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「オレならそんなの、許せないね」


「許せないって……なんでそんっ!?」


 言葉を遮るように、雅さんは私を押し倒した。素早く両手は押さえられ、逃げられない体勢にされてしまい――何が起きたか理解できなくて、ただまっすぐ、雅さんに視線を向けていた。


「話からすると……そいつは、仲間を置いて逃げたんだよ? そんなこと、オレは許せないね」


「だからって、少年が悪いわけじゃあ」


「それでも……もっといい方法があったって思わない?」


「っい!?」


 手に、力が込められる。思わず声がもれるほどの痛みに、私は顔を歪めた。

 雅さんの目を見れば、表情も段々と冷たくなってしまうようで――目の前にいるのは、あの日の夜に見たような、危険な雰囲気のある男性にしか見えない。




「私、には……わかりません。感染って、前に聞いた呪い、ですか?」




 怖い気持ちを抑え、なんとか言葉を紡いだ。


「そうだよ。感染ってのは、呪いのことを言う。そして感染した者は……雑華と呼ばれさげすまされる」


 それきり、雅さんは黙ってしまった。

 ただ私の目を見て、どこか儚げな表情をして――。




「――――雅、さん」




 丁寧に、名前を口にする。

 どうしてか……そうしないと、消えてしまうんじゃないかって気がして。




「オレの目を見ても……その話がウソじゃないって言える?」




「……嘘なんて、ついてない」




 軽く、ため息をつく雅さん。ゆっくり目を閉じたかと思えば、まるで糸が切れたように崩れ落ちてきた。

 一瞬、なにが起きたのかわからなくて。

じわじわと温もりが伝わってきて、ようやく、雅さんが乗っているんだと理解した。

 なんとか自分で支えようとしているのか、雅さんは何度も体を持ち上げようと試みたけど思うようにいかず――再び、私の上に覆いかぶさってしまう。




「……ご、めん。すぐ、退くから」




 その声は、さっきまでのものとは違う。いつもの柔らかい雰囲気を含んだ、優しい雅さんの声だった。


「だ、大丈夫……だから」


 本当は、ドキドキして仕方ない。だけど今は、雅さんの方が心配で……悪いと思いつつ、私は大丈夫だと嘘をついた。


「……ごめん。ちょっと、動けそうにない。押し退けれたり、する?」


「私も……力が入らない、から」


「そっか……イヤだろうけど、しばらくガマンしてね?」


 頷いたものの、自分の顔の真横に顔があるのは気が気でない。雅さんの息が間近に感じられ……意識しないようにと考えれば考えるほど、余計に意識をしてしまう。


「―――美咲ちゃん」


「は、はひ!?」


 思わず、声が裏返る。

 ほとんど耳元で囁かれ、それが艶のある声なのだから、顔が熱くなってしょうがない。


「ははっ……大丈夫、なにもしないから。ってか、したくてもできないし」


「し、したくてもって……」


 それってつまり……キス、とかだよね?

 いつもの雅さんの行動を考えると、こんな状況でもやりかねないんじゃないかと、ちょっと疑ってしまう。


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