↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚勇者は便利屋じゃないんだよ! ー俺は名誉や金より安らぎが欲しいー  作者: しいたけ
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/213

第29話 異世界人の戦い方

2018/11/06 誤字脱字修正しました。

 少し戦闘が落ち着いたところで、初めて辺りを見回す。

 アルファー騎士団の活躍もあって、かなりの数の魔物が死体となって転がっている。

 味方も被害がないわけではないが、魔物たちに比べるとその数は少ない。


 それにしても、夢中で戦ってたとはいえ戦況を気にしないでいたなんて、やっぱり緊張してたんだな。

 それでも、事なきを得られたのは『気配察知』と『危険察知』『身体強化』などスキルのお陰だろう。

 レベルもあがったみたいだし。


 周りを見渡してみると、あれだけいた魔族もかなりの数を減らしている。あの数の魔族を退けられたのは、アルファー騎士団の力が多分にあるな。それに、ベルナドッテ公爵(クソ野郎)が言ってた通り、そもそもが『烏合の衆』だったのかもしれない。一体一体がそんなに強くない。俺も初めての戦闘にしては効率よく戦えている気がする。


 それにしても戦いとはこんなにもしんどいものなのか。

 体力的にではない、精神的に辛いのだ。


 周りには敵味方の死体が無造作に転がる。

 血の咽せるような匂い。

 生温かささえ感じるようだ。


ピロン♪

『条件を満たした為

 スキル『嗅覚強化』が Lv.3になりました。』


「イヤ! それ今いらね〜し!!」


 訳の変わらんタイミングでレベルアップした『臭覚強化』のせいで、血なまぐさい咽せ返るような匂いが俺に襲いかかる。


 敵を切りつけたときの悲鳴。

 飛び散る血。

 特に止めを刺すとき、手に伝わる感触。

 ヒデオにとっては、どれもが不快だ。


 ヒデオは、精神的な何かが少しずつ削られていくような、そんな思いを持っていた。

 実際に戦ってみて分かったことだが、戦うこと自体や死の恐怖より、敵を死に至らしめる事への不快感の方が強いのだ。


「慣れるしかないのかな。」

そう言いながら、ヒデオはリナのことを頭に浮かべていた。

「逢いたいな……」

誰にも聞こえない小さな声で、そう呟いた。


 ヒデオは知らなかった。超美少女女神(アストレア)のうっかりミスによりスキル『耐性強化』を付与されていないことを。

 そして、もちろん超美少女女神(アストレア)もそんなことはすっかり忘れていることを。


 それからのヒデオは、前線から少し下がり気味に位置取り、味方が討ち漏らした敵を体術で受け流すことに専念した。

 リナとの約束を思い出した。というのは彼の自分への言い訳だろう。

 実際の所、前線で敵を殺すのが苦痛に感じ始めていたのだった。できれば余り殺したくない。ヒデオの正直な思いだった。

 そして、彼自身の精神力もすでに限界を超えていた。本来ならとっくに()を上げていてもおかしくないと、ヒデオ自身も感じていた。それでもまだ動ける自分に驚きを隠せなかった。


「こんなところで『限界突破』機能しなくても良いのにな。」


 実際これが『限界突破』の効果なのかは分からない。しかし、今の状態が、何かの後押しであることをヒデオは感じ取っていた。


 止めを打つことを捨てて後方に下がったヒデオは、面白いようにゴブリンを回転させながら地面にたたきつけていく。他の従士たちが()()に止めを刺す。


 ヒデオ自身は止めを刺さない。

 イヤ、刺す気が起きない。

 しかし、従士たちが止めを刺してくれるので、相変わらず経験値は ピロン♪ ピロン♪ 入ってくる。


 それにしても、従士たち(彼ら)の止めの刺し方がえげつない。

 ヒデオはそう思っていた。


 異世界人(彼ら)はもう既に息絶えているであろう死体であっても容赦なく剣を振り下ろす。

 何度でも何度でも、歪んだ笑みを浮かべながら。

 まるで、惨殺ショーを楽しんでいるかのようにさえ思える。


「よくやるよな……。」

 その様子をヒデオは横目で見ながら、不快感を覚えずにはいられなかった。


「これが続くのはしんどいな……」

 ヒデオがそう弱音を吐きそうになったときだった。


 どこからか、炎のかたまりが降ってきた。ヒデオが振り向くと、そこにはゴブリンがいた。ゴブリンは魔法も使えるのか。ゴブリンシャーマンってやつか?


 そのゴブリンシャーマンは、ヒデオめがけてもう一度火炎魔法を放つ。


「ちっ。感傷にも浸らせてくれないのかよ。」


 飛んでくる火の玉をよけながら、ヒデオはゴブリンシャーマンにむかって走り出す。火の玉が当たる(すんで)の所で躯を僅かに反らせてよける。その速さには目を見張るものがあった。

 懐に入られそうになったゴブリンシャーマンが、意を決したようにヒデオに襲いかかる。ヒデオは左の腰に下げた剣を右手で持つと、そのまま横に抜きつける。


 ゴギッ!と言う感触が腕に伝わる。構わずヒデオはそのまま剣を振り抜く。

 ヒデオの持つ剣は刀とは違い、切ることに重点を置いた武器(もの)ではない。それでもヒデオの振るった剣でゴブリンシャーマンは両断される。


「SHAaaaaa!!!」

 喉の奥から絞り出すような声を上げながら、ゴブリンシャーマンは崩れ落ちる。


ピロン♪

『経験値を60pt獲得しました。』


トットゥルー♪

『レベル3になりました。』


ピロン♪

『条件を満たした為

 スキル『会心一撃(クリティカル・ヒット)』を取得しました。』


「今のはなんだ? 手応えがあった後はすんなりと剣を振り抜けたな。それに、なんか剣が光ってた気もするぞ。」

 

 その時である。鋭い閃光がヒデオの視界に入った。思わず閃光に視線をやる。

 閃光はヒデオのすぐ近くにいたゴブリンに突き刺さる。

 すると、閃光を受けたゴブリンが爆ぜた。


 子供の頃、悪ガキたちがカエルに爆竹を突っ込んで爆ぜて遊んでいた光景を思い出す。

 しかし、今回はカエルではない。ゴブリンだ。

 吹き飛ぶ()()もその量もカエルの()()とは比較にならないくらい盛大だった。


 ()()は、目の前にいたヒデオに否応なく降りかかる。

 体中にぶちまけられた()()が付着する。

 爆発の焦げた匂いと生暖かい肉の感触、そして生臭い血のにおいが辺りに充満する。


ピロン♪

『条件を満たした為

 スキル『嗅覚強化』が Lv.4になりました。』


 ヒデオは急に胸が熱くなったのを感じると、


「 △ N % / ※ V ○ ……」


 その場で盛大に嘔吐し、跪く。

「マジか……。」


 薄れ行く意識の中でヒデオは思った。

「『嗅覚強化』マジいらねぇ……」

ブックマーク・評価をどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。