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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
交錯する思惑

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第117話 怪しい外国人

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

地球と異世界を行き来していると、コンビニの便利さや食事のおいしさに感動を覚えることが多くなった。


昨日まで異世界の石畳を歩いていたのに、今日はコンビニの前に立っている。

同じ自分が、どちらにも存在できるということが、未だに慣れない。


「ナオヤ氏、お疲れですかな」

ヤスが缶コーヒーを差し出しながら言った。


「ああ、ちょっとね。

毎月20から30人の転移なら大したことないと思ってたけど、結構気を使うもんだな」

「最近は落ち着いてきましたが、最初の頃はみんな興奮していましたしね。

大人があそこまで興奮しているのは、始めてみたかもしれないです」


「そういうヤスも大興奮だったじゃんか」

「それは言わないでくだされ……」


「そういえば、そもそも4層に行く時に転移を覚えたと言ってましたよね。

4層には行っているのですか?」


「全然」

直哉は缶コーヒーを受け取った。

「異世界メインで動いてるから、地球側のダンジョンは後回しになってる」


「そういえば、異世界でもレベルアップとかはするのですか?」

「おう、するする。

ってか、この前、異世界でレベルアップしたんだけど、いつもより魔素の上昇率がよかったんだよね。

向こうの魔素が濃いのが原因なのかな」


ヤスが「なるほど、それは興味深いですな」と言いながら、並んで歩き出した。


午後の住宅街。

人通りは少ない。空は晴れている。


直哉はコーヒーを一口飲んだ。

久しぶりに、何もしなくていい時間だった。


* * *


10分ほど歩いたところで、ヤスが立ち止まった。

「そういえば拙者、新しい設計を固めたのです」


「転移門?」

「左様です。

まだ試作段階ですが、魔石を使った空間固定の仕組みが見えてきました。

転移の仕組みをある程度再現できれば、ナオヤ氏以外でも使えるようになる可能性があります」


「マジか!?」

「ええ、マジです。

まだまだ時間はかかりそうですが、とっかかりは見えてきましたぞ」


「おー、そうなのか。

田所さんにも話してみるよ」

直哉はスマホにメモした。

「転移の研究は政府でも進めてるらしいんだけど、全然進んでないんだってな。

ヤスの方が速いかもしれない」


「ふふふ、こう見えて拙者、空間魔道具の第一人者ですからね」

「自分で言うな」


2人で笑いながら、また歩き出した。


* * *


公園のベンチで話していたところで、声をかけられた。

「スミマセン、チョットイイデスか?」


振り返ると、30代くらいの男性が立っていた。

背が高く、アジア系の顔立ちだ。


「アナタ、ダンジョン探索の人?

腕にタグ、ツイてる」


直哉は自分の腕を確認した。

冒険者タグを手首につけたままだった。

戻ってきたばかりで、外すのを忘れていた。

「そうですけど」


「私もダンジョン探索シテイル。

第1層と第2層、イッテル。

デモ、ムツカシイね」


男性が笑いながら続けた。

「情報交換、オネガイします」


悪い人間には見えない。

直哉は少し考えてから「まあ、基本的なことなら」と言った。


男性がベンチの端に座った。

ヤスが直哉の隣に残ったまま、男性を見ている。


「どちらから来たんですか」

直哉が聞いた。


「シンガポールよ。

日本のダンジョン、スバラシイ、聞イテる。

ダカラ、来たヨ」

「そうですか」


「ワタシ、2層のトカゲ、アレ、ニガテね。

アナタ、何層マデ、イッテる?」


「今は3層あたりですね」

「3層。オウ、グレートですネ。

マホウ、使エルデスか?」

「少しだけど」


「ドンナのトクイ?」

「それは秘密です。

仲間にも言うなって口酸っぱく言われているので」


男性が笑った。

「ソウデスね、タシカニ、ノウリョク、他言シナイホウガイイね。

失言よ、ワタシ」


そのあとは他愛もない話が続いた。

日本と東南アジアのダンジョンの違い、モンスターの種類、装備の話。

男性は物知りで、話し方も丁寧だ。


「東南アジアのダンジョンと日本のダンジョンって、構造が違うんですか」

直哉が聞いた。


「カナリ違ウね。

東南アジアのダンジョン、1層がトテモ広イね。

日本は縦ガ深いデスネ。

アト、日本のモンスター、スバヤイね。

トテモ苦労スルよ」

「それは確かに」


「アナタ、ドンナ武器使ッテル?」

「バットです」


男性が少し驚いた顔をした。

「バット……ベースボール?」

「そうです」


「ワオ、ソレデ3層イッタか?」

「魔石で強化してるんで、普通のバットよりは丈夫です」


男性が笑った。

「スゴイね。バットで戦ウ人、ハジメて聞イタよ」


世間話のように見えたが、男性の質問の向かう先が、少しずつ変わってきていた。

「アナタ、ダンジョン、モット深くイクですか?」

「まあ、いずれは、ですかね」


「デモ、深くイク、ジカンかかる。

日本ニハ、ワープデキル人イル、聞イタ。

アナタ、シッテマスか?」


直哉はわずかに止まった。

「なんでワープを聞くんですか」


「ワープデキル、とてもベンリね。

ワタシもワープしたいヨ。

モシ、シリアイに居タラ、紹介ホシイね」

「あー、なるほど……。

ちょっと俺はそういう人知らないですね」


「ソデスカ、ザンネンね」

男性が笑ったが、その目が笑っていないことに、直哉は気づいた。


ヤスは直哉の隣で黙っていた。

しかしその目は、男性から離れていなかった。


15分ほど話して、男性が「アリガトウ」と立ち上がった。

名刺を一枚渡してきた。


「マタ、オ話シ、シタイネ」

男性が歩いていく。


直哉は名刺を見た。

名前と、外国語の肩書きだけが書いてある。


「イチカ、今の人、何か感じた?」

『意図的に魔素を抑えていましたが、通常の人間より量が多いです。

それと——転移についての質問が、誘導的でした。

世間話のように見せかけながら、目的の情報へ向かっていました』


* * *


その後、ヤスとの帰り道でヤスが言った。

「ナオヤ氏、あの人物、少し気になりませんでしたか?」

「まあ、な……」


「世間話の流れとしては、少し不自然です。

層数と特殊能力は、探索者の実力を測る指標です。

それを自然に聞き出そうとしていたように見えました」


直哉は少し考えた。

「あと、ちょっと顔というか雰囲気も、なんか違ったよな」


「ええ」

ヤスが続けた。

「タグを目当てに話しかけたようでしたが、ナオヤ氏のタグは拙者の体に隠れて見えなかったはずです」


直哉は止まった。

確かに。

彼と自分の間にはヤスがいて、タグなんか見えなかったはずだ。


「勿論、別の場所で見かけた可能性はありますが、我々は結構な時間、あの場所で話していました。

たまたま見つけた、というにはちょっと違和感がありますぞ」


直哉はもう一度名刺を見た。

違和感は、そこだけではなかった気がした。


あの男は、直哉に会いに来たのではないか。

「武虎たちにも話した方がいいな」

「ですな。ナオヤ氏、田所氏にも」


直哉はスマートフォンを取り出した。

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