第44話 小さな村のゴブリン退治 その2
本日2話目です。次話は18時に投稿予定です。
「何もいないな。」(俺)
「ゴブリン・トーテムないですね。」(トマス)
「見張りもいませんね。」(オリバー)
「カッカッカッカッカ!」
「村長静かにしてください!」
トマスが村長の口を塞ぐ。
今、俺たちは、ゴブリンが巣にしているとオリバーが言う洞窟の近くで、茂みに隠れながら覗いている状態だ。入り口に見張りのゴブリンがいると思っていたのだが何もいない。もちろんゴブリン・トーテムもない。暫く様子をうかがっていたが、洞窟を出入りするゴブリンはいなかった。
「本当にここで合っているのか?」
「間違いないです。以前ここをゴブリンが数匹出入りしていたのを見ました。」
オリバーが答える。
「わかった。それじゃあ、俺が斥候で出るから、後からトマスとオリバーは来てくれるか?」
「無理です。」
「ダメです。」
「へ?」
「公爵様もおっしゃっていましたが、退治するのは勇者様おひとりです。私たちは足手まといにしかならないでしょうし。」
じゃあなんでここまで付いてきたんだ? しかも、村長まで!! 頭の中では盛大に突っ込んでいる俺がいる。
「そうか。では、仕方が、ないな。それじゃぁ、危ないから、君たちは、村に、帰っていて、くれるか。」
ぶち切れそうになるのをギリギリ押さえながら何とか言葉を絞り出す。
「いやいや。儂らはここで勇者様のお仕事を見届けますぞ。」
いや。村長あんたに一番帰って欲しいのだが!
埒があかないので、俺はさっさと退治してしまうことにした。幸い、トールキンの情報通りだとゴブリン・トーテムがない巣穴なら最悪でもホブゴブリンに統率された群れだ。それなら、独りでも何とかなるかもしれない。
それにしても、どうやって退治しよう。
暫く考えはしたものの、全く良い考えが浮かばない。仕方がない。出たとこ勝負だな。
意を決した俺は洞窟の入り口へ向かって歩く。他3名はもちろん茂みに隠れたままだ。
「絶対にここを動くなよ。振りじゃないからな。本当に動くなよ。」
念には念を入れてそう忠告しておいた。
入り口には何もいない。俺は一歩一歩ゆっくりと洞窟の中に入る。奥から松明の灯りだろうか? 薄明かりが揺らいでいる。
「Gobu Gobu」
少し先からゴブリンの声らしきものが聞こえる。
俺は、岩影にかくれてゴブリンが近づくのを待つ。
ゴブリンが俺の横を通り過ぎる。岩影から飛び出しゴブリンの後ろをとるとすかさず、首に手刀を打つ。バランスを崩したゴブリンの腕を取りそのまま頭を地面に打ちつける。
グシャッ! 不快な音と共にゴブリンは死ぬ。
『経験値を10pt獲得しました。』
メッセージが流れる。
やっぱり、ゴブリンはいるか。となると、この先にまだまだいるって事だな。俺は、そのまま奥に進む。
『女神権限で
ユニークスキル『早熟成長』を獲得しました。』
へ? なにそれ。
そういや神託のとき『早熟成長』があるかって聞いてたな。駄女神また何かやらかしてたのかな。それにしても、女神権限って初めてだな。ま、今は気にするのやめとこ。
俺は、そのまま歩いて洞窟を進む。すると、少し開けた場所に出た。そこにはゴブリンが3匹いた。他にはまだ見当たらない。ゴブリンたちはこちらにはまだ気づいていない。
俺は、そのままゴブリンがいる場所に飛び出す。
急に人間が飛び出てきたもんだからゴブリンは一瞬何が起こったのか分からず固まっている。すかさず右手でゴブリンの腹を掌底で打つ。衝撃でくの字になったゴブリンの顎をその右手で打ち上げるながら顔をつかんで地面に打ち付ける。
グシャっと音がしてゴブリンの頭がつぶれる。
『経験値を10pt獲得しました。』
『条件を満たした為
スキル『格闘体術』が Lv.6になりました。』
我に返ったゴブリンが襲いかかってくる。2匹同時だ。
俺は、軽く後ろに飛ぶ。ゴブリンが互いにぶつかる形になったところをまとめてなぎ払う。倒れただけのゴブリンにはまだ息がある。流石にここは止めを刺さないとな。
腰の剣を抜くと、そのまま2匹のゴブリンを重ねて突き刺す。串刺しだ。
『経験値を20pt獲得しました。』
こうやって、少数ずつだと何とかできるな。流石に多勢で来られると厳しいからな。それだけは気をつけ……。気配がしたので振り向くと、そこには10匹ほどのゴブリンが襲いかかってきていた。しかも手には剣を持っている。
マジか。クソッ剣はまだゴブリンに刺さったままだ。俺はゴブリンを足で押さえて剣を抜くと、そのまま力任せに剣を横一線に振るう。破れかぶれとも言うな。
すると、碧い閃光を発しながら剣はゴブリンたちを両断する。
あれ? スパって切れちゃったよ?
