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痛みが……全身を駆け巡る。声を出すのはおろか、呼吸をするのもままならない。指先を動かすことも痛みとなり、私はただ、耐えることしかできなかった。
『―――ゲテ』
まただ……痛みが増すごとに、頭の中で声が聞こえる。嫌な声ではないけど、今は何を言われても、答える気にはならなかった。
『――――ニ、ゲテ』
段々と、言葉として聞こえる。それを理解した時――よりハッキリと、その声が聞こえた。
『ソコカラ……ニゲテ』
この声は……石碑で聞いた時の声?
『――――シンジャウヨ』
死んじゃうって……。
なんて物騒な、と思いながらも、どうにか体を動かしてみた。ゆっくり上体を起こしていると、尚も声は警告を続ける。
『シンジャウ、ヨ?――マニ、アワナイ』
それきり、声は途絶えてしまった。
あの声が言っていたことが本当なら……すぐそばに、敵が来ていることになる。
「ぁっ……、くっ!」
体を起こすことができない。でも、ここら逃げなきゃと思い、両腕に力を込め、這うように進んだ。
外にいるであろう叶夜君を呼ぼうと、外側の障子に手をかければ、
「――――随分苦しそうだね」
私が開けるよりも先に、勢いよく戸が開いた。
開けたのは雅さんで、その姿にほっとしたのも束の間。
「いっ!?」
突然乱暴に、腕が引っ張り上げられた。
「あ、ごめんね。今飲んでないから辛かったんだっけ?」
口調はやわらかなのに……いつもと様子が違う。謝ってるけど、その表情は、どこか楽しげに微笑んでいるように見えた。
「……、っ」
「声も出ないんだ? よっぽど痛いみたいだねぇ~」
気のせいじゃ、ない。
雅さんは本当に……本当に、楽しそうに笑っていた。
怖くなった私は、叶夜君に助けを求めようとした。外とはいえ近くにいるはずだと思い、その姿を探すも――どこにも、その姿を見つけられない。
「――キョーヤは助けてくれないよ」
ニヤリ、怪しく笑う。
どういう意味かと思っていると、雅さんは私を引きずり、縁側へと連れ出した。
「っ?! き、ょ……」
理解――できなかった。
目の前に見えたのは、傷だらけで倒れている叶夜君。
これを……雅さんが?
違うと思いたい。なのに現実は、それを否定させてはくれなかった。
「ジャマするからさ、ちょっと本気出しちゃった。はははっ」
ここにいるのは、いつもの雅さんじゃない。私の知らない……別の人にしか見えななかった。




