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目を開けると、そこに水はなかった。
――――あぁ、そっか。
自分は、家に来たんだった。
起き上がり、頭を働かせる。
えっと……。確か、学校に行かないといけないんじゃ。
制服に着替え下りると、おじいさんは驚きの表情で出迎えた。
「もう起きていいのかい? 休んでもいいんじゃぞ?」
「調子はいいですから。あまり休んでいては、後が大変になるので」
「行きたいというなら止めはせんが……」
「大丈夫です。無理はしませんから」
それでは、と軽く会釈をし、自分は学校に向かった。
道順は知らなかったが、学生証にあった住所と、同じ制服の生徒について行き、学校に着くことができた。
席についてしばらくすると、眼鏡をかけた叶夜君がやって来た。
「あれから、体は大丈夫か?」
「はい。あれから特に何もなく寝れました。叶夜君の方こそ、どうですか? 血が足りないとかあれば、すぐに言って下さいね」
「あぁ、その時はそうさせてもらう」
談笑していると、後ろの扉が開く。入って来たのは、別のクラスのはずの雅さんだった。
「オレ抜きで楽しそうだねぇ~」
「なんだ、これぐらいで焼きもちか?」
「オレはまだアンタを信用してないんでね」
昨夜のような重い雰囲気。さすがに学校でひと悶着あるのは――。
「ここは学校ですから。――ね?」
二人の間に立ち、ここは穏便にと言えば、二人からため息がもれた。
「俺は別に争う気はない。こいつが勝手に焼いてるだけだ」
「そんなこと言って。いつ美咲ちゃんに手を出すかわかったもんじゃないでしょ」
「手を出してるのはお前だろうが」
「オレは本式したからいいんだよ!」
「だから二人ともっ、ここは学校なので」
宥めれば、ようやく治まりをみせてくれる二人。叶夜君はそっぽを向いてるけど、とりあえずは大丈夫そう。でも、雅さんの方はまだ言い足りないのか、叶夜君を睨むのをやめてくれない。
「――ちょっと、話しでもますか?」
そう言えば、雅さんはわかりやすく笑顔になった。
話すなら屋上に行こうということになり、私は雅さんに手を引かれながら屋上に向かった。
「ここでもいいけど、もっと上に行こうか」
言うなり、私をさっと抱え普通では登れない場所まで登って来た。
「ここならゆっくり出来るからね」
私を抱えたまま腰を下ろす雅さん。どうやら、このまま離したくないらしい。
「抱えたままだと、重いのでは……」
「そんなことないって。オレとしては、くっつけてラッキーって感じ。あ、でもイヤなら言ってよ? 昨日も言ったけど、無理強いはしたくないから」
こうして連れてくるのに、そういう気遣いはしてくれるみたいだ。
「昨日の口付けに比べれば、これぐらいなら慣れたみたいです」
途端、顔を赤くする雅さん。片手で顔を覆い、あぁ~もう、と声をもらしていた。
「これでも意識しないようにしてたのに……」
未だに手で顔を覆っているから、どんな顔をしているかわからない。けどその行動は、恥ずかしさからくるものではないかと思った。
「――恥ずかしいんですか?」
ゆっくり、顔に覆われていた手が離れる。まだ顔は赤くて、どこか納得いかないような、そんな表情を浮かべていた。
「オレだけドキドキして……なんか悔しい」
「そ、そんなこと言われても」
私だって、全くドキドキしないわけじゃない。いつもより鼓動が早いと言えば、ホントに~? と言われてしまった。
「疑り深いですね――これなら、どうですか?」
雅さんの片手を取り、私の胸に当てる。
途端、雅さんは胸からすぐに手を離した。
「そ、そういう不意打ちは無し!」
「不意打ちと言われても。これしか方法が思いつかなくて」
まっすぐ目を見て言えば、わかったから……、と降参にも似た声がもれ出た。
「ホント……前なら襲ってたよ」
「血が欲しい、という意味ですか?」
「違う違う。男としての本能。――そんなことされたら、求めちゃうでしょ?」
そう言って、私の頭を撫でる雅さん。
男として求めるって、昨日みたいなこと?
「深くないものなら、大丈夫ですよ」
告げれば、雅さんから間の抜けた声がもれた。しばらく何も言わないから、私はもう一度、同じことを言った。
「昨日みたいに深いのはまだ慣れないので――普通の口付けなら、大丈夫ですよ」
その言葉に、雅さんの手が私の頬に触れる。
昨日とは違い、お互いの顔がハッキリ見えるからか。自分で言っておきながら、私は胸が高鳴っていた。
「ホントにいいの? 一回じゃ済まないかもよ?」
「そこはまぁ、加減をしてくれればな、と」
「わかった――出来るだけ、ね」
そう言って、頬に合った手が頭に移動する。ゆっくり力が込められ、お互いの顔が近付いていく。そして――触れるだけの、優しい口付けをされた。