『経験値を90pt獲得しました。』
考えている暇はない。俺が切ったゴブリンは3匹。まだ7匹ばかり残っている。
俺は剣を脇構えに構える。そのまま、もう一度剣を横に振るう。
スパッ!!! 今度も碧い閃光を放ちながらゴブリンを両断する。今度は4匹。
『経験値を120pt獲得しました。』
『条件を満たした為
スキル『会心一撃』が Lv.2になりました。』
『条件を満たした為
スキル『片手剣士』が Lv.4になりました。』
「なんだ? これ。いくら何でも早熟すぎんじゃねえか? スキル『早熟成長』パないな。それに、この間の会戦の時と違って、えらいスパスパ切れるな。」
残ってた3匹のゴブリンに向けて、剣を横薙ぎに振るう。
『経験値を90pt獲得しました。』
「レベル4になりました。」
これならいけるな。手に感じる感触もほとんど無い。これこそ俺が求めていた勇者のスキルってやつじゃね?
それからというもの、俺はマジ無敵状態。スッパスッパとゴブリンどもを斬りまくった。
『条件を満たした為
スキル『片手剣士』が Lv.5になりました。』
『レベル5になりました。』
おぉ! レベルも上がったぞ! このスパスパ切れるのはやっぱレベルが上がったからなんだろうか。『早熟成長』とやらも好調みたいだし、前回の会戦の時と違って感じる不快感も少ない。このままだと楽勝で退治できちゃうな。そんなことを考えたのがまずかったのか、騒ぎに気づいたゴブリンたちが奥からわらわらと出てき始めた。
あれよあれよという間に増え続けるゴブリン。気づけば、そこには見渡す限りゴブリンで埋め尽くされていた。
マジかよ。この数どうするんだよ。もう、ここまで来ると笑うしかないな。
前門の虎後門の狼ってやつだな。前も後ろもゴブリンだけど。
クソッ! やるしかないな。俺は、無構えに剣を構える。
己の気を発しながらゴブリンたちに睨みをきかせる。
俺の気に萎縮したのか、しばし場は硬直し、互いに睨み合う。
ほんの数秒だろうか。緊張感に耐えられなかったのかただの本能なのか、俺の目の前にいた1匹のゴブリンが奇声を上げた。それを合図とばかりに、ゴブリンたちが一斉に飛びかかってくる。
飛びかかってきたその数は優に10匹は超えている。多勢に無勢、万事休す、衆寡敵せず、今の状況に見合った言葉はいくらでも思い浮かぶ、しかし、俺はそんなことはお構いなしに体を横にくるりと回転させながら剣を横薙に振り払う。
シュパッパパパパパパパパパッ!
軽やかな音がする。手応えもほとんどない。
しかし、俺に飛びかかっていたゴブリンたちはすべて両断されている。
『経験値を300pt獲得しました。』
経験値が300ってことはゴブリン戦士10匹をまとめてか。いくら何でもちょっとヤバすぎるんじゃない?
「先輩の片手剣マジパねぇっす。」腰巾着がいたらそう言いそうなくらいすごいぞ。何の恩恵かはわからないけど、ここは深く考えないで行こう。そんな余裕はない。
10匹倒したくらいでは、ゴブリンの数は減ったようには感じない。余りにも多すぎるのだ。こうなったら構えも型もクソもない。俺はとにかくゴブリン辺りをめがけて、剣を振りまくる。
シュパパッ! シュパパッ!
剣をふた振りすると、2匹ずつゴブリンが倒れる。
『経験値を135pt獲得しました。』
『条件を満たした為
スキル『片手剣士』が Lv.6になりました。』
『レベル6になりました。』
最後のヤツがでかかったと思ったら、どうやらホブゴブリンだったようだ。ホブゴブリンといえども今の調子なら殺やれるな。
とにかく剣の動きを止めたらダメだ。動きを止めた途端、ゴブリンが飛びかかってきて一巻の終わりとなるだろう。止まれない俺は、ゴブリンの振り下ろす剣を剣で受け止める事が出来ない。受け止めると動きを止めてしまうからだ。俺は、とにかく動きまくりながら、ゴブリンが振るう剣を避けつつ剣を振り抜く。
速く!
シュパパパッ! シュパッ!
『経験値を120pt獲得しました。』
激しく!
ズバッッッツ!!!
『経験値を90pt獲得しました。』
『条件を満たした為
エキストラスキル『疾風迅雷』を取得しました。』
おぉ! ここにきてエキストラスキルきた〜〜!! しかも、疾風迅雷ってめっちゃんこ強そうじゃないか。
素早く動くことを意識すると、今までよりも明らかに体が軽く感じ、速く動ける。剣を振るう威力も格段に強くなっている。
いや。スキルってすごいな。これなら本当に何とかなるかも知れない。そう思うのはやはりフラグなのだろうか?




