表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
第3層“転” ゴブリン王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/130

第66話 識界《しきかい》

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

放課後、《藤堂心眼流迅術》の道場へ向かった。

最近は少しずつ暖かくなってきて、だいぶ春っぽい気温になってきたが、夜だとまだ寒い。

冬休みは会津ダンジョンと修業でなかなか来られなかったので、約3週間ぶりだ。

畳の匂い、木の柱の温もり――懐かしい空気が胸に広がる。


「お久しぶりっす!」

扉を開けると、道場に響く声と笑いが迎えてくれた。

「おー、久々だな」

「トラ坊から聞いたぞ、いいダンジョン見つけたらしいな」

「神谷君、あとで組み手やろうな」

仲間たちの声が重なり、空気が一気に賑やかになる。

その温かさに、直哉は自然と笑みをこぼした。


「おー、トラ、久しぶり」

道場の隅で柔軟していた武虎が、こちらを見た。

「おぅ、1ヶ月ぶりぐらいか。久々だな。何してたんだ?」


「ふっふっふ、ちょっとばかし修業をね。

実は新しいことを練習中なんだ」

「ほー、新しいこと。どんなんなんだ?」


「あとで見せるよ。ちょっと着替えてくる」


* * *


着替えを終え、畳に足を踏み入れると、心が静かに研ぎ澄まされていく。

「剛も能力特化ももちろん練習してるんだけど、今練習しているのはこれなんだ」

直哉は深く息を吸い、魔素を展開する。


空気がわずかに震え、畳の上に淡い気配が広がる。

30秒後、半径1メートルの範囲が完成した。

視覚では捉えられないが、確かにそこに“何か”がある。

静かな圧力が、空間を満たしていく。


「……こんな感じ。わかる?」


武虎が目を丸くする。

「おぉ、まじかお前! 識界(しきかい)じゃねぇか!!」


「しきかい?」

「えっ、知らずにやったの?」


その時、背後から低い声が響いた。

「驚いたよ。まさか、自力で覚えたのか」


振り返ると、道場主・藤堂柳太郎がゆっくりと近づいてくる。

その眼差しは鋭く、しかしどこか愉快そうだ。


「押忍!!」

直哉は背筋を伸ばし、自然と声が出る。


「あの、藤堂先生、しきかいって……?」

「ちょうどいい。次の段階を教えよう。」


* * *


「神谷君、君がさっきやったのは魔素の展開だろう。

まさか独学とは恐れ入ったが。

実はそれも体系化された技なんだ。

三界(さんかい)という」


直哉は眉をひそめる。

「さんかい……?」


柳太郎はうなずき、冷静な声で続ける。

「うむ、三界(さんかい)だ。

翼界(よくかい)識界(しきかい)無識界(むしきかい)の3つがある。

その中の識界(しきかい)

簡単に言えば、範囲内に概念を加える技術だ。

空間のルールを、自分仕様にする。」


「ルールを……上書き?」


「そうだ。

例えば、魔素を自分の体から飛ばすだけなら識界(しきかい)は不要だ。

だが、離れた対象に直接何らかの効果を及ぼさせる場合――これには識界(しきかい)が必要になる。」


直哉は息を呑む。

「それっす!それがやりたくて、いろいろ試行錯誤してるんす!!」


「ははは、なるほど、神谷君には識界(しきかい)で何かやりたいことがあるんだね」


柳太郎は笑いながらさらに説明する。

識界(しきかい)は基本、自分を中心に円形で発生させる。

だが、慣れてくればその形も自由に変えられる。

前方だけ、後方だけ、対象と自分を結ぶ直線――という具合にな」


* * *


「聞いてばかりでもつまらないだろう。

では、神谷君。もう一度発動してみてくれるかな?」


「押忍!!」

直哉は意識を集中させ、魔素を展開する。

魔素はゆっくり、ゆっくり広がっていく。


「おぉ、1メートルほどか。

展開に時間がかかっているが、素晴らしい、ちゃんとできてる」


「あざっす!!

もっとしゅぱんと早くやりたいんですが、なかなか速度が上がらなくて」

「そればっかりは反復練習あるのみだな。

陣系もだが、型に落とし込み、考えるよりも早く発動できるようになるまで、繰り返すしかない」


「そうなんすね、わかりました!」


「ちなみに身体強化と識界(しきかい)を同時に行なうことはできるか?」

「あ、そういえばやったことがないっす」


促されてやってみるが、まったくできない。

「ぜんぜんできない……。身体強化をすると識界(しきかい)が消えるし、

識界(しきかい)をすると身体強化が消えちゃいます」


識界(しきかい)の難しいところはそこだ。

身体強化で魔素を展開し、識界(しきかい)でも魔素を展開する。

2種類の魔素を同時に展開しなければ、実践では使えない」

「そうっすね……」


「まぁどちらも練習するしかない。

慣れれば呼吸するように発動することができる。

よし、まずは見せよう」


柳太郎は畳の中央に立ち、小さく息を吐く。

次の瞬間――直哉はゾクッとした。


(……入った)

目には見えないが、確かに何かが変わった感覚。

柳太郎の識界(しきかい)だろう。

展開速度は驚異的で、気づいた時には範囲内にいた。


「こういう技は、言葉で教えるのは難しい。

自転車と同じだ。見て、感じて、真似するしかない。」

柳太郎は何度も展開と解除を繰り返し、直哉に感覚を刻み込ませる。


識界(しきかい)は範囲内の概念を上書きするが、相手も識界(しきかい)を使える場合、さらに上書きされる。

だから、一瞬で発動し、気づかれる前に攻撃するのがセオリーだ。」


(……魔素って奥が深い。一つ覚えたらまた覚えなきゃいけないことがどんどん増える!)

直哉はうなずきながら、心の奥で燃えるものを感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