第43話 小さな村のゴブリン退治
本日3話アップの予定です。
俺たち2人は、馬に乗ってアガルテから出て街道を走っている。俺はジェームズと一緒に早馬に乗ったときにスキル『駿馬疾走』を身につけているが、一緒に走っているトマスはただの兵士だ。しかも、戦闘経験も無い。なので、そのペースはさして速くはない。
「トマスさん。どれくらいで着くのかな。」
「トマスとお呼びください勇者様。」
「じゃあ俺のこともヒデオって呼んでね。」
「それはできません。あなたは勇者様ですから。」
なら、勇者らしく扱ってよね。と心の中で突っ込みを入れる。でもまぁ、彼に責任はないか。ぞんざいな扱いをするのはベルナドッテ公爵だけだからな。
「で、トマス。目的地まではどれくらいかかるんです?」
「敬語もおやめください。あなたは勇者様ですから。」
もう! 面倒だなこいつ。
「トマス。目的地まではどれくらいだ?」
「はい。このペースで行けばあと1刻ほどで着くと思います。」
30分か。まぁ、乗馬の練習だと思えばいっか。これだけ長い時間、独りで馬に乗るのは初めてだかな。
それにしても、アガルテを出てから周りは森だらけだな。右の方に行けば、俺が召喚されたレア・シルウィアの森だが、左の方にも大きな森が広がっている。
「トマス。この左手の森はどれくらいの広さがあるんだ?」
「ディアボルスの森は、この国の端まで続いています。」
「へぇ。じゃあ結構広いんだね。」
「はい。この国は国土の3分の1近くが森ですので。その半分がディアボルスの森、もう半分がレア・シルウィアの森です。我がアガルテはちょうどその中間に位置しています。」
「そっか。で、目的地はどこなの?」
「このディアボルスの森の中にあるキシャ村という小さな村です。実は、そこは私の生まれた村でもあります。」
「へぇ〜、そうなのか。だから君が案内役に選ばれたんだね。」
「はい、……勇者様。もう少しペースを上げてもよろしいでしょうか。できるだけ早く着きたいので。」
イヤイヤイヤ。はっきり言って君に合わせてたからこのペースなんだけど? と心の中で突っ込んでおいたがそれを口にするほど俺は野暮じゃない。
「任せるよ。」
そういうと、トマスはほんのちょっとだけ走るペースを上げた、ほんのちょっとだけ。
『条件を満たした為
スキル『乗馬上進』が Lv.2になりました。』
スキルのレベルアップの知らせるメッセージが流れた。意外とあの ピロン♪ がないと寂しいな。と感じる俺だった。
☆
「勇者様。着ました。ここがキシャ村です。」
そこには、お世辞にも立派とは言いがたい柵に囲まれた小さな集落があった。ソリスの里とは違って木造の家、と言うより小屋が10軒程建っている。本当に小さな村だ。村と言うより集落と言っても良いくらいだ。その、気持ちばかりの柵の中には畑も作られている。アガルテの周りにはこういった小さな集落がいくつもあるらしい。
「トマスにいちゃ〜ん。」
俺たちが村の中に入っていくと、1人の少女がトマスの名を呼びながら走ってきた。
「おぉ、ベル。元気にやってたか?」
「うん! 元気だったよ。にいちゃんは?」
「あぁ、元気にやってるよ。ところで、村長はいるかい?」
「うん! お家にいると思うよ。」
「そうか。じゃあ兄ちゃんは村長の所に行ってくるからまた後でね。」
「は〜い!」
少女はそう元気よく返事をすると、元来た方へかけだして戻っていく。
う〜ん。なんだかほのぼのとしてていいな。兄弟なのかな? そんなことを考えているとトマスに声をかけられた。
「勇者様。では、こちらへどうぞ。」
俺は、トマスに案内されて村長の家へと向かった。
☆
「マッコール村長。勇者様をお連れいたしました。」
「おぉ。トマス! 元気にしておったか。わざわざすまぬのう。」
そこには、痩せた老人が立っていた。どうやら村長らしい。村長は俺の方を見る。
「これはこれは勇者様。このような村へようこそお越しいただきました。私が村長のマッコールです。ささ、どうぞ、お入りになってください。」
村長に促されるまま、俺は家の中に入り、勧められたテーブルについた。
「狭苦しいところで恐縮ですが、あぁ。今、水をお持ちいたしますので、今暫くお待ちください。」
「あ、村長さんお気を使わずに。」
俺の声が聞こえたのか聞こえなかったのかは分からないが、村長は水をとりに行ってしまった。
俺は周りを見渡す。う〜ん。中から見ても、やっぱり小屋だな。今思うと、ソリスの里はまだ発展している方だったんだな。シルビアの家なんて石造りの2階建てだったしな。
村長が水を持って戻ってきたので、俺は早速本題を切り出す。
「村長。俺はタダノ ヒデオだ。公爵に言われてここにゴブリン退治に来た。話を聞かせて貰えないか。」
「まぁまぁ。そんにあせらんでもゆっくりとしなせぇ。」
あ、ダメなパターンだこれ。絶対時間がかかるぞ。
「村長。気持ちはありがたいが、俺もできれば早く済ませたいんだ。」
「あ〜。今日はええ天気ですなぁ。」
ダメだ。このじいさんわざとじゃないのか? さっきまで普通だっただろ。
「トマス!」
俺は語気を強めてそう言うと、トマスをにらみつける。
「村長。勇者様もお忙しいのだ。ゴブリンの話を。」
「もうかぇ。折角勇者様が来てくださったのだから、色々と武勇伝でも聞きたいではないか。」
やっぱりわざとじゃないか。クソじじぃ!!
「話しがないのなら、俺は帰るがそれで良いか?」
ちょっと、いらつくように俺が言うと、やっと村長はゴブリンのことを話し始めた。
時々ゴブリンがでて、畑を荒らしたり家畜を殺して食べたりすることはあったらしいが、このところそれが頻繁に起きているそうだ。始めは、村の若い者で対処していたのだが、だんだんとゴブリンもずるがしこくなり、今では全く歯が立たなくなってきているという話だった。近くの集落では女子供がさらわれたという話もあるらしい。
「で、そのゴブリンの巣穴はどこにあるのかは分かっていますか?」
「いや、儂はよう知らんのですが、村の若い者が分かっとります。トマスやちょいとオリバーをよんできてくれんか。」
村長がそう言うと、トマスは村長の家から出て行った。
暫くして、トマスは1人の青年を連れて戻ってきた。彼の名はオリバー。この村の牛飼いだそうだ。牛がいるんだね。
「勇者様。こいつは私の幼なじみでオリバーと言います。」
「オリバーです。初めまして勇者様。」
「で? オリバー君はゴブリンがどこにいるのか分かっているのか?」
「はい。巣穴の位置ならだいたい分かっています。」
「おぉ! そうか。それはナイスだ。じゃあ、早速案内してくれないか?」
「はい。わかりました。」
☆
俺たちは、ゴブリンの巣があるという場所に向かって歩いていた。メンバーは俺、トマス、オリバー、村長。
村長? いやいやいや。村長なんでいるの?
「村長さん。あなたは危ないので家に戻っていてください。」
そう俺が言ってもこのじいさんは聞こうともしない。
「勇者様が、私たちのためにゴブリンを退治してくださるというのに、家でのんびりはしておれませんわ。カッカッカッカッカ。」
いやいやいや。カッカッカッカッカじゃなくて……。これ絶対フラグだな。
一抹の……いや。かなりの不安を覚えながら俺たちはゴブリンの巣へと向かうのであった。
次話は12時にアップ予定です




