最終話 魂底の願い 2
粗悪品というゴミ共がひとつ壊されたからって焦りだしたのかのたのたと動いていたのを止めて、各々、一斉に飛び掛かってくる、それはもう多くの粗悪品が此方へと飛び掛かってきて気持ち悪い事この上なし!
正面からも!左右からも!後ろからも!上からも!!粗悪品だらけのカーニバルが始まっちゃったね!!
楽譜を見て歌を歌ってもらおうと心の中の指揮棒を奮い立たせるように背筋を伸ばすと
「数が多いね」
ひと昔なら慌てているであろう局面に、成長した彼女の冷静な一言に
「数だけはね」
此方も同じように…
この場にメイドちゃんが居たら震えあがってしまいかねなほどの凍り付くような殺気を込め「だから何?って、こと!!」指揮棒を振り下ろす。
さぁ!歌ってください!歴々の聖女様!
歌って!愛する人を繋ぎ止めたいと願った悲しい歌を…
指揮棒に合わせて多くの聖女達が一斉に歌ってくれる
その歌声は団長にも届いているのか小さな拍手で出迎えてくれた
最も近い人型の足元から鎖が全身へと絡みつき下半身が鎖で覆われると、そこからは念動力の力によって、力任せに持ち上げ鎖ごと他の人型にぶつけ、ぶつけた人型を更に鎖を巻きつけ他の人型にぶつける度に他の人型を巻き込む様に鎖が絡みついていき動けなくなる。
動けなくなった複数の人型を産みだしては同じ作業を何度も繰り返し行っていく。
周囲には人型と鎖で出来た塊が増えていき鎖から逃れようと粗末な人型が藻掻いているのか鎖がこすれる不快な音が周囲から溢れ出てくる
「じゃらじゃらがしゃがしゃ、うっとおしいな」
不快な音のせいでコンサートが台無しっと呟くと隣に居た団長が「ぇぇ…」呆れた声で相槌を打ってくる。
マナーの悪い観客は無視して~次の歌、楽譜をセットして指揮棒を掲げる。
「歌って…」
指揮棒をおろし聖歌隊に歌ってもらう…
僅かな食事ではなく多くの、皆で分け合えるほどのいっぱいのお腹がこれ以上ない程に膨れ上がるほどの食事を願った歌を…
歌によって鎖が膨らんでいき鎖に絡まれている人型が変な音を出しながら圧縮されていき
「higya!?」「kyhi!!」「agiiii!!」
よくわからないコンサートの感想と金属が潰れひしゃげて曲がるような音が周囲から同時に響き渡ると周囲が一瞬だけ静寂に包まれ…なかった。
あの惨劇を見ても愚直に向かってくる粗悪品たちは潰されるのを望んでいるのか愚直に真っすぐ上半身を揺らしながら走ってくるが中にはある程度、粗悪品ではないモノ達もいるのか、木々をよじ登る何処から三角飛びの要領で木々を蹴り空中から襲撃しようとしてくる。
「よいしょっと」
だからといってなんだという話である、空中にいる時点でお前たちは死に体、どう足掻いても避けることが出来なくなってしまうという絶望的な選択肢を選んでいるのだとどうして気が付かないのだろうか…
私の言葉を肯定するかのように団長が槍を投げると空中に飛んだ馬鹿は粉々に吹き飛ばされ、体のパーツを周囲にばら撒いて地面に叩きつけられている。
勿論、降り注ぐ体液とかは私の術式で当たらないように守ってるのでご安心を。
敵の数が半分近く減ったかな?念のために確認しておきましょう、パーティリーダーとしてMP管理は大事だからね?なんつってね。
「魔力はどう?」「何も問題ないよ溢れてくるくらい」
【私達においても何も問題ありませんよ、末席の聖女、繋ぎ紡がれた祈りが貴女を通して私達にも…この大地の全ての方が込めてくれた祈りが…届いております】
恍惚とした声だけどさ…私利私欲に満ちた祈りじゃないの?っていう無粋な言葉を飲み込む
指揮棒を掲げ、色んな歌を歌ってもらい続ける。
私の時とは違って歌の…本当の意味なのか、願いからなのか、私の時よりも発動する術が気持ちよさそうに産まれている気がする。
車椅子に座りながら悠々自適に歌を奏で魔力を好き放題に消費する。
ここが…ここ、こそが!自分のテリトリーだ!!と、主張するかの如く自然体で迫りくる敵を殲滅し続けていく
一つの人型が吹き飛ぶと
「人型ってさ、こんなにも弱かったっけ?よっと」
疑問をぶつけてきた人は、手に戻ってきた槍を上半身を捻ることなく肘を伸ばすだけの力で投げている。
たった、それだけの簡易的な動作だというのに飛んでいく槍の速さは私ですら追うのが難しい程に速い
「そう感じるほどにさ、強くなりすぎちゃったかもよ?なんつってね、にひひ」
他愛のない緊張感の抜けた会話をしながらも、視線は外さない。
迫りくる人型の四肢を地面から土を隆起させ包み込み、動け無くしてから先端を尖らせドリルと同じ形へと形成してからねじ込む様に土のスパイクで胴体の真ん中に大きな穴を空けると
「うわー、弄ばずに一思いに壊してあげなよ」
胴体を貫かれたというのに睨みつけてくる愚かな人型の頭も貫き動けなくさせる。
