10.『Combat Arts(戦技)』
連日投稿。
頑張りました・・・
ただ、推敲がきちんとできていない可能性がありますので後日修正されるかも?です。
2012/04/17 文章一部訂正
私のことはリディとお呼びください。
クライフがリディエールさんと呼んだらそう言ってきた。
リディエールに負けずもう一度リディエールさんと呼んだら物凄い目で見られた・・・
結局押し切られる形でリディと呼ぶことになった。
俺のことは師匠って呼ぶくせに・・・女は怖いとです。
クライフの呟きを聴き取った者はいなかったようだ。
リディエールは一旦王都に戻ろうと提案してきたが、リディエールの採取がまだ終わっていなかったのでさっさと終わらせることにする。
森に入ってすぐの所だったので、もう一回来るのも面倒だというのが最大の理由だが。
リディエールは恐縮していたが、手伝いの見返りに晩飯を奢らせるということで納得させた。
まぁ、クライフは飯付宿屋なので、宿に戻ればタダで飯が食えるのだが、そこは黙っていることにする。
帰りはFastMove(高速移動)を使ったが、リディエールはまだあまりアーツの扱いに慣れていないようで、それほど速度が出せなかった。
Eランクとしては合格点の制御力だが、上を目指すには少々心許無い。
ランクUPには二つの壁があると言われている。
一つはEからDへのUP。
もう一つがDからCへのUP。
前者はEとDでは獣の強さが急に上がったように感じるためだ。
これは、アーツをどれだけ効果的に使用できるか?というところが肝になるからで、ここで足踏みする冒険者は多く、脱落していく者も少なくないと言われている。
後者はCランクになると魔法を使用する魔獣の割合が増えるためだ。
Dランクにも魔法を使う魔獣はいるが、せいぜいこちらの行動に干渉する程度の弱い魔法しか使えない。
しかし、Cランク魔獣はこちらを殺傷可能なレベルの攻撃魔法を使用してくる場合も多い。
魔法に上手く対処できるかがCランクとDランクの分かれ目となる。
見たところ、リディエールのアーツ制御はそれほど悪くない。
きちんと練習すれば、すんなりDランクへ上がれるだろうとクライフは見ている。
教えるとしたらこの辺りからかなぁ・・・等と考えながらの帰路であった。
ギルド総本部に帰り着いたのは、結局日がだいぶ傾いてからだった。
それぞれにカウンターに行き、依頼結果の報告と報酬の受け取りを済ますと入り口で待ち合わせて街へ繰り出す。
グリエモンは金貨7枚になった。
わざわざ毛皮が傷まないように近接戦闘で倒した甲斐があるというものだ。
適当な定食屋に入り席に着いた。
酒場は避けることにする・・・なんか嫌な予感がしたので・・・
注文を済ますと早速話を聞くことにした。
「Eランクって言ってたよな。
ずっと総本部にいたのか?
だとしたら、ここまではどうやってあげたんだ?」
「Eランクへは雑用系であげました。
Eランクになってからはアーツの練習をしつつ、時々でる依頼を請けていました。」
ギルド総本部では、Eランク依頼は少ないが全くないわけではない。
主に中腹域を追い出された低レベル獣の採取・討伐となる。
恐らくこの辺りを請けていたということなのだろう。
早く強くなりたいという割にはきちんとアーツの練習も行っており、意外に冷静に自分を見れている。
強くなりたい厨だったらどうしようと悩んでいたが、その心配はなさそうで一安心した。
Eランク獣は問題が無かったので、ランクUPのためにDランク依頼を請けたら・・・ってことなのだろう。
よくある話だ。
「今日軽く様子を見させてもらったけど、リディのアーツ制御力じゃまだDランクは早いな。
あの程度じゃDランク獣には勝てない。」
「そうなのですか?
