76.地上げ
「何やて?待っとき。」
「ちゃん。真ちゃんとこにトラック突っ込んだ。」
チエは、父親でもある署長に一言言うと、跳びだした。
楠田が続く。船越が呟いた。「トラックって・・・。」
========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。
白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
弓矢哲夫・・・京都府警捜査四課刑事。警部。ひげ面で有名。
中町巡査・・・茂原の交代要員だったが、そのまま勤務している巡査。
楠田巡査・・・チエの相棒。
大前田警視正・・・京都府警本部長。白鳥の父。
船越紅葉・・・副署長の娘。巡査。結婚していたが、離婚して復職。
遊佐圭祐・・・チエの幼なじみ。大学同級生。CATV『きょうとのテレビ』課長。
藤原真吉・・・チエの幼なじみ。チエは弟分のように思っている。自宅を改造して、コンビニのフランチャイズ店を経営している。
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午後1時。東山署。署長室。
「何やて?待っとき。」
「ちゃん。真ちゃんとこにトラック突っ込んだ。」
チエは、父親でもある署長に一言言うと、跳びだした。
楠田が続く。船越が呟いた。「トラックって・・・。」
午後1時半。神代家隣のコンビニ『フライ&フライ』。
チエが到着すると、所轄の巡査が敬礼した。
店内で真吉が泣いている。
「しっかりし。店長やろ、真ちゃん。」
従業員が怯えている。
茂原と中町が、従業員に事情聴取している。
鑑識が到着した。
楠田が、近所の目撃者を連れて来た。
「先輩。通報してくれた前川さんの奥さんです。ナンバーを見てくれたので、さっき茂原さんが手配したそうです。」と、楠田が言った。
「一旦、そこで停車してから猛ダッシュしたんです。」
午後3時。東山署。取り調べ室。
弓矢が入って来て、チエに耳打ちして帰った。
「なあんや。『一見後世会』の『さんした』かあ。ブレーキとアクセルの踏み間違いって、さっき言うたよな。再生!!」
書記席の紅葉がICレコーダーで録音を再生した。
『そやから言うてますやん。クルマで昼寝して寝坊したから、慌てて発進したら、ブレーキとアクセル踏み間違いしたんですわ。ようあることですやん。コンビニやから本社xで何とかしてくれるんとちゃいますん?』
「席、外してええで。オムツ頼むわ。」
午後4時。取り調べ室外。
「久しぶりやナア。悪い奴の『断末魔』。」と小雪が言うと、遊佐と白鳥が苦笑した。
「新年の番組、差し替えるって、チエちゃんに言っといて。」と言い、遊佐はたこ焼きを2個頬張って出て行った。
「コンビニはフランチャイズには厳しいからね。真吉君、解約料払って、商売替えするらしいよ、小雪ちゃん。」
「けったいな世の中やなあ。暴力団がコンビニ遅うなんて。」と、小雪が言い、「四課が動いたから、『地上げ』はもう出来ないでしょう。」と、茂原が言った。
断末魔の声は止んだ。
チエが被疑者を連れて出てきた。
茂原は、オムツを持って、取り調べ室に入って行った。
チエが、どんな取り調べをするのか、実は小雪も白鳥も知らない。
だが、怒らせると恐いことは、知っている人は知っている。
反社でさえ、名前を聞くだけで降参する場合がある。
大前田本部長と弓矢がやってきた。
「はい、お義父さん。」
「余罪が一杯あるそうや。心配せんでええ。本部の取り調べは揺るいで。」と大前田は被疑者に向かってニッコリ笑った。
午後8時。神代家。
「道が出来るから、いうのはガセやったらしい。真ちゃんも大災難やな。本社も場合が場合やし、遊佐君のテレビで取り上げたから、契約解除の料金、間引きしてくれたんやて。杏月バーは、他の店から宅配してくれるらしい。助かるな。」
「今日は、金太郎、な。」
パンイチのチエは、今日も父親と入浴し、『読み聞かせ』で入眠する。
神代は、嫁に行くまでの我慢だと思っている。
―完―




