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◇◆◇◆◇


 目を開けると、そこに水はなかった。




 ――――あぁ、そっか。




 自分は、家に来たんだった。

 起き上がり、頭を働かせる。

 えっと……。確か、学校に行かないといけないんじゃ。

 制服に着替え下りると、おじいさんは驚きの表情で出迎えた。


「もう起きていいのかい? 休んでもいいんじゃぞ?」


「調子はいいですから。あまり休んでいては、後が大変になるので」


「行きたいというなら止めはせんが……」


「大丈夫です。無理はしませんから」


 それでは、と軽く会釈をし、自分は学校に向かった。

 道順は知らなかったが、学生証にあった住所と、同じ制服の生徒について行き、学校に着くことができた。

 席についてしばらくすると、眼鏡をかけた叶夜君がやって来た。


「あれから、体は大丈夫か?」


「はい。あれから特に何もなく寝れました。叶夜君の方こそ、どうですか? 血が足りないとかあれば、すぐに言って下さいね」


「あぁ、その時はそうさせてもらう」


 談笑していると、後ろの扉が開く。入って来たのは、別のクラスのはずの雅さんだった。


「オレ抜きで楽しそうだねぇ~」


「なんだ、これぐらいで焼きもちか?」


「オレはまだアンタを信用してないんでね」


 昨夜のような重い雰囲気。さすがに学校でひと悶着あるのは――。


「ここは学校ですから。――ね?」


 二人の間に立ち、ここは穏便にと言えば、二人からため息がもれた。


「俺は別に争う気はない。こいつが勝手に焼いてるだけだ」


「そんなこと言って。いつ美咲ちゃんに手を出すかわかったもんじゃないでしょ」


「手を出してるのはお前だろうが」


「オレは本式したからいいんだよ!」


「だから二人ともっ、ここは学校なので」


 宥めれば、ようやく治まりをみせてくれる二人。叶夜君はそっぽを向いてるけど、とりあえずは大丈夫そう。でも、雅さんの方はまだ言い足りないのか、叶夜君を睨むのをやめてくれない。


「――ちょっと、話しでもますか?」


 そう言えば、雅さんはわかりやすく笑顔になった。

 話すなら屋上に行こうということになり、私は雅さんに手を引かれながら屋上に向かった。


「ここでもいいけど、もっと上に行こうか」


 言うなり、私をさっと抱え普通では登れない場所まで登って来た。


「ここならゆっくり出来るからね」


 私を抱えたまま腰を下ろす雅さん。どうやら、このまま離したくないらしい。


「抱えたままだと、重いのでは……」


「そんなことないって。オレとしては、くっつけてラッキーって感じ。あ、でもイヤなら言ってよ? 昨日も言ったけど、無理強いはしたくないから」


 こうして連れてくるのに、そういう気遣いはしてくれるみたいだ。


「昨日の口付けに比べれば、これぐらいなら慣れたみたいです」


 途端、顔を赤くする雅さん。片手で顔を覆い、あぁ~もう、と声をもらしていた。


「これでも意識しないようにしてたのに……」


 未だに手で顔を覆っているから、どんな顔をしているかわからない。けどその行動は、恥ずかしさからくるものではないかと思った。


「――恥ずかしいんですか?」


 ゆっくり、顔に覆われていた手が離れる。まだ顔は赤くて、どこか納得いかないような、そんな表情を浮かべていた。


「オレだけドキドキして……なんか悔しい」


「そ、そんなこと言われても」


 私だって、全くドキドキしないわけじゃない。いつもより鼓動が早いと言えば、ホントに~? と言われてしまった。


「疑り深いですね――これなら、どうですか?」


 雅さんの片手を取り、私の胸に当てる。

 途端、雅さんは胸からすぐに手を離した。


「そ、そういう不意打ちは無し!」


「不意打ちと言われても。これしか方法が思いつかなくて」


 まっすぐ目を見て言えば、わかったから……、と降参にも似た声がもれ出た。


「ホント……前なら襲ってたよ」


「血が欲しい、という意味ですか?」


「違う違う。男としての本能。――そんなことされたら、求めちゃうでしょ?」


 そう言って、私の頭を撫でる雅さん。

 男として求めるって、昨日みたいなこと?


「深くないものなら、大丈夫ですよ」


 告げれば、雅さんから間の抜けた声がもれた。しばらく何も言わないから、私はもう一度、同じことを言った。


「昨日みたいに深いのはまだ慣れないので――普通の口付けなら、大丈夫ですよ」


 その言葉に、雅さんの手が私の頬に触れる。

 昨日とは違い、お互いの顔がハッキリ見えるからか。自分で言っておきながら、私は胸が高鳴っていた。


「ホントにいいの? 一回じゃ済まないかもよ?」


「そこはまぁ、加減をしてくれればな、と」


「わかった――出来るだけ、ね」


 そう言って、頬に合った手が頭に移動する。ゆっくり力が込められ、お互いの顔が近付いていく。そして――触れるだけの、優しい口付けをされた。


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