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 それからそのノイズをまた聞いたのは2日後の事だった。夜にしてまだ真夜中には届かない時分の事。

 相変わらず単調で断続的な同じ音が鳴り続く。

 時間にして約70秒。

 突然に聞こえ始めたかと思えば、突然に消えていく。最初の時と全く同じだ。

 これは意図を持たないとこんなことは出来ない。そんな確信があった。

 また同じような時間に聞こえるだろうか。それは期待できないだろう。最初に音を聴いて今回間に丸二日と6時間ほどと時間にして大きなずれがある。2時点の比較でしかないが、この予測であれば次に音を聴けるのはおそらく明後日の夜明け前だ。

 少々どころか真に暗闇の中であるが期待を掛けるには悪くないかもしれない。

 その間に少し信号の分析をしてみても面白いだろう。今回はちゃんと録音もし、電子データとして取り込んである。準備は万全、寝る前に少しだけでも進めてみる。

 簡単な分析でわかったのは、信号は正確には67.5秒の長さを持つこと。その中で1.15秒ごとに一音と無音、一音と無音と繰り返している。

明らかに2進数だ。ただ今の信号だけだとただただ1,0,1,0とだけ繰り返している。それだけでは無意味だ。

 もしかして定期的に信号を送信して応答を待っているのか。そんなことが頭によぎった。

 それであれば相手はこちらから、あるいは世界のどこかから信号が送られるまで67.5秒の連絡を送り続けるはずだ。

ならまた同じ信号が来る可能性は相当高い。

 期待で胸が高鳴る。本当にそうならその後はどんな応答を送ろうか。

 アイデアが浮かんでは消えを繰り返すなかで、ベッドに横たわり睡魔に襲われるまでずっと考え続けた。



 翌朝は吹雪だった。

 窓を見てもただただ白く、張り付いた雪が視界を閉ざしている。

 一段と冷えた室内を暖炉の火が懸命に温めようとして、燃え盛っている。

 「今日は俺も仕事には出れんな、…といってもこんな日に外に出ようなんてやつはいないが」


 リビングには父も居てスープを食しながら愚痴の様に言った。

 「お前も学校は、…まあ、そう変わるもんでもないか。どうだ、ラジオの方は?」


 「面白いよ、色々聞けてるし、何よりアンテナは本当良いね。アレのお陰で世界中の電波が拾えてる」


 「そうか、なら良い。楽しめてるなら何よりだ。冬は何も無いからな。今日みたいな日にゃ誰に会うにしても外に出るだけで遭難しかねん。家で楽しめるならそれでいい。ただ、お前は…」 


 手を止め、言葉を止めて、父の視線が向く。

 真剣な、だがどこか憐れむような不思議な顔をしていた。

 「別にこの村にいなくてもお前なら都会の方でも十分やっていける。アンテナにしろラジオにしろほぼ一人で作れるんだ、わざわざここに居るより都会にいた方がお前にしても楽しいんじゃないか」


 それは時折話すことだった。

 この村にはそう大した学校があるわけではない。中等程度の普通に生きていく最低限が揃っているくらい。それでも村で過ごすならそれ以上は特に要らずさして問題があるわけでもない。

 だがユークという人間にとっては少し違った。

 数冊の本と電子網から得られる情報で村で普通の教育内容は入学前に終えてしまった。友人との繋がりこそあれ学ぶものは特になく、時間つぶしの側面すらあった。

 まして冬時期など学校の存在などあってないようなものだ。登校すら義務でなく、教師すら家からほぼ出れないような毎日なのだから。

 それもあって父からは街の学校に行くことを勧められることがある。行くなら寮に住むことにもなるだろうがそれでも学ぶことの方が多いのではないかと。

 「前も行ったけど、そんなに興味はないかな。勉強だけならここでも出来るし、今は面白いことが見つかったんだ。わざわざ街に行くよりそっちに集中したい」


 そうか、とただ返事は一言で終わった。

 それから軽い食事をとってから父と家の確認を始めた。

 冬は丁度中ごろ、これからもう少し厳しい日々が続く。保存食が足りなくなるようなら早めに誰かから買わなくてはならない。それに水が足りているかも重大な問題だ。雪を溶かしながら数日の分を確保しておく。これが遅れると飲料や料理すらも困難になる。

