第47話 滞在した4
翌日目を覚ませば……やっぱり。
でも、これはいけないだろ、絶対にダメだろ。何かに引っかかるだろ。可愛いと思うけど、少女だよ、少女。
コーマは兎も角として全裸の少女。見事にペッタンコだよ。
見た目より実年齢で見ればいいのかな、それなら何とか対処できるか、三五七歳だし――でも、微妙だ。
いつの間に忍び込んだのか、俺にしがみつくように可愛い顔して眠っている。コーマは絶対に知っていたはずだよ。
でも俺に教えなかったな。
そう考えていたらコーマが目を覚ました。
「おはよう、ラサキ。好きでしょ、こういうの。ウフフ……ん」
俺の唇に顔を伸ばした後、頭を俺の胸の上に乗せるコーマ。その仕草で体が動き、眼を覚ますサリア。
「うーん、ラサキ、おはようがや。あたいも神、コーマに習ってみたがや」
「いいけど、全裸はどうかと思うよ」
「神、コーマも全裸だがや。同等じゃないといけないがや。初めて殿方と添い寝が出来たがや。ラサキの体は気持ちが良かったがや」
あー、そうか。今まで一人きりだったからね。純粋に人肌に触れた事が嬉しいんだな。なら仕方がないか。
しかし、少女の全裸は無いだろ。
何かに気が付いたサリア。
「ラサキ。私の胸を見て何か思ったのかや? すぐに神、コーマのようになるから安心するがや」
え? おいおい、今、意味深な事言ったよな。俺は、助けを求めるようにコーマを見れば、眼を瞑っている。
あー、狸寝入りだ、絶対そうだよ、逃げやがったよ。あ、今、口元が微かに笑ったな。読んでいるよ全く。
サリアの話に触れないようにベッドを出た。
朝食は、サリアが果物を出してくれたので、食べて一息ついてからサリアの家を出る。
今にも泣き出しそうなサリア。ここで優しくしてはいけない。絶対にいけない。
コーマを見れば、もう歩いて行っちゃったし、冷たいな。俺一人取り残されているし。
「サリア、ありがとう。元気でな」
「やはりお別れなのですかや? 初めて知り合った人なのに……うっ、えっ」
「泣くなよ。また会えるから。サリアはいつでも友達だよ」
すぐに涙をこらえ、泣き止むサリア。ん? 俺を見る眼力が強いぞ?
「……ついて行きたいがや」
はい? あー、お約束だよ。
「それはダメだよ、サリア。お別れだ」
振り返っているコーマの声が聞こえる。
「ラサキー、行くよー」
俺は、サリアの頭を撫でて別れた。厳しいけど、一度も振り返らずに歩いた。
樹海の中をコーマと歩いている。また二日間の樹海歩きだ。コーマは、相変わらず楽しそうだな。
「いつも言っているでしょ、ラサキと一緒なら何処でも楽しいの。ウフフ」
夕暮れ時、背後に気配を感じる。コーマはとっくに感じていたようだ。
一定の距離を保って、木の陰に隠れながら付いて来るサリア。顔が半分出ているし、可愛い背負い袋を背負っているし、来る気満々だよ。
気が付かない振りしよう。
そして、来た時と同じで昼夜通して歩き、二日後。樹海を抜けて開けた道を歩く。
さて、隠れながら付いて来たサリアはどうするのかな。と思ったら、俺めがけ一目散に駆け出して来たよ。
半泣きのサリアが俺の腕にしがみついた。
「うわーん、ラサキー。助けてほしいがや。怖いがやー」
「サリアは魔女だろ。怖いのはサリアの方じゃないのか?」
「ううう、あたいは樹海を出た事が無いがや。一緒に行きたいがやー、連れて行ってほしいがやー」
もう付いて来ちゃっているし、泣いているし、確定だし。無下にしたら可哀そうだし。
サリアには魔法を教えてもらったから町でも案内するか。
それに、ついでと言っちゃあ何だけど、ルージュに直伝できるから良しとしておこう。
コーマは何も言わないで隣を歩いている。呆れているのか? 呆れているのだろうな。
「いいのよ、安心してラサキ。愛している」
サリアは驚いた表情で、俺とコーマを交互に見ている。コーマが俺を読める事は言ってないからね。
「え? え? 何ですかや? どうしたのですかや?」
「何でも無いよ。早く帰って寝たいな」
「あ、あの、あたいも泊めてもらえますかや?」
「ああ勿論だよ。魔法のお礼もあるしね」
抱きついたまま喜んでいるし。笑顔も可愛いし。こうなったら仕方がないな、サリアも一緒に歩き結局三人で町に帰る。
夕方になり、ギナレスの町が見えて来た。しかし、問題発生だ。
「サリア。証明書は持っているのか?」
「無いですがや。でも大丈夫ですがや」
背負い袋を下ろし、しゃがみ込んで中を探っている。その仕草が可愛いな。いや、そんな事を考えてはいけない。
サリアは見つけたのか取り出すと、首に巻いている。何だ、奴隷の首輪か……って、え?
「サリア! 奴隷の首輪なんて、何で持っているんだ」
嬉しそうに首輪を装着するサリア。
「昨日、コーマに教えてもらったがや。コーマの首輪と同じように作ったがや。似とるがや。魔法も掛けてあるから安心するがや」
「その意味知っているのか?」
「知っているがや。似あうかや? これで私もラサキの奴隷がや。アハハー」
「アハハ……じゃないだろ」
俺が困るよ、とても困るよ。少女を奴隷にるすなんて、町でどんな眼で見られるのか恐ろしいよ。
でも、もう町が近いし、俺が悪者になればいいのか。
「コーマ。証明書を教えればいいのに」
コーマを見れば、いたずらっ子の薄ら笑みを浮かべているし。
「ウフフ。この方が手っ取り早いでしょ。それにもう一緒に寝ているんだし。ウフフ」
何でサリアも嬉しがっているんだ? 奴隷なのだから、普通悲しむだろ。
「フフーン。ラッサキの奴隷、ラッサキの奴隷、ラッサ、ブブッ」
「歌うな、サリア。今後禁止だ」
何だかおかしいな、始めに会った時と性格変わっていないか? ファルタリアみたいになるなよ、疲れるからさ。
こうしてギナレスの町に、少女の奴隷を連れた俺は、蔑んだ目で見られたけど、魔法効果もあって無事に通れたよ。
この後も問題だよな。あの四人にはどう説明しようか。
「ラサキ。私は、お勤めがあるから消える。皿食には戻るね……ん」
「ああ、気を付けて行けよ」
「いってらっしゃいがや」
サリアは魔女だからか、神に抗体でもあるのかな。消える事も言っているしね。
これで完全に少女の奴隷を連れている俺だ。うわ、見られている眼が痛い、痛すぎる。もういいよ、早く慣れよう。
それに引きかえ、サリアは始めて見る町が新鮮なのか見る眼が止まらないな。俺から離れずに、廻りを飛び回っているよ。
「サリア。一度帰って寝るよ」
その一言で、挙動不審になるサリア。
「え? ど、ど、奴隷になったらもう寝るのかや? わ、私は覚悟は出来ているがや。だ、伊達に三五七年生きていないがや」
「意味が違う。夜通し歩き続けたから疲れているんだ。サリアも疲れただろ?」
「少しは疲れているがや、でも魔法で回復しているから大丈夫だがや」
俺は疲れているから寝る。家に帰ってベッドに倒れた。あ、ベッドが一つしかないんだっけ。
あとで買いに行こう――深い眠りに入った。




