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第2章 欲望交差 ―Emitted……True their―


 色々な光景を見るたび思う。

 これは――本当に私の記憶なのかって。




 様々な思いが流れ込む。

 それは――本当にあった記憶なのかって。




 私の中で、何かがうごめいている。

 まるで蕾が開くように、私の中の花は開き始めていて――。




 それを目指して、彼らの動きは激しくなっていった。


/1


 お昼休み。私は杏奈と食堂に来ていた。

 でも、いつも以上に食欲が無いというか。この前の夜の出来事が、頭からはなれないでいた。




「――――美咲?」




 何度目かの呼びかけ。そこでようやく、私は呼ばれていたことに気が付いた。


「ぼぉーっとしてたら、お昼終わっちゃうよ? 食べないの? あんなニュース見たら食べる気なくすのもわかるけど、ちょっとは食べないと」


「――――ニュース?」


「あれ、違った? ほら、今流れてる話」


 箸の先で、杏奈はテレビを指す。行儀が悪いなぁとは思ったけど、すると、血の海だっただろう、という言葉がちょうど耳に入った。

 ニュースの内容は、学校からも割と近い街で殺人事件が起きたというもの。被害者の証言によると、突然背後から切りつけられ、手首、足首とじわじわ切りつけられていったらしい。幸いにも大声で騒いだこともあり、近くにいた人が通報。重傷ながらも、一命は取り留めたようだ。

 余程その人に恨みがあるのかと思っていれば、〝無差別猟奇殺人か?〟とテロップが流れる。被害者は一人ではなく、重傷者二名。死亡者五名の、計七名が被害にあったらしい。

 そして死亡者の中でも三人の遺体は確認できず、地面に撒き散らされた大量の血だけを確認。他の二名の死亡者はとても無残な状態だったようで、手足がバラバラなのはもちろん、それがあちこちに捨てられているらしく、まだ全てを回収できていないとか。


「…………大きな事件、だね」


 元々食欲がなかったけど、今の話を聞いて一層食べる気をなくしてしまった。


「そうね。痴漢に気を付けなさい、なんて今朝先生が言ってたけど、それどころじゃないよねぇ。――美咲、一人で帰っちゃダメよ?」


 わかった? と言われ、思わず首を傾げていた。


「最近ぼぉーっとしてること多いし。それに家の周り、意外と暗いでしょ? そーいう所って危ないんだから、一人はダメだからね!」


「き、気をつけます……。でも、杏奈だって気を付けてよ? 確かバイト、遅くまでやってるんでしょ?」


「大丈夫。今親戚の人が家に来ててね、その人が迎えに来てくれてるから」


 ご心配なく~と、杏奈はにこっと笑みを見せた。

 迎えに来てくれるなら、確かに私よりも安心だ。

 殺人だなんて物騒だし、迎えに来てほしいとは思うけど……さすがに、おじいちゃんに頼むのは気が引ける。とりあえず、買い物は明るいうちに済ますようにしておこう。


「暗い顔しちゃって~。どーしたの?」


 背後から声がすると同時。両肩に手を置いたその人物は、横から顔をのぞかせる。


「あ、顔色もちょっと悪いじゃん。ってか、それだけで足りるの?」


 現れたのは雅さん。心配してくれてるみたいだけど、相変わらずの密着具合に、私は杏奈の隣に避難した。


「東堂くん、そーいうのやめなって。――嫌われちゃうよ?」


 学校では、雅さんは名前を東堂雅とうどうみやびと名乗り、イギリスとのハーフという設定にしている。

 叶夜君のように瞳の色を隠すのは大変らしく(面倒なだけにも見えるけど)、妥協案として、眼鏡の着用をするということで、本当の色で学校に来ている。おかげで、以前のように女性が群がる、なんてことは起きていない。

 ……でも、それも時間の問題のような気がするけど。背が高いってこともあってか、雅さんは色々な意味で目立つ。しかもハーフで親しみやすいというところが、徐々に人気を上げている(杏奈情報)らしい。


「本気でイヤがってたらしないって」


「充分イヤがってるように見えけど」


「ほら、日本のことわざにもあるだろう? イヤよイヤよも好きのうち、ってね!」


 ……それ、違うと思うけど。

 心の中で、思わず突っ込みを入れてしまった。


「ま、美咲の顔色が悪いのには同意するけど。――ねぇ、ホントに大丈夫?」


「食欲がないぐらい、かなぁ。これといって、特にどこか痛いとかはないんだけどね」


「無理して食べるのも悪いもんね。じゃあそれも下げておくから」


 さっと食器も持つと、杏奈は私の分まで片付けてくれた。




「――多分、それの後遺症」




 頬杖をつきながら、雅さんは私の左手を指差す。


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