表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
第一〇章 王宮書記官の旅5(真歴一四九八年二月)
86/87

12.追跡

「なあ、今の聞いてたか?」

 ジャニィは真後ろの御者台に座る王子に話しかけた。

「うん、薬草を取ってきてくれたって事だよね?」

「ああ、シンクフォイルなら、村人の手助けとかやりそうだよな」

 ジャニィは村の中へ戻っていく老婆の後ろ姿を目で追っていた。

「でもなぁ、見た目の特徴がシンクフォイルじゃないんだよな?」

「そうだね。どういうことだろう? 別の旅人なのかな?」

 ジャニィは、今しがた老婆に見せていた、シンクフォイルの顔を描いたスケッチに目を落としていた。

「分からん? でも、街道を北に進んで最初の村はここだよな?」

「そうだね。ジャニィが道を間違えてなければだけど」

 王子が御者台からジャニィを見下ろしながら、チクりと皮肉のようなことを言った。

「間違わないだろ? ほとんど一本道だぜ」

 ジャニィは手帳を閉じると、客車の扉を開けた。

「よし、じゃあ、もう少し先に行ってみるか?」

 ジャニィは御者席の王子に向かって言った。

「えー、まだ僕が走らせるの? 寒いんだけど……」

 王子は、ジャニィの言葉に頬を膨らませた。

「次の村に着いたら、交代してやるから、それを着て我慢しろよ」

 ジャニィは、客車に置いてあったフード付き外套を王子に渡してやった。


 ――


 ジャニィは馬車の中で、地図を広げていた。

「おい、そこを右に曲がれ!」

 ジャニィは大声で客車の外で手綱を握る王子に向けて言った。

「ここを、右でさぁ、へい」

「うん? なんだ? その喋り方は?」

 ジャニィは顔を上げた。

「南ヴォーアムの訛りだよ。御者っぽくない?」

 王子は笑いながら言うと、馬車を右折させた。

「そうなのか? 俺はヴォーアム出身じゃないから分からないが……、まあ、確かに御者っぽいな」

「でしょ!」

 王子は嬉しそうに言うと、振り返り、背後にある客車の窓を覗き込んだ。

「うわ! お前! 危ないだろ! ちゃんと前を見とけよ!」

 そんな王子をジャニィが注意すると、王子はおどけたまま御者を続けた。

「へい、ちゃんと見てまさぁ。スピードを上げるんでお気をつけなしぃ」


 ジャニィの馬車はガタゴト揺れる。


 こうして、ジャニィと王子のシンクフォイル追跡の旅が始まった。

 しかし、ジャニィ達には、この時のシンクフォイルの姿が、王子そのものであることを知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