「一退二進」
「一退二進」
最後の隊列変更から3ターン経過し、ロードのHPは風前の灯火だ
「部長、無駄にはしないぞ…」
そう言ってダイスを握るタフを見て、
シンゴは笑う
「まてまて、そんな悲壮感を漂わすんじゃない、どうせ次はお前なんだ、にしても初日でいきなり全滅とはな…、副長すまんな…」
シンゴが謝ると、副長は苦笑いする
「いや気にしないでくれ部長、そりゃ最初の冒険なんだ全滅することだってあるさ、それに、はじめて4時間くらいなら、またやり直せばいいよ」
副長がそう答えると、
シンゴはニコリと笑い、最後の攻撃ダイスを振ろうとする、
その瞬間、席を外していたミノが、ものすごい勢いで部屋に戻ってくる
「そのダイス、ちょっとまったぁ!」
ミノの声を聴いて、シンゴは驚き、ダイスを振りそうになる
「おいおい、なんだいきなりミノ、あ…」
シンゴはミノの後ろに女性が二人いるのに気づく、
「すいません、お待たせしました、先輩」
ユキがそう言うと、
ハッちゃんが頭を下げる
「ほんと、ご迷惑おかけしました」
それを見て部長は聞く、
「ハッちゃん、もう大丈夫なのか?、ユキどうなんだ?」
ユキが答える前に、ハッちゃんが答える
「「カエデ亭」の店主さんが、酔い覚ましを作ってくれて、それを飲んで横になったら回復しました、バッチリ大丈夫です」
ハッちゃんの後方で、「カエデ亭」の店主イシグロがVサインしている、
【魔王(副長)】はシンゴに聞く
「部長、攻撃するのか?それとも」
シンゴはそう聞かれ指示を迷っていると、
ユキとハッちゃんが席に着き、ユキがシンゴを見る
「スマホで直前まで実況を見てました、まずは先輩、隊列を変更してください」
ユキにそう指示され、シンゴは戸惑いながらも隊列変更をする
「【GM】さん隊列変更だ、えーと、前列ウィザード、中列ナイト・ロード、後列クレリック」
シンゴがそう言うと、【GMミヨシ】は頷く、
気を取り直したシンゴは、ハッちゃんに指示を出す、
「よしハッちゃんはナイトをヒールで回復してほしい、ステータスは初期値のままだが、ある程度は回復できると思う」
ハッちゃんは頷き、【GMミヨシ】告げる
「ナイトにヒールを使います」
ハッちゃんはそう言ってから、ダイスを振る
「出た目は1です、ナイトのHPが66回復しました」
【GMミヨシ】が回復の結果言うと、シンゴは目が点になる、
「クレリックのヒールって、そんな回復するのか…」
シンゴは、「運」に全てを捧げたロードの回復量を、
放置中だったクレリックに、あっさり抜かれ茫然とする、
一方タフは状況が好転したことを実感し
「よっしゃ、次のターンで仕留めるぜ」
そう言ってタフは握りこぶしを上げると、
【魔王(副長)】がタフを静止する
「そう焦るなよタフ、まずは私だ」
【魔王(副長)】がそう言って、ダイスを振る、
「出た目は2で、前列ウィザードは30のダメージ」
【GMミヨシ】が攻撃の結果を言うと、ユキがシンゴに提案する
「ナイトは予想以上に回復したみたいですし、私は攻撃でもいいですか?」
ユキにそう言われ、シンゴは頷く
「ああ、回復量によっては、防御してもらおうかと思ってたが、次のターンでナイトを前に出す、ユキは攻撃してくれ」
シンゴがユキにそう指示を出すと、
タフがユキに話しかける
「とどめは俺に任せといてよ、ユキさん」
タフは次のターンで仕留める満々だ、
そんなタフを見て、ユキは笑うと、続けて【GMミヨシ】に告げる
「ファイアボールを使います」
そう言って、ユキはダイスを振る
「出た目は3です、ダメージは18、「魔王の影」は…」
【GMミヨシ】が最後まで話す前に、
タフが食い気味に割り込む
「よっしゃぁ、とどめと行くか」
そう言ってタフがダイスを振ろうとするが、
それを【魔王(副長)】が制止する
「タフ、【GM】の話を最後まで聞け」
そう言われタフはキョトンとすると、
改めて【GMミヨシ】は告げる
「「魔王の影」は倒されました、おめでとうございます」
それを聞いてタフはガクリとする、
シンゴは流石に気の毒に思ったのか、タフの肩をポンと叩く
「タフ、最後は持っていかれたが、お前の火力無しでは勝てなかったんだ、よく頑張ったよ、マジでな」
シンゴにそう慰められ、タフは苦笑いする、
それを見て申し訳なさそうにユキはいう
「タフさんすいませんでした、とどめ刺しちゃうなんて思ってなくて、ごめんなさい」
ユキがそう言うと、タフはニコリと笑う
「いやそんな、謝らなくてもいいよ、気にしないで、ハハハ」
タフがそう言うと、
ユキはニコリと笑うと、話を続ける
「あと、ハッちゃんを介抱しながら、スマホで見てましたけど、三人で進んで行くの見て感動しましたよ、ねぇハッちゃん」
ユキにそう話を振られ、ハッちゃんは驚き困った顔をする
「えっスマホ?、私は横になってたから…、あっ、すごい、すごかったです」
間違いなく見てなかったであろう、ハッちゃんの反応を見て、
シンゴとタフは苦笑いする、そしてあることを思い出す
「3人?」
シンゴとタフは同時に言うと、
「ンンッ、オホン!」
後ろで咳払いが聞こえ、シンゴとタフが振り向くと、
この戦闘の犠牲者ミノが立っている。
「なんでもいいが、早く生き返らせてもらえないかな?」
ミノが不機嫌な口調で言うと、
シンゴ達は急ぎセーフティゾーンへ向かい、
ウィザードのスキル「リターン」を使用して、タウンへ帰還した。