 幸いにして予測を外さず食料も水も春先までどうにかなる量だった。水の方は相変わらず数日に一度のペースで雪を使うのは変わらないが汚れもなく澄んだままだった。

 それからというもの父と共にリビングでラジオから聞こえてくる異国の音を楽しんでいた。

 国内の放送も取れるが鎖された日々では、通常の村では全くあり得ないような刺激の方が面白く遠ければ遠い程に聴きごたえがある。何を喋っているかわからずともそういう世界とそういう音楽があるという事実で楽しめた。

 それは父も同じで、むしろ元は父が始めた趣味だった。このラジオ趣味は自分にとっては物心ついたときからの当然で、せっかくならもっとやろうとアンテナの増設・拡大までやるようになった。

 そんな経緯があるが故か、そのことを話したのは自然だったかもしれない。

 「…最近ちょっと不思議な電波があるんだ。歌とか、喋ってるのを送るわけじゃなくて何か信号を送ったりみたいな。そういうのって昔もあった?」


 「いや…そんなのは耳にしたことは無いな。だが、個人で何かやっているというのはよくあった。今はどうもネットに寄っているようだが、個人放送で勝手に何かを流すようなのは昔からある」


 「昔…どういうものだったの?」


 「どうっても…ただ好きにしゃべってるやつも居たし、地元の音楽でこういうのが見つかったとか言っている奴も居た。まあ、そう大したことでもなくそいつ自身かその周りの事を話してたな。…そういう話なもんだから1年もすれば大概のやつは居なくなってる。残るのは余程の話好きかとんでもなく暇なやつかぐらいだ」


 「今でも残ってる人、いるの?」


 「知らんなぁ…。あのアンテナ設備の設置を手伝ったのも半分くらいは近場で拾える放送に飽きてきたってのもあるしな。そういうやつがいたら違ったのかも知れん」


 「もし、今電波を送っている人がそういう余程の人で、ずっと返事を待っているような人だったらこっちからも電波送ってみても良い?」


 「それは…まあ、悪くはないが、どこからの信号なんてまだわからんだろう。

 あのアンテナは受信こそ世界中から取れるが、こっちから送るにしたら距離と方向がわからんとどのレベルの装置が必要かすらわからん」


 「うん、…そうだよね。でもまだ何を送ればいいかもわかってないんだ。本当に何かのメッセージなのかも確認したい。一応明日アンテナを見てくる時に信号元の確認を取れないか弄るつもりだけど、結構まだ先の話かな」


