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◇◆◇◆◇




 体が――軽い。




 ゆらゆらと漂う感覚。

 水の中にいるようなその感覚に、またここに来たのかと思った。




『全てが終わるまで――オレが繋いでやる』




 何処からか、声がする。

 次第にはっきりと、耳元で聞こえはじめた。




『だから安心して、お前はお前のやりたいことをしろ』




 やりたいこと――?


 言われても、そんなことは思い付かない。あるのは、模倣された日向美咲にある強い思い。みんなを護ると、それしか知らない。




『余計なことは考えるな。――そろそろ、目覚めてやれ』




 すぅっと、体が浮上する。

 徐々に光が強くなり、目の前が、真っ白に染まった。


 ――――――――――…

 ――――――…

 ―――…




「美咲――私が分かるか?」




 景色に、色が付いた。

 そこで見えたは、心配そうな表情を浮かべる蓮華さんだった。


「?――――彼、は」


「彼? 誰のことを言っている?」


 あぁ、そっか。

 ここに、彼は存在しないんだった。


「気にしないで下さい。あのう――自分は、何故寝かされているんですか?」


「熱が出て倒れたのだ。今日は、ここに泊っていけ」


 額に、蓮華さんの手が置かれる。

 ひんやりとして――とても心地いい。


「ゆっくり、体を休めろ」


 目を閉じると、意識はすぐに、眠りへと落ちて行った。


 /////


「それで――具体的に、アナタは何をしたのですか?」


 笑顔で聞くリヒトさんだが、目の奥が笑ってない……。


「何かした、と言うより――」


 もう、キスまでしたなんて言えない……。


「…………」


「まぁ、深く追求しないでおきましょうか。先程、日向さんの中にいた彼が言っていた言葉ですが――アナタ自身、変化は感じますか?」


「変化というか――美咲ちゃんの前世だった時の記憶が見えるんです。オレはその時には目覚めてましかたら、関りがあります」


 今ではあまり覚えていないが、あの時の感情は覚えてる。

 悔しくて、悲しくて。

 絶望的な感覚が、心を支配していた。


「彼の話しが本当だとするなら、アナタは前世の日向さんを知っていることになります。それがどう作用するかは分かりませんが、一先ず、今日は近付かないよう」


 いいですね? と、念を押された。

 言われなくてもわかってる。

 今の状態で会いに行くほど、オレも危険なことはしない。

 またあの瞳で見られたら、キスしていまいたい衝動に駆られそうだし。




「――お邪魔してもいいかしら?」




 戸の向こうから、女性の声がする。

 リヒトさんが返事をすると、入って来たのは、紅色の髪をした知らない女性だった。


「初めまして。私はシエロ。あなたが――ミヤビくんね?」


 やわらかな物腰で、その人は言う。

 近くに来ると、まじまじオレを見つめてきた。


「――――」


「あのう……一体何を?」


「あ、ごめんなさいね。力が使えるかと思って、ちょっと、あなたの先を見ていたの」


「先って――オレの未来、ですか?」


「えぇ。でも、まだ調子が出ないみたい」


「当然です。アナタは長い間、あの箱の中にいたのですから――どうか、無理をしないで下さい」


「大丈夫。そこはレンにも釘をさされてますから。――少し、ミヤビくんと二人でお話をしたいのだけど、いいかしら?」


「はい、オレは構いません」


「ありがとう。リヒトは、別の部屋に行ってて」


 頷くと、リヒトさんは部屋を出て行った。


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