「べっつにー、遊んでるわけじゃないよ?…恨みを晴らしてあげてるだけ」
そう、幾つもの歌を歌ってわかった…彼女達もまた苦しかったのだと。
一つの歌を歌い終わるころには、また一人、また一人と、満足した顔で舞台を降りていく
この歌もまた、この大地に縛られていた悲しい歌
呪いによって繋がれていた聖女達の歌を…そう、私は解放してあげているだけ…
たぶん、この先に…到着するころには誰も…
「それにしても、後どれだけいると思う?今もさ減らないし減っている様な増えている様な…凄い数だけど」
「無様に愚直に真っすぐに突っ込んでくるしか能が無い辺り、時間稼ぎって感じもしないから、単純にあるだけ全部じゃない?壊しきるまでじゃないの?」
壊した粗悪品は邪魔だから木々の奥へと放り投げているけど、そろそろ粗悪品だけで壁ができちゃいそう。
「そっかぁ…姫様は何も思わないの?」
「思う?…何も、感じない、団長もでしょ?」
生き物を殺している様な罪悪感、そんなものは何一つ感じない。
無機物を壊しているだけって感じしか…歴々の聖女様達には申し訳ないけれど、薄情な私だとね、その程度しか感じない。
「あれだね…壊しても何も感じない」
っと?あれ?団長は違いのかと思ってた、私だけかと思ってたら?以外、団長も何も感じていないんだ。
「安心して、さっきも言ったけど私も同じだね、目の前に居るのは生き物じゃないから何も感じない…あいつの魂はもうこの星にいない、断言できる、あいつの器を壊したけれど魂を滅ぼせれた気がしない」
何故かわからないけれど、私達を苦しめ続けてきた死霊使いを何処にも感じない。
粗悪品の中に潜んでいてもおかしくないっと一応、警戒はしていたけれど、何処にも感じない。
こんなにも器が用意されているのだったら魂を加工したり移動したりとそういった技術を持ち合わせているのだから、粗悪品にでも移動させればいいのに、そういった雰囲気が一切ない。
だからかな?目の前にいる人型を潰しても何も感じない。
ただ、目の前にある廃棄物を捨てるために潰さないといけないっていう、処理をしているだけ、そんな事務的な感覚しかしない。
粗悪品に紛れることなくあいつの楽しみを奪った私達を襲いに来ないってのが腑に落ちないけれど、あいつにはあいつの何か理由があるのかもしれない。
もしくは、本当にあいつは死んだのかもしれない、もしくは…他の星に旅立ったのかもしれない。
本当の所はどういう状況なのか、わかんないけど…一つだけわかっているのは、あいつが何かの弾みで動けなくなる、または、消えた後の事を考えて、これらを起動させて私達に襲い掛かるようにインプットしておいたんだろうね。
その理由が時間稼ぎなのか、腹いせなのか、八つ当たりなのか、読み切れないのが癪に障る。
深く考えすぎると疲れるだけなので思考を止め、単純作業に戻る。
早く終わんないかな…歴々の聖女様達も憂さ晴らしを終えて満足したのか、歌に感情が込められていないんですけど?
そんな単純作業が続くと単調的な行動に欠伸が出てしまいそうになってしまう。
「ふと思ったんだけどさ…こいつらって機械みたいなもの?」
槍を投げつけながら団長からの質問に驚いてしまう、彼女ならではのワードに
「機械?」
「うん、機械」
確認するとしっかりと機械と言ってる、この星には無い言葉。
「目の前のゴミ共が機械…ん~あ~、そーだね、自動操縦ってこと?それともまだどこかに敵が潜んでいて遠隔動作?ラジコンだっけ?ってことを言いたいの?」
彼女が欲しい答えが何なのか、今一つ要領を得ないので何が知りたいのか質問を投げ返すと
「そっか!魂が無いから全自動で動いてる、ってわけじゃない、リモコンで操作されてるってこともあるってことか~…誰が操作してるんだろう?」
質問しておいて特に何も考えていないこの感じ…地下で研究をしていたときみたい、研究に行き詰まったり、次の工程まで時間がある時に他愛も無い何も先を考えていないふと思った事を口に出したって感じ…団長も飽きてきたのかな?
「確かにねーこいつら自動で動いてる可能性の方が高い気がするけど、何処かで誰かが遠隔操作しているって可能性も捨てきれないよね。その考えに至るってことはさ、死の大地にいる獣達、あいつ等も、もしかしたら、あいつが操作してたって可能性に行きついたって事?」
死の大地の獣達は人の魂が内包されていた、獣へと堕とされた人達が素直に言う事なんて全員が聞くわけがない。
それを可能としたのが死霊使いが持つ魔道具だったんじゃないかなって私は思ってた。
あれがあるからこそ、死の大地にだけ生息する白き獣…人の魂を内包され人を憎み続け、人を見ると襲わずにいられないように洗脳、もしくは、魂の加工をなされ、あの魔道具で縛られていたっていうのが、私の中で出た結論、かな?




