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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
転移者たちの黄昏

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第125話 さらなる発展

閑話Day。

本編入れると今日は4話更新で、これは最後のその4。


是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

道場を出たのは翌朝だった。


武虎の家で1泊して、陽平と真弓は昼前に帰った。

武虎は道場の稽古があると言って奥に消えた。

直哉だけが玄関先でスマートフォンを見ていた。


田所から着信の履歴が1件入っていた。

昨夜の遅い時間だ。


折り返すと、2コールで繋がった。


「神谷さん、すみません。

昨夜はタイミングが悪かったですね」


「いえ、いま大丈夫です」


「少し報告があります。

よければ4人揃った状態でお聞きいただけますか」


「今日の夜でいいですか。

今はもう解散しちゃってて」


「わかりました。では夜に。

ビデオ通話でお願いします」


* * *


夜、4人が武虎の道場に集まった。


机の上にスマートフォンを立てかけ、田所とビデオ通話を繋ぐ。

画面に田所の顔が映る。

背景は見覚えのある霞が関の執務室だ。


「お時間いただきありがとうございます」


田所が資料に目を落とした。


「まず警護の件からです。

椎名さんたちの体制を、現在の倍以上に引き上げました。

班員の増員と、監視網の拡充を行っています。

今夜から新体制での警護が始まっています」


「椎名さんたちも回復しましたか」

陽平が聞いた。


「全員、傷は癒えています。

今回の件で各自、気合が入っているようです。

ご心配をおかけしました」


直哉は画面の田所を見た。


「海外組織の動きは、どうですか?」


「現状、判断しかねる部分が多いです。

先日のハワードという人物の所属組織の動きを追ってはいますが、足取りがつかめていません。

今のところ、次の接触がいつ来るかも予測できていません」


田所が眼鏡を直した。


「それで——少し、お願いがあります」


直哉が頷く。


「しばらくの間、異世界を中心に活動していただけないでしょうか」


しばらく間があった。


「理由を聞いていいですか」

直哉が言った。


「状況が見えてくるまで、神谷さんには地球で動いている時間を減らしてほしいのです。

先日の件で、相手の組織が直接行動を起こしてきたことが確認できました。

地球にいる時間が長いほど、接触の機会を与えることになります。

逆に、異世界にいる間は相手が手を出せません」


「俺がいなくても、ヤスや家族には手が届きますよね」


「その通りです。

安田さんについては、引き続き椎名さんたちが対応します。

ご家族にも、目立たない形で警護をつけています。

そちらはこちらで守ります。

神谷さん自身の動きを守るために、当面は向こうを拠点にしていただきたいのです」


直哉は武虎たちを見た。

武虎が肩をすくめた。

真弓は無言で頷く。

陽平が「俺は賛成です」と言った。


「わかりました」

直哉は田所に向き直った。

「向こうにいる間も、帰還の日程が決まったら事前に連絡します」


「ありがとうございます。

助かります」


田所がもう一枚、資料をめくった。


「もう一つ、お願いがあります。

これは異世界での話です」


「どんな話ですか?」


「転移の現象について、我々も情報収集を進めています。

そちらは別の担当が動いていて、神谷さんには関係のない話ですが——」


田所が少し間を置いた。


「異世界の方で、地球から転移してきた人間がいる可能性があります」


武虎が「地球から?」と声を上げた。


「はい。自然転移門は双方向に働きます。

アル・テラスから地球に来る者がいるなら、その逆もあり得る。

我々の調査では、そういった事例が発生しているかもしれないという情報を得ています」


「それで、俺たちに何をしてほしいんですか?」


「異世界で活動している中で、見かけることがあれば保護してほしいのです。

地球から来た人間が向こうで孤立していれば、勝手も分からない、どこへ行けばいいかもわからない状況のはずです」


「地球から来た人間かどうかって、判断難しくないですか?」


「格好、持ち物、そして言動で、ある程度わかると思います。

現地の文化に慣れていない。何かに強く戸惑っている。そういった人間です」

田所が付け加えた。


「見つけたらどうすれば?」


「まず声をかけて、安全な場所に保護してください。

そこから田所に連絡してもらえれば、こちらで対応を考えます。

転移について向こうに説明する際は、自然転移門によるトラブルで飛んできた、という形で話を進めてください。

こちらが意図的に往来しているという事実は、当面は伏せてください」


「なるほど。

わかりました」


「ありがとうございます。

発見できない可能性も十分にありますが、もし出会ったらということで、お願いします」


田所が深く頭を下げた。

「無理を言っていると承知しています。

引き続きよろしくお願いします」


「わかりました」


通話が切れた。


* * *


翌日、4人はアル・テラスに転移した。


まずラグナのJPギルドに顔を出し、田所の現地班と状況を確認する。

電話網の拡張に向けて、次の交渉先の準備が進んでいた。


田所の言っていた通り、当面は向こうに軸足を置くつもりだった。

向こうにいる間は、地球の騒ぎから距離が取れる。

それがありがたいとも思いながら、少しだけ割り切れない感覚もあった。


「なんか逃げてる、という気がしないでもない……」


『逃げているわけではないと思います。

田所様の判断は合理的です。

直哉が地球にいない間に状況が動けば、こちらの方が動きやすくもなります』

「まあ、そうだよな」


ラグナを拠点に、ダルヴァへの護衛依頼が入っていた。

通信網の次の拠点候補として、田所が事前に話を通していた街だ。

翌日、馬車で出発することになった。


* * *


護衛任務は2日かかった。


ダルヴァで用件を済ませ、翌朝早くにラグナへ向けて折り返した。

夜明けから間もない時間で、街道には人の姿がほとんどなかった。

空はまだ薄明るく、遠くの草原に朝霧がうっすらとかかっていた。


4人が乗り込んだ幌馬車の荷台で、武虎は腕を組んで目を閉じていた。

陽平は窓の外をぼんやり眺めていた。

真弓は何も言わずに揺れに任せていた。


直哉も外を眺めていた。

帰り道の街道に差しかかった頃、馬車の窓から街道の脇が見えた。


人が2人、立っていた。


地面に座り込んでいるのではなく、立っている。

だが、どこへも向かおうとしていない。

2人とも、ぼんやりと街道を眺めていた。


服装が引っかかった。


現地の探索者でも、商人でも、農夫でもない。

素材の質感が、この世界のものではなかった。

早朝の街道で、行き先もなく突っ立っている。


馬車はそのまま通り過ぎた。


直哉は振り返って2人の後ろ姿を見た。

若い男女だ。

2人で何かを話しているが、声は聞こえない。

途方に暮れているように見えた。


「イチカ」


(『確認しました。

魔素の気配がほとんどありません。

この世界の一般人か、あるいは地球から来て間もない人間の可能性があります。

服の素材が地球産に近い反応を示しています』)


(田所さんの話、か)


馬車は先へ進んでいた。


直哉は視線を前に戻した。

(記録しておいてくれ)

(『了解しました』)


武虎がうっすら目を開けた。

「何か見たか?」

「ちょっとね」


直哉は短く答えた。

ラグナに戻ってから、田所に連絡しようと思った。


馬車は街道を進み続けた。

2人の姿は、もう見えなくなっていた。

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