【閑話】第9話 傲慢
是非、ブックマークか評価を。
私にガソリンをください!!
やばい、ストックが心もとなくなってきた。
けど、とりあえず時間外にアップロード。
本編は予定通り18時更新です。
そろそろハートという名の栄養補給をよろしくお願いしますw
* * *
アル・テラス大陸。
そのどこかの洞窟。
――暗い、そして湿った土の匂い。
俺はそこで目を覚ました。
「ギ、ギャ……?」
仲間のゴブリンたちが、俺を見下ろしていた。
どれも同じような顔、同じような体。
俺もその一匹にすぎなかった。
名もない。
力もない。
ただ生きるだけの、弱い存在。
だが――
その日、俺は“偶然”生き残った。
洞窟に侵入してきた冒険者の剣が、俺のすぐ横をかすめていったのだ。
仲間が次々と倒れていく中、俺だけが生き残った。
運がよかっただけだ。
「……ギ、ギャッ」
胸の奥が熱くなった。
生き残ったのは偶然。
だが、その偶然が俺の中に“何か”を灯した。
――俺は、死なない。
その日から、俺の運は転がり始めた。
* * *
「ギャッ! ギャアア!」
俺は狩りに出た。
弱い獲物ばかりだったが、なぜか俺の前には“倒しやすい獲物”ばかり現れた。
落石で動けなくなった狼。
怪我をして弱ったオーク。
仲間とはぐれたスライム。
俺はそれらを倒し、肉を食い、魔素を取り込んだ。
力が、少しずつ増していく。
「ギ……ギギ……!」
腕が太くなり、爪が鋭くなり、視界が広がっていく。
仲間のゴブリンが怯えたように俺を見た。
「ギ、ギャ……?」
――俺は強くなっている。
その実感が、胸の奥で膨らんでいった。
* * *
洞窟の奥。
湿った空気の中で、俺は肉を噛みちぎっていた。
「……ギ、ギギ……」
血の味が舌に広がる。
弱い獲物の肉は、すぐに噛み切れる。
だが、その弱さが俺を苛立たせた。
――もっと強いものを喰いたい。
そんな欲求が、いつの間にか胸の奥に巣食っていた。
ある日、俺は偶然、ホブゴブリンの縄張りに迷い込んだ。
本来なら、ゴブリンの俺など一瞬で殺されるはずだった。
「グルルル……ギャアアッ!」
ホブゴブリンが棍棒を振り下ろす。
だが、その瞬間――
俺の身体は勝手に動いていた。
横へ跳び、腕を掴み、そのまま喉元へ噛みついた。
「ガッ……ガアアアッ!?」
ホブゴブリンが驚愕の声を上げる。
俺はそのまま喉を引き裂き、血を浴びながら笑った。
「ギ……ギギギ……!」
――勝てる。
俺は、勝てる。
その日から、俺は“狩る側”になった。
オークの群れに遭遇した時も同じだった。
普通のゴブリンなら逃げる。
だが俺は違った。
「ギャアアアアッ!!」
オークの腹に飛び込み、爪で裂き、牙で噛み砕き、倒れた巨体の上で勝利の咆哮を上げた。
「ギギギギギギ!!」
仲間のゴブリンたちは震え上がった。
俺を見て、怯え、そして――跪いた。
「ギ、ギャ……ギャア……」
食料を差し出し、武器を差し出し、俺の前では頭を垂れる。
その光景が、俺の胸を満たした。
――俺は特別だ。
――俺は選ばれた存在だ。
――俺は、最強だ。
傲慢は、静かに、しかし確実に芽生えた。
俺は仲間を蹴り飛ばし、奪い、支配し、命じた。
「ドケ」
「マテ」
「シタガエ」
言葉にならない命令でも、ゴブリンたちは従った。
弱者は強者に従う。
それがこの世界の理だ。
そして俺は――
その理の頂点に立つ存在だと、疑いもしなかった。
* * *
その日も、俺は狩りに出ていた。
ホブゴブリンを倒し、オークを倒し、血の匂いをまとったまま洞窟へ戻る途中だった。
「……ギギギ……」
強さが身体の隅々まで満ちていた。
魔素が渦巻き、筋肉が膨れ、視界は鮮明で、世界が小さく見えた。
――俺は、誰にも負けない。
そう確信していた。
だから、洞窟の入口に立つ2人の冒険者を見ても、俺は怯えなかった。
むしろ、笑った。
「ギャアアアアアッ!!」
俺は地を蹴り、一直線に飛びかかった。
冒険者の1人が驚いたように目を見開く。
「……速いな。ゴブリンの動きじゃない」
もう1人が剣を構えた。
「だが――遅い」
その言葉の意味を理解したのは、剣が俺の腕を切り落とした後だった。
「ギャアアアアアッ!?」
痛み、そして衝撃。
理解不能。
俺は最強のはずだった。
ホブゴブリンにも、オークにも勝った。
仲間を従え、恐れられ、崇められた。
なのに――
「……ただのゴブリンだな」
冒険者の冷たい声が響く。
次の瞬間、俺の視界は赤く染まり、身体が宙を舞った。
剣が俺の胸を貫いたのだ。
「ギ……ギギ……」
声が出ない。
身体が動かない。
――なぜだ。
――俺は最強なのに。
――俺が……俺が……!
世界が暗転する。
俺の“最強”は、ただの思い込みだった。
だが――
俺の妄執は、死んでも消えなかった。
胸の奥で、黒い炎のように燃え続けていた。
「……シニタクナイ……」
その執念だけが、魔素へと還った俺の意識を繋ぎ止めた。
そして、龍脈の流れへと溶け込んでいった。