でも、今日戦ったのはCランク魔獣でした。
Dランクなら・・・」
「今日の奴はグリエモンって魔獣だが、こいつはDランク獣クマエモンの亜種だ。
グリエモンもクマエモンも身体能力にはほとんど差はない。
違いは魔法使用の有無。
この1点でCランクとDランクに分かれてる。
魔法を使っていないグリエモンに追い掛け回されてるようじゃ、相手がクマエモンでも同じことだよ。」
クライフの説明を聞いて、しゅーんと項垂れるリディエール。
自分ではきちんとステップアップしているつもりが、全く足りていなかったと指摘されてしまったのだからしょうがないだろう。
「QuickMove(瞬動)は使えるか?」
「頑張ればなんとか・・・」
「Dランク獣を相手にしようってんなら自然に起動できるようにならないと話にならないよ。
んー・・・やっぱ、まずはアーツ制御力を上げるところからかなぁ。」
というところまで話したところで食事が運ばれてきたので一旦会話を切った。
山盛りのサラダは瑞々しい緑色をしており、鉄板の上のお肉はジュージュー音を立てて良い匂いを振り撒いている。
否応なしに空腹を刺激され、二人とも暫くは無言で食事をすすめた。
テーブルの上が綺麗に片付き、お茶が運ばれてきたところでリディエールが口を開いた。
「先ほどの話なのですが、アーツの制御力を上げるには具体的にどうすればいいのでしょうか?」
「実際に使ってコツを掴むしかないだろうね。
とはいえ、継続効果系と瞬間効果系で大別できるから、まずは両系統の大まかなコツを掴むところからがいいかな。」
「なるほど・・・
では、継続効果系はFastMove(高速移動)で瞬間効果系はQuickMove(瞬動)で練習することにします。」
「それ違うぞ。」
「え?」
飲みかけの湯飲みを持ったまま呆けている。
「勘違いしてるやつが結構いるが、QuickMove(瞬動)は継続効果系だ。」
「そ、そうなんですか?
QuickMove(瞬動)は起動させることで、目的位置まで高速で移動できるアーツだと思っていたんですが。」
「そこが違う。
QuickMove(瞬動)は起動すると消費魔力が尽きるまで持続し続ける。
リディは恐らく消費魔力の制御が上手くできてなくて、1回移動で消費魔力が尽きてんだろう。
QuickMove(瞬動)使用時は、今から何度移動する必要があるかを判断して消費魔力を決定する必要がある。
さすがに戦闘中ずっと持つように魔力を込めるのは非効率だからな。」
(魔力の追加補填まで説明すると混乱するだろうからそこは後日かな)
「そうだったんですね・・・
アーツ・リストにはそこまで詳しく書かれていないので勘違いしていました。
そうなると、瞬間効果系はまだ得意と言えるものはないですね。」
「ここぞって時に相手に高確率でダメージを入れられるようにしたいから、何か一つでもいいから習得した方がいいな。
だからと言って、攻撃がアーツ頼りになるのはだめだけどな。」
「あ、あの時魔法を吹き飛ばしたのもアーツなんですか?」
リディエールが思い出したように口にした。
「あれはBlitzImpact(衝撃急襲)っていう瞬間効果系のアーツだよ。
攻撃を叩きこんだ瞬間に籠めた魔力を爆発させて、その衝撃波でダメージを倍加させるアーツだね。
通常は攻撃がHitした衝撃で魔力を爆発させるものなんだけど、あの時はタイミングを合わせて魔力を自爆させたんだ。
で、衝撃波で魔法を吹き飛ばしたってわけさ。」
「そんな使い方もできるんですね・・・
アーツって奥が深くて驚きました。」
リディエールの眼差しがどんどん尊敬色を帯びて行く。
それに気付かずにクライフは流暢に説明して行く。
「使いこなしているつもりで全然ってことはよくある。
そのアーツがどう使えると便利なのかって考えてると、ふと一風変わった使い方に気付いたりするよ。」
「さすが師匠、勉強になります。
で、あの・・・BlitzImpact(衝撃急襲)って覚えるの大変でしょうか?
使いこなせれば、攻撃から魔法の迎撃までできて便利そうだと思ったのですが。」
「基本的な使い方だけならそうでもないかな。
ただ、迎撃に使おうと思ったら身体能力向上系、たとえばQuickMove(瞬動)とかとの並列起動が必要になるぞ?
