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『私の体は、別な者が動かしている。普段は奴が主導権を握っておるから、こうして出ていられる時間は少ない』


『……そんな話を、信じろと?』


『それはお前の自由だ。しかし、私としては奴と契約するのは薦めぬ。まぁ、無理やりされるのが落ちだろうがな。――それほどまで、奴はお前を欲している』


 真剣で、一点の曇りも無い眼差し。見つめ合ったまま、しばらく、二人は無言だった。




『――――それが本当なら』




 そっと、お姉さんの片手が上がる。男性の頬にゆっくりと触れ、これが現実なのか確かめるように、もう片方の手も、頬に触れる。


『助けたのは――貴方?』


 戸惑う声。

 それに男性は、お姉さんの手に触れながら、しっかりと頷いて見せた。


『たまたま、だがな。――――話を聞いてくれるか?』


 頷くお姉さん。それに男性は、自分の頬にある手を離し、そっと両手を握った。


『奴はこれから、とある人物との子をつくるつもりだ。今まで人工的にやってきたが、それでは上手くいかなくてな。そこで考えたのが、母体を使うこと。だが王華の女では駄目だった。人も試したが、それも失敗に終わった』


 !? それ、って……。

 途端、洋館での光景が頭に過った。


『雑華を使うことには、当初抵抗があった。しかし――古い血筋である、お前の存在を知った。だから奴は、お前の体を欲している。断れば、地下にいる女は襲われるだろう。今は手を出すなと命令したが……』


 私も、長くはいられないからな、と男性は苦笑いを浮かべる。


『だから本式の契約を、私と交わしておけ。そうすれば――』


 言葉に詰まる男性。表情を見れば、どこか辛そうな様子に見える。

 言いたいことがわかったのか。お姉さんはありがとう、と笑顔を見せた。


『貴方がそこまで考えてくれただけで――私は、救われる』


 そして、とても嬉しそうに、男性を見つめていた。




『――では、早く済ませましょう』




 そう言って、お姉さんは男性の腰にある短剣を抜く。そして躊躇なく、自分の手の平を切りつけた。短剣を返すと、同じように、男性も手の平を切りつける。


『我真名は――レフィナド』


 傷付いた手を、男性はお姉さんの口元に近付ける。


『我真名は――エメ・スウェーテ』


 お姉さんも同じように、自分の手の平を男性に近付ける。


『『我らは、血の契約を交わす』』


 同時に言葉を唱えると、二人は互いの血を口にする。――そして。


『我名の意味は、洗練されし者』


『我名の意味は、愛を願う者』


 厳かな雰囲気で進む契約。

 そんな中、男性は徐々に顔を歪めていく。心配するお姉さんに、時間が無いと告げ、契約を済ませることを優先させた。




『『今、この時より――この身は、彼の者と永久とわに』』




 その言葉を最後に、二人はそっと、口付けを交わした。




『――――間に合った、か』




 苦笑いを浮かべると、男性は、肩で大きく息をしていた。


『悪い、な……もう。私っ、は』


『分かってます。分かってますから……』


 涙が、頬を伝っていく。溢れ出る涙をぬぐうと、お姉さんは男性に抱き付いた。


『これで私も……耐えることが、出来ます』


『ははっ……それはよかっ、たな』


 しばらく息が荒かった男性が、徐々に落ち着きを取り戻していく。




『――――余計な、事』




 途端、何が起きたのか。なぜか男性はお姉さんを組み伏し、妖艶な笑みを浮かべていた。


『アレとは楽しめたか?――なんだ、まだ行為に及んではいなかったのか』


 くくっ、と嫌な笑いがもれる。

 今までの雰囲気は一変。男性は明らかに、さっきまでの男性とは違っている。


『契約を奪われたのは残念だが、まあよい。これからお前には、私の子を生んでもらおうか』


『っ!――なら、早くすればいい』


 まっすぐ、睨みながら言うお姉さん。それが面白いのか、男性の表情は、とても楽しげに見えた。


『言っておくが、お前はあくまでも代理。幾ら行為を重ねようと、私はお前に興味は無い。――――欲しいのは』


 お姉さんのお腹に手をやると、勢いよく服を剥ぎ取る。


『古い血筋の子宮のみ。――お前はただ、体を奉げればいい』


 はははっ! と、甲高い笑い声を上げる男性。

 お姉さんは冷めた眼差しで、それを見ていた。


『早い話が、専属の玩具でしょう?――早く、すればいい』


 感情の無い声。

 それを合図に、男性はさっきの部屋で見た男たち同様、お姉さんを弄んでいく。




「いっ、……んんっ?!」




 ……やめ、てよ。




「っ、ぁが、、、っ……あぐっ」




 やめてよ……もうやめて!!




 堪らず出た叫び。でもそれが、目の前にいる二人に届くことはない。

 見てるだけ。ただそこにいることしかできないなんて……。




 ――――ザシュッ!

 目を背けた一瞬、何か、音が聞こえた。再び視線を戻せば――心臓を刺されたお姉さんと、嬉しそうに頭を撫でる、男性の姿が見えた。


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