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 辿り着いたのは、何処かの古い洋館。まだ人の世らしいけど、辺りに漂う雰囲気は向こうのように不思議で。まるで、ここだけ隔絶してるんじゃないかって思うほど。




「――――まさか」




 扉を開けるなり、琥珀さんは言葉を失っていた。

 雅さんに下してもらい、私も後ろから覗いて見れば、


「――――っ!?」


 背後から目を隠され、体を支えられた。


「刺激が強いね。――ここには何人いたの?」


「少なくても十人はいたはずだ。エメがいるのに、手薄にするわけがないだろう?」


 あまりの光景に、まともな言葉は出てくれなかった。

 床一面に広がる液体。暗くてわかないけど、今の話やこの臭いで、血だってことがすぐに想像できた。


「僕が見て来るから、二人は外で待ってて」


 音がすると、目を覆っていた手が外された。扉は閉められてるけど、さっきの光景が強烈で、まだ雅さんに支えてもらわないと立てそうにない。


「――やっぱアイツか」


「? あいつ、って」


「殺したのはキョーヤってこと」


 思わず振り向けば、雅さんは更に続けた。


「結局さ、オレたちは行くとこまで行かなきゃいけないんだよ。抗うことなんてできない……今から別の手段考えるとか、そもそもムリなんだ」


 諦めのような言葉。覇気が感じられないその雰囲気は、発作が起きた時とは違う恐怖を雅さんから感じた。


「――――ごめん」


 途端、体に衝撃が走った。

 わけがわからないまま、私の意識はそこで途絶えた。


 ――――――――――…

 ―――――――…

 ―――…


 見えたのは――桜色をした空。

 ふわふわと浮かびながら、私はどこかへ進んでいた。しばらくすると、たくさんの花が咲き乱れる場所に出た。私はそこで下り、花畑を歩いて行く。

 ――遠くに、誰かが立っているのが見えた。

 輝く紅色をした、長い髪の女性。それは以前に見た、あの女性だった。

 すると女性は、こちらを振り返る。


「貴方に――会いたかったわ」


 優しい眼差しを向ける女性。どうやらこの人も、お姉さんのように、私の姿が見えているらしい。


「! まさか……覚醒しているなんて」


 女性は、私の目の前にやって来る。

 手を伸ばしたかと思うと、その手は私の頬にそっと触れ、なんとも悲しそうな表情をしていた。




「貴方は……誰、なんですか?」




「私は――赤の命華よ」




 そう言って、女性は私を抱きしめた。

 なんだか……不思議な感覚。

 抱かれるのが心地いいのか。とても……温かい気持ちになっていく。


「私には、少しだけ先の世界を見れる力があるの。でも……貴方はその逆。貴方は過去を見れる」


「? だったらどうして」


 見れるだけなら、こうやって触れることも、話をすることもできないのではと、疑問が浮かんだ。


「それはね、仲間のおかげ。そして……貴方が、特別な〝命華〟だから」


 真剣な瞳で見つめられ、私は目をそらすことができなかった。とても綺麗な顔立ちに、目を奪われてしまっていた。


「貴方は……初めて、赤の命華から産まれた子供なの。赤の命華に子供が産まれたとわかれば、その子供は殺されるか、利用されてしまう。だから私は……全てを、背負うことに決めたの」


「背負うって……」


 もしかしたら、呪いのことなんじゃないかと頭を過った。


「私は、必ず未来を変えてみせる。貴方や、あの人に恨まれようともね」


 女性の瞳には、決意が秘められていた。覚悟を決めたその姿は、とても凛々しく、神々しくさえあった。


「あ、あのう。貴方の、子供って……」


 私なの? って、聞きたいのに。

 なのに、いざそう思うと、なかなか言葉にすることができない。

 怖いとか、間違いだったらとか。余計な考えが、私に戸惑いを与えた。


「ふふっ。貴方は、あの人と同じ瞳をしているのね」


 先程までの真剣な表情とは違い、女性は私に、とても優しく微笑む。


「でも――髪色と可愛さは、私と同じね」


 楽しげに、女性は頭を撫でた。


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