78.SNS特殊詐欺未遂事件
チエのスマホが鳴動した。珍しい。
プライベートの用事か?
チエは、席を外して廊下に出た。
========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。
白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
弓矢哲夫・・・京都府警捜査四課刑事。警部。ひげ面で有名。
中町巡査・・・茂原の交代要員だったが、そのまま勤務している巡査。
楠田巡査・・・チエの相棒。
大前田警視正・・・京都府警本部長。白鳥の父。
船越紅葉・・・副署長の娘。巡査。結婚していたが、離婚して復職。
貴志塔子・・・島代子がプログラマー時代、組んでいた相棒。ネットワークシステムは、2人の合作だ。
権堂玲子・・・塔子の従妹。塔子と喫茶店を共同経営していたが、塔子が芸者ネットワークに参加したので、オーナーになった。
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午後1時。東山署。会議室。
チエのスマホが鳴動した。珍しい。
プライベートの用事か?
チエは、席を外して廊下に出た。
会議室外の廊下。
「貴志です。お仕事中にゴメン。実は、玲子ちゃんのお店のお馴染みさんやけど、どうも詐欺に逢いそうな感じで。」
「今、どこです?」
「玲子ちゃんの店。」
チエはドアを開け、「ちゃん、ゴメン、後で話す。楠田!!」と叫んだ。
2人は、慌てて飛びだした。
「お嬢は、今日も元気やな。」と言って、船越がドアを締めた。
暴れん坊小町で知られる神代チエは、実は強烈なファザコンである。
このことは、もう『公然の秘密』になっている。
幼少期に、テレビで観た場面が強烈だったのか、神代が幾ら言っても、「ちゃん」をなかなか止めない。通常は言わないが、緊急時は、約束を忘れる。
どの道、幼馴染みの白鳥の嫁になるので、周囲は大目に見ている。
午後2時。山科区。京都東IC近くの喫茶店「おいでやす おこしやす」。
チエと楠田が駆けつけると、塔子と玲子と、高齢者の婦人がボックス席で待っていた。
どうやら、被害者城野ゆきは、スマホを使い始めで、つい投資アプリをインストールしてしまった。
そして、知り合った、ユーザー仲間の勧めで購入した『先物』で、損をし、得をしを繰り返していた。
それが、やつらの手口だ。
遅れてやって来た茂原と中町に、チエは手配させた。
午後3時。待ち合わせ場所の京都永原銀行の京都IC店のATMで城野に声をかける男がいた。
「済みませんねえ。どうしても急いで用意しなくてはいけないので。」
「その急ぎの用、聞かせて貰いましょうか?」
男は危険を感じて、ATMからダッシュして逃げた。
チエは、容赦なくラリアートをかませた。
午後4時。東山署。取り調べ室。
紅葉が、慌てて飛び出し、事務コーナーの隅で府警に連絡をした。
午後5時。
激しい嗚咽が止み、チエが出てきて。茂原と中町はオムツを持って、中に入った。
弓矢と白鳥がやってきた。
「今、お着替えしてるとこ。弓矢さん、被疑者は反社と繋がってたわ。後、頼むね。」
「了解。」と言いながら、弓矢は小雪が差し出した、たこ焼きを爪楊枝で口に入れた。
「急に大金がいるって言い出して、困って玲子さんに相談したらしいの。」
「警視。兵庫県でも1200万円だまし取られた事件があったばかりですわ。未然で良かった。」
ATMで捕まった被疑者と仲間が、茂原に促され出てきた。
「それでは・・・。」と、弓矢と白鳥は、2人を連行した。
小雪はスマホをチエに差し出した。
電話の向こうの塔子、代子、稲子が代わる代わる、チエに礼を言った。
「京都府警でも、『高齢者指導教室』せんとな。警察に来て、って言うから皆嫌がるねん。ケータイショップで教えたらええんや。お義父さんに言うたらな、考えとく、やて。考えるだけやったら、誰でも出来ますって言ったった。」
「チエちゃん、恐い嫁やな。」
午後7時。神代家。
「それは、小雪ちゃんが正しい。恐い嫁やで。でも、大前田は立場上曖昧に言ったけど、指導員派遣するかって言ってた。」
「指導員?」「お前や。」
「あちゃあ。」
「言い出しっぺやんか。まあ、あんまりお前も時間取れる訳でもないから、指導員の指導員やな。」
「ちゃん、今日は浦島太郎な。」
「はいはい。」と言いながら、神代は風呂の用意をしに行った。
―完―