それに近接格闘が必要になるから危険度が段違いだ。」
「やっぱりそんなにうまくはいきませんよね。」
リディエールが少し遠い目をしながら呟く。
「主武器は剣だよね?
ならImpactBrade(衝波斬)とかどうかな。
BlitzImpact(衝撃急襲)と同系列のアーツだよ。
剣を利用したアーツなら間合いも少し広いし、若干使いやすいんじゃないかな。
アーツ・リストにはある?」
「確かあったと思います。
ただ、習得はしていないのでアーツの組み換えが必要になりますが。
奉仕Pは十分あるので、明日にでも変更してきます。
で、早速なのですが、いつでしたら稽古をつけていただけますでしょうか。」
「明日時間あるから見てやれるよ。」
「ありがとうございます。
では、10時からギルドの鍛錬場ではどうでしょうか?
朝、礼拝堂に寄ってアーツを組み替えていきますので。」
「りょーかい。」
二人はそこで別れてそれぞれの宿に戻った。
明けて翌朝。
リディエールは礼拝堂へと来ていた。
礼拝堂はどんな小さな村にも必ず1つある。
複数の神様が祭られていることがほとんどだが、必ず祭られている神様がいる。
それが天啓の神シクラメンだ。
礼拝堂でシクラメンへ祈りを捧げるとその人間の前に1冊の本が現れる。
この本こそ、その人の才能を表した本で「才知の書」と呼ばれている本である。
本にはその人が習得可能なアーツの一覧が表示され、選択することでアーツを習得することができる。
ただし、アーツにはコストがあり、累計がその人の許容量内でなければ習得できない。
また、各アーツはこの才知の書を利用することで簡単に付け替えが可能となっているが、才知の書を利用するためには神々への奉仕が必要となるため気軽に利用できるわけではない(礼拝堂や街の清掃などいわゆるボランティア活動が必要で、10P貯めると1回才知の書が利用できる)。
なお、Lvアップによって許容量とアーツを増やす事が出来る。
リディエールはシクラメンの像の前で跪くと祈りを捧げた。
すると、才知の書がリディエールの前へ現れた。
奉仕P:67と表示されている。
「あら・・・最近は冒険者の活動に力を入れてしまっていたからPが増えていないわね。
いけないわ・・・」
と、少し考え込んでしまう。
しかし、すぐに気を持ち直して才知の書を手に取った。
「それよりアーツの変更をしないと。
師匠をお待たせしてはいけないわ。」
CombatArts List 1/1
Capacity 45
TotalCost 39
1. FastMove
■Cost 5
2. QuickMove
■Cost 10
3. PhysicalRise
□Cost 7
4. Hardens
■Cost 5
5. NoisingMist
■Cost 12
6. BladeStrength
■Cost 7
7. ImpactBlade
□Cost 15
8. AuraBlade
□Cost 45
9. BlitzImpact
□Cost 15
10. ConsistentHand
□Cost 17
「NoisingMist(存在霧消)を外して、ImpactBlade(衝波斬)を入れましょう。」
ぽんぽんっとアーツの設定を行う。
CombatArts List 1/1
Capacity 45
TotalCost 42
1. FastMove
■Cost 5
2. QuickMove
■Cost 10
3. PhysicalRise
□Cost 7
4. Hardens
■Cost 5
5. NoisingMist
□Cost 12
6. BladeStrength
■Cost 7
7. ImpactBlade
■Cost 15
8. AuraBlade
□Cost 45
9. BlitzImpact
□Cost 15
10. ConsistentHand
□Cost 17
「これでいいわね。
それにしても、許容量ってなかなか増えないわねぇ・・・
AuraBlade(幻想剣)なんていつ使えるようになるのかしら。」
ふぅ・・・と溜息をつく。
「そう言えば・・・
師匠はアーツをいくつも使ってらしたけど、どういう構成でいらっしゃるのかしら。」
リディエールの呟きは空気に溶けて消えて行った。
■リディエール・アルディエス
金髪蒼眼
16歳
剣士
冒険者ランクE
Lv24
今回はアーツについて色々と詳しく書いてみました。
設定がだんだん錬れてきて楽しくなってきましたw