 「明日か…。まだ吹雪くぞ。その時は辞めておけ」


 「わかった。…今日も夜に信号来るかもしれないから来たらその分析をすることにするよ」


 「そうか。」


 それからはそんなに変わらない時間を過ごして、少しだけ変わったことと言えばわざわざ夜明け間の時間に目覚ましを掛けて一度目を覚ましたことだ。

 予想の3分前。ラジオに明りを灯す。

 メータがゆっくりと触れて砂の音が聞こえてくる。

 まだ、あの音は聞こえない。不思議と時計の刻みの音が大きい。

 目を閉じてゆっくりと待つ。風の音、椅子の軋む音が耳に残る。

 そして。

 また聴こえてきた。

 限りなく単調に、どこまでもシンプルな音。

 10101010の2進数の繰り返し信号。

 時間はやはり約68秒。

 信号間隔も丸二日と6時間ほどで不変。

 これは意図以外の何物でもない。そこを疑うべくはもうない。

 後はこの信号の送信者がどこから、そして何を伝えようとこれを送ったかを考えよう。

 外はまだ吹雪。明日も一日家の中に居るであろう予想がとても楽しみになってきた。




 残念と思うべきか、楽しみが実現したと思うべきかやはり朝でも吹雪は続き外での作業は不可能となった。

 当然そこから行うのは信号の分析へ。

 耳で聞いた分には音の有り無しとして2進数と思えるが本当にそうなのかいくつか考えなくてはならない。

 アンテナで捉えた信号をそのまま分析にかけてみる。

 最初は単純な波形パターンの分析から。67.5秒間特に変なものは見られない。ずっと同じ周期での波が続くだけだ。

 次には周波数分解で周波数の解析を。もし1と0の間に何かを混ぜたいのであればここで2秒ちょっとの周期以外に、別の周期を持つことが示されるはず。そこに文字列が含まれる可能性だってありえる。

 そんな期待は薄々程度にもってはみたが、結果は何も無し、グラフで表示してみてもディスプレイに出るのは周波数0.375での鋭いピーク。他には何もない。

 これはただただ信号は同じ周期での繰り返しということを示すだけ。

おそらくこれが示しているのはこの電波信号には意味がない。より正確にはメッセージとしては意味がないが、電波が届くことに意味がある。

 最後に一応、本当にそうであるということをもう少しだけ疑っておきたい。

 信号に含まれている情報量を計算してみよう。エントロピーとして考えてみればいい。

 定義は少しだけ複雑だったが分析用の実装は容易だった。

 結果は1ビット。しかも完全に予測可能という前提で。繰り返しに意味があるとしても1,0をまとめてみれば結果は0に。

 つまりはこの信号には何も意味がない。

 そして、自然にこんな信号は起こりえない。

 ノイズでも言語でもエントロピーが0に落ち込むようなことはありえない。

 この信号は、ただ、そこに信号が在るということを示しているだけ。

 だから、どこかの誰かが送っているんだという意図を示す。

 確信。

 服の中で肌がざわめく。血が熱い。

 誰かが気づけと、そう願った信号が漸くここで紐解かれた。

 無機質な筈のソースコード、グラフ線、一つ一つの数値が色を帯びているようだ。

 2日間という時間を経て、そしてたったの1分、さらには信号そのものに意味のないことを理解してその意図を掴む、そこまでして辿り着ける。

 随分と手の込んだことをしてくれる。謎解きとしては難易度が最初に高すぎる。発見が困難な謎はほぼ誰も解かないし、知りもしないというのに。

 だけどまだ、まだこれだけでは完答には及ばない。

 謎はまだ残っている。

 この信号の送り主がどこにいるかだ。

 送り主に信号を届けて、向こうが信号を受信しなければ謎の解体にはほど遠い。

 だがそれもアンテナの調整と少しだけ追加で端子を付ければ良いだけだ。やり方もすぐに考え付く程度。

 なんだ、と先程まで身体に灯っていたはずの熱気がすっかりと抜けてしまった。

 一段と強くなった吹雪が窓を強く鳴らしている。



 早めに床についたせいもあって翌朝は随分と早くに目が覚めた。暇つぶしもと思ってラジオにPCに電源を入れてザッピング。今日は午後には一旦雪雲が途切れそうだ。アンテナ設備を弄るには丁度いいかもしれない。

 ただ朝という時間は随分にシンプルな構成の放送が多いらしく、しかも国外はほぼ夜で音楽もろくに流していない。

 どこぞのハイウェイの事故や、論説、果ては身内の不幸話と一番興味をそそられるのが天気予報とはどういうことだろうか。

 世の中には朝から娯楽を求める人間は少ないのか、そんなことを考えた一瞬にPCの方に動きがあった。

 信号の受信。

 馬鹿な。

 信号は昨日の朝方に聞いたはず。

 そして今日はまだ一日しか経っていない。

 だがPCには波形パターンが記録されている。

 間違えた?

