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「あ、あのう……」




 あまりにもしゃべらないから、声をかけた。それでも答えてくれないから、今更だけど、雅さんのことについて質問することにした。


「あれだけ走ったり、高く飛んだり――。み、雅さんは――何者、なんですか?」


「――――吸血鬼」


「えっ?」


「だから吸血鬼。人間から見たら、そーいう部類」


 顔を見合わせ、いつものように笑う雅さんに、今度は私の方がなんて言っていいかわからなくなってしまった。


「美咲ちゃん、聞いてる?」


「は、はい。――あのう、吸血鬼って言うのは」


「もちろんホント。だからさっき、血が欲しくなったんだよね。ははっ」


 笑いながら言われても……正直、説得力がない。


「叶夜君も、なんですか?」


「アイツはどーだろうねぇ? 血は吸わないと思うけど」


「でも今、吸血鬼って……」


「吸うヤツと吸わないヤツがいるんだよ。ま、それでもまとめて人間がそー呼んでるんだけど」


 ここまで言われると、本当に本当なのかなって、ちょっとは考えてくる。

 実際、あの身体能力を二回も見てるわけだし。


「――とりあえず、吸血鬼だっていうのはわかりました」


「じゃあオレに血、くれる?」


「そ、それとこれとは別です!」


 血だなんて……そんなの怖い。

 イメージからすると、牙で思いきり噛まれる気がするし。


「ならキスはどう? 口じゃなくておでこに」


「おでこ、ですか?」


「そうだよ。ホントは早く回復する為に口がいいけど、それで手を打つよ」


 手を打つって。

 なんだか、私の方からせがんでるように聞こえるんですけど。


「……口に、しないなら」


「オレを信じなって」


 信じたいけど、念の為保険を。


「本当に……おでこだけ、ですよ?」


「わかってるって。――じゃあ、いただきまぁーす」


 前髪をかき上げると、ちゅっ、と音をたて唇が額に触れた。

 たった数秒で終わると思ったのに、雅さんのキスは一回で終わらない。


「も、もういいんじゃ……」


「えぇ~もうダメなの?」


 拗ねた様子で聞く雅さん。

 その甘えた声に、思わず可愛いと言ってしまいそうになった。


「ねぇ、もうちょっといいでしょ?」


「も、もうダメです!」


「なら、抱くのはこのままだからね?」


「できればそれも……」


「ダ~メ。回復しないと、美咲ちゃん帰せないじゃん」


 ……ちゃんと、考えてくれてたんだ。


「オレはこのままでもいいけど、美咲ちゃん帰りたいでしょ?」


 からかってばかりだけど、こういうところはちゃんとしてるんだ。


「――そういうことなら、いいです」


「ホント? やった!」


「ちょっ、雅さんっ!」


「イイって言ったでしょ? ぎゅ~ってさせてよ」


「ほ、本当に、それだけですからね?」


 あまりに楽しそうだから、もう、このままでもいいかなぁって気になってくる。

 こうやってくっつくのは苦手なのに――不思議な気分。


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