第32話 スキルレベルの話
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俺は、アガルテの街に出てみることにした。
城を出るまで多くの使用人や兵士たちとすれ違ったが、皆一様に俺を観る目が以前と違う気がした。
少しは好意的に見て貰えるようになったのかな。今までは、どこの馬の骨だ? 的な視線が痛かったもんな。
正面にある楼門から城外へ出る。衛兵に軽く手を挙げてあいさつする。
そういや。アガルテに来てから街に出るのは初めてだな。
アガルテは城塞都市の名の通り、大きな城壁の中にある街だ。
城壁は高さが約25m、幅5mもあり、周囲を約6kmの二重の城壁で囲んでいる。さらに、その外側には堀が掘られている。
城壁の中は、要塞城を中心に囲むように同心円状に区間整理されている。城に一番近い内側は、貴族の住居区画、その外側が豪商・裕福な商人や市民の住居、その外側が一般市民の住居であったり商店がある。さらにその外側が農業を営むいわゆる農民の居住区で、そこには田畑も広がっている。軍の習練場や宿舎もこの最縁部にある。
城の前には市民の憩いの場であるアスガルタ広場があり、多くの露店がでている。露店と言うよりちょっとした市場って感じだな。日用品から食料品を取り扱っているようだ。
街並みはまさに中世ヨーロッパって感じだ。
俺は、広場から出てリナに貰った名刺を見ながら住所を捜して街を歩く……。
って、全然わかんねえぞこれ。……そりゃそうか。
仕方がないので、近くを歩いていたおばさんに名刺を見せて場所を教えて貰う。
「この先の道をまっすぐ行った突き当たりを右に行って、最初の大通りを左にまがった中程にあるよ。石造りの大きな建物だよ。立派だから直ぐに分かるよ。」
と教えてくれた。
おばさんがちょっとニヤニヤしてたのが気になるけど、取りあえず場所は分かった。
5、6分も歩くとその場所に着くことができた。
そこには、言われたとおり石造りの立派な3階建ての建物が建っていた。
「でかい建物だな。リナっていったい何者なんだよ。ホント……。」
俺は建物の入り口を覗き込んで声をかける。
「すみませ〜ん。」
「いらっしゃいませ〜♡」
露出度の高い服を着たかわいい系の女の子が出迎えてくれた。
「お一人様ですか? 当店は初めてお越しですか?」
「え? あ、はい。」
「では、こちらへどうぞ。 1名様ご案内で〜す♡」
あまりにも、滑らかな接客にあっけにとられている間にご入店と相成った。
中に入るとそこには、少し薄暗い空間が広がっており10客ほどのテーブル席が置かれている。前方にはなにやらステージのようなものもある。
飲食店かな? でも、まだ昼過ぎというのに客がほとんどいないな。あんまり流行ってないのかな?
俺は案内してくれた席に座る。
案内してくれた女の子も俺の隣にぴったりくっついて座る。
いやいやいや。近いでしょ。てか、なんできみも座るの?
