 確かにハンフリーのあの状態ではもって数日といったところだろう。

 だが王家と血を繋ぐ奴隷を作っても、さほど状況は変わらない。


 そもそも子供はすぐに出来るものではないし、魔力持ちの奴隷などいるかどうかも分からない。


 魔力がある。


 それだけで重要視されるこの国では、魔力持ちの奴隷自体が希少だ。


 つまりヘイリーは他国の奴隷を買えと言っているのだろう。

 他国の奴隷の魔力を魔力球に注ぐ。


 そんなことは初めてで、魔力球にどんな影響があるのか不安しかない。

 だがヘイリーの恐ろしさの前、宰相は反論することなど出来なかった。


「おい、お前たち、こいつらを連れていけ!」


「はっ!」


 ヘイリー付きの騎士に引きずられるようにして部屋を出ていく第二王子と第一王女。

 喚き悲鳴を上げているが、ヘイリーにはその姿は逆効果。

 楽しそうな笑顔を浮かべにやにやと笑っている。


 どうやら二人は準備も何もなく、このまま北と南の魔力塔に送られるようだ。

 二人の妃や愛人は、追って南北の魔力塔に送り込まれるのだろう。


 中には多少は魔力がある者もいる。

 魔力注入者を探す間に()()()()とヘイリーは言っていた。


「さて、第三王女だったか? それが消えたと父上は言っていたなぁ、宰相?」


「は、はい、これまで魔力の元になっておりました第三王女殿下が消えてしまい、今現在この国は魔力不足の状況に陥っております」


「ふむ、そうか、まあ、第三王女の行方は放っておいていい」


「よ、宜しいのですか?」


「ああ、もし生きているのならばそのうちそれらしい者が見つかるはずだ。魔法使いはどこにいても目立つからな。他国に逃げたとしても成人すれば自然と情報は入るだろうし、特に大きな魔力持ちであれば注目を集めるのは絶対だからなぁ」


「はい、畏まりました……」


 確かに魔力持ちの子であれば必ず人目を惹く。

 隠蔽し搾取し続けていても、誰かしらの目に触れるのは確実。


 第三王女の見目は、幼いながらもとても美しいものだった。

 もしそのような者が奴隷に落ちていたとしたら、必ず噂にはなる。

 その時奪い返せばいい、ヘイリーはそう考えているようだった。


「それから学園の魔法科への他国からの留学生の受け入れは今後一切禁止しろ、今の国内の状況を探られては面倒だ」


「はい……」


「今後はこちらから留学生や研究者生を送り込むようにしろ。その際、他国の魔法使いの情報を報告させろ、良い拾い物が見つかるかもしれんからな」


「それは、その……他国の魔法使いを詳しく調べると言うことでしょうか?」


「ああ、そうだ、一年に一人ぐらい魔法使いが事故に合ってもなんら問題になることはないだろう。魔力が高い者がいれば事故死を装いこの国に連れてくればいい、そうすればこの国の魔法使いがこれ以上なくなることはない。上手くやればバレることも無いだろうしなぁ」


「……は、はい……そのようにさせて戴きます」


 上手くやれ。

 ばれないように他国の魔法使いを盗め、とヘイリーは言っている。


 出来る出来ないではない。

 宰相としてそれぐらいのことはやれ、と命令されているのだ。


 どんなに危険なことでもやるしかない。


 宰相は自分や家族の命を想うと頷くしかなかった。


「父上は、前国王は甘すぎたのだ……無いものは奪えばいい……たったそれだけのことなのに、愚かなものだ……」


 悲し気にそんな言葉を吐くヘイリーはどこか儚げで、本気でハンフリーの死を嘆いているように見える。


 だが実際はヘイリーが浮かべる青空のようなその瞳には狂喜の色しかなく、皆が己の命令に苦し気な顔で従う姿を見て楽しんでいるようにも見えた。


「この国は私がもっと強くしてみせる、新国王のこの私がな……」


 そう言って微笑んだヘイリーは、美しき悪魔のような面だった。

 

おはようございます、本日もお読みいただきありがとうございます。


第一王子ヘイリー登場です。

見た目は美しいですが中身は虐待大好きっ子です。

人が苦しむ姿が好きという性癖を持っています。


フリージア以外どうでもいいと思っているエルドレッドと会わせるのが今から楽しみです。w


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