 確かに、最初に信号をキャッチしてから2回目の時までには、間の時間帯で別の事をしていた。

 そうか、その間にも信号は来ていたのか。

 電波が発せられていないのではなく、ただ見逃していただけ。

 2日も間を空けていたのではなく、毎日送られていた電波に気づかなかったから2日だと思っただけだった。

 そして相変わらず信号の中身は1,0の繰り返し。

 「…悪かったよ」


 ぼそりと呟いたはずの声は意外なほどに明るいものだった。

朝から大きめのサプライズはありはしたものの天気予報は流石の精度で雲の動きを当てた。

 昼から広がり始めた空の青はあっという間に白を追い出して久しぶりの光を届けている。

 だがそんな光の中でも雪は解けることなく家の前から裏山までを深く覆っていた。

 それもあって随分と時間を掛けてくることになった。

 新雪は踏み込む必要があり、しかも湿気っている分重く力がいる。

 裏山についたときにはそれだけで一仕事を終えた気分だった。

 それでも手と足を止めるわけにはいかない。

 運よく晴れ間の日にあるが、山が近い土地に位置する以上天気の急変はいつだって起こりえる。まして風が強いことが一つの土地柄になっている場所だ、雲が運ばれる前に事を終えておくぐらいで良い。

 そう思いながらアンテナを見やれば想像通りと言うべきか雪に半身を覆われた姿で屹立していた。

 あれだけの風があれば仕方が無いと、手で払い、時に金属棒も使って氷になった張り付いた雪もどけていく。

 いつもはこれで終わりだが、今日は追加でもう一つ。

 これまでアンテナは各方向に向けたものを8つ用意して、それらからの信号をひとまとめにして家に送っていた。

 ちょうどこれならどこの電波でもまとめて選べたが、今はそれだけでは欲しい情報がたらない。

 信号の位置が知りたい。

 それを叶えるために信号を分割して、ラジオ用と位置特定用の2つにする。

 と言っても単にアンテナから出る送信用のケーブルを二股の分割器に入れて、もう一方を頑張って家まで引き直せば終わる話だ。

 このケーブルが家に着けばそれぞれ少しの抵抗とダイオード、そしてPCに接続される。

 後はラジオを聴きながらどのダイオードが光るかを見るだけでどのアンテナからの信号かが分かる。信号強度については言わずもがな。

もう少し複雑な仕組みにしても良いが、冬にこんなことをする以上できる限り単純化しないと雪や風のリスクが大きすぎる。

 ケーブルも雪に深く埋めて上に出ないようにしないと風でアンテナを引っ張ってしまいかねない。

 家までの道を歩いて路を作りながら、そしてケーブルを敷いてまた雪を敷きながら家へと向かう。

 思いの他時間が掛かって、終える頃には空にはまた灰色の雲で充ちていた。

 少しずつ暗くなっていく空を見ながら家での作業もしてみれば、急ごしらえではあったが追加装置の意義は十分にあった。受信方向の特定も信号強度の情報も十分使える範囲になっている。試しに受信できるいくつかの放送局の電波で強度の見積もりを計算してみてもほぼ同等のオーダーで結果が出てきた。後はここからあの電波の強度を計測して、同方向の近い周波数で放送している放送局からの電波強度の情報と組み合わせてやればそこそこ程度には位置の特定も可能だ。

 これで随分と謎の主に迫ってきている。

 そう思った矢先に問題は現れた。それも3つ、特大の壁として。


 問題は3つ。

 一つは電波の方向の問題。

 もう二つは電波強度の問題。

 順に落ち着いてもう一度考える。

 電波を送っている人間が動かなければ当然常に電波は同じ方向からの信号として受信できるはずだ。これは当たり前の話で、2点間の関係性など変わるはずがない。

 だがこれまでおよそ10日分のデータを集めたところ、違うのだ。毎回反応するアンテナが違う。

 昨日の電波は南向きアンテナで捉えられたはずが、今日は南東あるいは東向きの。そういう事実だけがデータには記録されている。

 まさか動き回っているのか。一つの可能性としてあり得ない話ではない。

 だがそれももう一つの問題と合わせると非常に奇妙なことが起こる。

 もう一つの問題は強すぎる電波強度だ。

 発信元がどこであれ、大気や大地との相互作用をする以上電波は届くまでに減衰してしまう。だからこそその減衰量がわかればある程度の位置は逆に解くことができる。だというのにこの信号から計算してみれば、地表上どこにあったとしてもあり得ないほどに減衰が少なすぎる。むしろ今いる部屋から適当に電波を送ったとしたらそうなるんじゃないかというくらいだ。