とか思いながら、出されたおしぼりで手を拭いていると、
「あら。いらっしゃい。突然のご訪問ね。」
聞いたことがある声に振り向くと、リナが立っていた。
「あぁ、突然訪ねてごめんな。まだ仕事中だったか?」
「まぁ。そうと言えばそうだけど、別に大丈夫よ。で、どうしたの?」
「色々リナに聞きたいことがあってさ。王都のことも知りたいしと思って……」
「……」
リナが無言で俺を見つめ続ける。目が本当に? って言ってる。
「……リナに逢いに来た。」
「うん。素直でよろしい。ここだと何だから、奥の部屋に行こっか。」
そういうと、リナは俺を案内してくれた女の子に、自分の客だから奥の応接室に通すよう伝えた。
そう言って、案内された部屋は結構豪華な応接室だった。
広さは12畳ほどだが、壁一面にはフレスコ画のようなものが描かれており、大きな窓からは明るい日差しが差し込んでいる。先程の薄暗い店内とは対照的な明るさだ。調度品も高級な物が置かれている。
俺とリナは部屋の真ん中にあるテーブルセットの椅子に座った。
ほぼ正方形のテーブルの角を挟んで隣同士で座る。リナのことだから強引に横隣に座ってくるかと思っていたのでちょっと拍子抜けした。って言うかちょっと寂しかった。
「よくここがわかったわね。」
「あぁ、名刺に住所が書いてあったからね。」
「それでも、この街を歩くのは初めてでしょ?」
「途中、道行くおばさんに聞いた。なんか、ニヤニヤしてたぞ。」
「あら。それはそれは。」
「しかし、でっかい建物だな。飲食店か? にしては、昼過ぎなのに客少なくないか?」
「まぁ、飲食もできるけど、ただの飲食店かと言われるとちょっと違うわよ。」
「え? じゃあなんなの?」
「ふふ。キャバクラ♡」
「あ〜! そういうこと。だから、店内が薄暗いのか。てことは、夕方以降客が増えるのか? それにしても、異世界にもキャバクラなんてのがあるんだな。」
「ないわよ。正確には『なかった』だけどね。私が始めたのよ。」
「マジか! じゃあ店のオーナーなのか? やり手なんだな。そういや実業家って言ってたもんな。」
「でも、ここに来るまで結構大変だったんだから。」
「だろうね。にしても、すごいよ。……うん。」
「で? わざわざお越しいただいたご用件はなあに?」
「あぁ、さっきも言ったけど、リナに色々聞きたいことがあってさ。」
「どんなこと? あ、ちょっとまって。」
そう言って、リナが席を立ち扉へ向かう。そのタイミングで、ノックの音がする。
リナが扉を開けると、メイド風の服を着た女性がティーセットを運んできていた。
「ありがとう。後は、こっちでやるから、暫く人払いをよろしくね。」
「はい。かしこまりました。」
メイド風女子は軽く会釈をしてから退室する。コスプレかな? メイドかな?
「よくわかったな。」
「そう? いつものことよ。で? 何を聞きたいの?」
「あぁ、今日ステータスを確認してたんだけどさ。スキルのレベルの規準がわかんなくて。どのレベルでどれくらいなのかってのを知りたくてさ。」
「そう言うのって、女神様は教えてくれないの? 別に私が教えてあげても良いけど。」
「あの駄女神は、俺に肝心なことは何も教えないまま異世界に送ったからな。」
「そう。……スキルのレベルね。何から話せば良いのかな。……そうね。とりあえずスキルには上限があってね。一般的にはレベル10が上限ね。で、レベル2までが初級、4までが中級、6までが上級で、7が超級、8が達人、9は王級とか皇級って言われるわね。で10が聖人。レベル8の達人以上は称号持ちって言われてるの。特別な存在って事ね。」
「へぇ。上限があるのか。でも、なんでレベルじゃなくてそんな呼び名があるんだ?」
「普通の人はヒデオみたいにステータス確認ができるわけじゃないのよ。大きな街とか王都にしかない神器で確認するんだけど、その時に分かるのがその呼び名ってわけ。だからスキルが上級でもそれがレベルの5なのか6なのかは分からないのよ。天声で教えてくれるのも普通はその名称よ。」
「そうなのか。流石はリナ。よく知ってるな。」
「おだてても何も出ないわよ。」
「そういうつもりで言ったんじゃないよ。素直に凄いなって……。」
「そう。ありがと♡」
「気になることがひとつあるんだけど。」
「なあに?」
「一般的にはって言ったよな。てことは、例外もあるのか?」
「あら。よく気づいたわね。やっぱりあなた素敵ね♡」
「茶化すなよ。」
「ふふふ。それね。例外があってユニークスキルに『限界突破』って言うのがあるらしいの。このスキル持ちはスキルレベルの上限が10じゃなくなるのよ。だから、レベル11とかってのもありえるの。……で、レベル11以上はそのスキルの神って呼ばれるのよ。」
「スキルの神?」
「そうよ。例えば剣スキルの神なら剣神ってね。とはいっても『限界突破』なんてばかげたスキル持ちは見たことも聞いたこともないけどね。」
「……おれ」
「ん? なあに?」
「おれ……俺、そのスキル持ってる。」
「え?! 嘘でしょー?! 『限界突破』よ?! ……あ〜。そうね。あなた勇者だものね。」
呆れたように天井を見つめるリナであった。
長くなったので2話に分けました。
次話のアップは本日の12時を予定しています。
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