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「その色の命華はありません。――赤は、命華に無い色です」
ありませんって……だったら私は。
「命華じゃ、ないんですか?」
思いつくのが、それしかなかった。
でも、先生の口から出たのは、
「――アナタは、間違いなく命華ですよ」
と、意外な言葉だった。
だけど、赤が命華に無いなら、私の存在って……。
不安そうな表情を浮かべる私に、先生はやわらかな笑みを見せる。
「確かに、その色の命華はありえません。しかし――最初の命華であるフィオーレ、“カミガキ”なら」
「カミガキ? 声もそんなことを言ってましたけど、それは一体」
「――まだ、核心は持てません。続きは、後日改めましょう」
そう言って、先生は元の世界へ帰ろうと言った。渋々ながらも頷き、今は早く帰ることにした。
―――――――…
――――――…
―――…
体が軽い。まるで、雲か空気にでもなったように、体の存在を感じなかった。
ここは――どこだろう。
何度か瞬きをすれば、視界に色が入り始める。
桜色をした空に、心地いい風が吹いて――見覚えのある景色に、私は向こうの世界を重ねた。
また一人で来てしまったのかと思ったけど、宙を漂う感覚に、これはきっと夢なんだと考えた。だって空を飛ぶなんてこと、私にできるはずないんだから。
しばらくして、私は広い野原に降り立った。すると背後から、こちらに走って来る足音が聞こえてくる。
『――――姉さん!』
振り返ると、走って来る少年の姿が見える。年の頃は、ぱっと見、七か十といったところ。まだ幼さの残る少年は、私のことなど無視して横切って行く。
それを見て、やっぱりこれは夢なんだと核心した。
行くあてもないので、とりあえず、少年の後を付いて行ってみた。すると少年は、一人の女性に駆け寄っていた。
腰まで伸びた淡い茶髪をした女性は、やわらかな笑みで少年を見る。
『そんなに慌ててどうしたの?』
『どうしたのじゃないよ! 一人で遠くまで来たらダメじゃん!!』
『ふふっ。エルは心配性なんだがら』
『姉さんは心配しなさすぎ! ほら、もう帰るよ』
そう言って、エルと呼ばれた少年は女性の手を取る。
微笑ましく見ていると、女性はこちらを振り返る。それはまるで、私に視線を向けているようだった。
これは夢なんだから、私のことなんて見えないはずなのに――なぜか女性は、まっすぐ私を見据えていた。
『――――姉さん?』
『ごめんさない。なんでもないのよ』
『そう? 足元、気を付けて』
『は~い。気を付けるわ』
楽しそうに、二人は森の奥へと進んで行った。
あの女性に見られた時……不思議な感覚がした。なにか言われたような気がするけど、それがどんなものだったのか。悩んでいると、目の前の景色が揺らいでいった。
次に目にしたのは――地獄、だった。
空は赤く、あちらこちらには黒煙が上がっている。
ふわふわと浮かびながら、私は前へと移動する。開けた場所に出ると……そこは、本や話でしか知らない光景が広がっていた。
『殺せー! 雑華など、根絶やしにしろー!!』
そこで起きていたのは……戦争。
辺りは血の臭いが漂い、目に見える範囲だけでも数百はいるんじゃないかって数の人が死んでいる。
こんなの見たくない。
誰か……誰か起こして!
耳を塞ぎ、闇雲に逃げ回る。どこに逃げても、断末魔や殺し合いの光景ばかりで……ようやく雑音が小さくなってきたところで、私は足を止めた。すると、さっき見かけた姉弟の姿が見えた。近寄って行くと、女性の体調が思わしくないのか。少年は心配そうに、女性の様子をうかがっていた。