 ならこの近所で放送設備を持っている誰かがやっているんじゃないか。当然の帰結だ。

 だとすると方向が問題だ。

 毎日違う方向で約3時間ずつのずれを持ちながら電波を送る。しかも夜昼問わず、天候も問わず。

 あり得ない。

 間違いなく死ぬ。

 この吹雪の季節の中で、しかも視界の無い中でどうやってそんなことが出来る。半歩先すらまともに見えない白の闇の世界だ。

 まして放送用の諸々まで持ちながらなど狂気を越えている。

 また別に考えても、昼にそれをやるとしたらどうだろう。どうやっても異常人物として町中で噂になる。昔からやってたとしたらそういう人物として語り草にならないわけがない。

 そして3つ目。この異常な電波強度は昼だけに捉えられたものであること。むしろ夜は異様に弱い。分析前は増幅器を入れていたせいで聴こえていたが、あまりに弱弱しい信号だ。昼夜で差があり過ぎる。最初に信号を捉えられたのは本当に幸運としか言いようがない。

 この差、むしろ桁が違うレベルのズレはたまたまどころではない。同じ電力で放送するにしても昼と夜の送信回とでどれだけの距離を移動すればここまでのズレを作れるのか。


 なんだこれは。

 ただそれだけが頭の中を支配する。

 間違いはない。計算にも設備にも。

 既知の電波の送信位置は何か所も確認して減衰と強度の計算は複数回やった。手でもプログラムも使ってだ。

 もしアンテナからここまでに何かノイズの乗るようなものもあるか。それもない、というか強度計算然り電波の周波数分解然りでノイズが乗ってしまっていればもっとはっきり何かが出てきたはずだ。

 それにこの辺にはインフラも設備もそう多くはない。本当に最低限程度。

 何かがおかしい。

 もしこれらが一つに解決されるなら、前提を一つ変えなくてはならない。

 自分が知っているはずの現象、理論ではまだ足りない。相手は2歩も歩も先の現象を理解して利用している。

 その自覚をしたとき、悔しさは不思議となかった。

 ただどことない高揚と春の様などことないせわしなさを覚えた。


 それからしばらくの間、ただ無心に虚ろと言っていい程にデータの事実だけを見続けた。

 毎日の信号、毎回動く方向、異常な強度の強さ、昼夜の差。

ただの数値として並べたそれらを見ているうちにふと思い当たったことがある。

 昼のこの電波の受信方向は常に公転の中心に向かっている。夜の方はどれかがたまたま当たるか、日の入り前や夜明け前は地平線に向いたアンテナが反応している。

 電離やら層の剥離やらで上空大気内での反射と増幅が繰り返された、とでも言うのだろうか。方針としては悪いものではないかもしれない。そうであれば夜に信号が微弱になるのもうなずける。

 だがこれは普通に知られているような話ではないし、何より普通に超距離の伝搬の性質とは逆だ。大気中にそんなに電荷が発生すれば不安定化する方が先に来る。

 そのはずなのに、現実はそこを突き抜けてきている。

 気にならないわけではない。これだけでさえ現代的知識を塗り替えるような実証だ。

 だとしても、その理由を知るために大規模に電波の送受信実験をできるような何も持ち合わせていないのだ。

 だが、それでも少しの希望は見えた。

 日中に特定方向に向かって電波を送ればそれなり以上には増幅されうる。

そうすれば相手までの距離はわからなくても届けることは十分可能だ。加えて可能な限り送るときの電波も強くしておけばより確実性もあがるだろう。

 その結論で今は十分だ。

 信号は確かに届いたのだと伝えられる。それでいい。




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