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Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
第11章 年輪の仮面 真暦1498年2月
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10.イソダムの所業

 真夜中になり、夜気を纏う荒れ地の風が一層冷たく感じられた。

 マスケスはトボトボと邸宅の別邸に続く道を歩いていた。

 そして、小さな幻導力灯で手元の本を照らしながら、器用にそのページを捲っていた。


 オークの司祭の家に生まれたマスケスは、小さな頃からこの書物を愛読していた。

 両親にお願いして買ってもらった記憶もないため、もともと家に置いてあった書物なのだろう。

 最初は単なる読み物として、多彩な幻導力の活用方法に胸を躍らせていたが、ある時からは、それが、マスケスの人生をかけての研究対象となっていた。


 『イソダムの所業』それは、ボアム半島では広く知られる歴史書であり、また研究日誌でもあった。

 大幻導師イソダムと、その弟子たちにより書き記された膨大な記録が、一冊の書物としてまとめ上げられている。


 それは、些末な幻導力の実験や、もしくは機械的な仕組みと幻導力を組み合わせた装置の開発日誌、さらには幻導力と時間との関連、はたまた、幻導力と人の死に対する考察など、その内容は多岐にわたっていた。

 そして、この書物の中で一番有名なエピソードは

 誰もが知る『オーロラのクレバス』である。

 しかし、マスケスが注目したのは、それらの記載ではなく、イソダムの弟子の一人が描いたとされる一枚のスケッチであった。


 スケッチは、どこかの室内バルコニーのような場所で、一人の男が盾を構えた姿で立ち、そして、その男の盾を中心に、幾重にも重なる半円が描かれていた。

 その半円の中には老齢の貴族と思われる人物が横たわり、それを抱きかかえる形でベレー帽の女がしゃがみ込んでいる。

 そして、このベレー帽の女は、右手にレインボーガンと思しきものを握っていた。

 さらに、そのスケッチの注釈には、『市庁舎の爆発』と書かれていた。


「やはり、これは現在のオボステムの市庁舎ですな。そして、この男が持っているもの……間違いなく、シュラバリー家に伝わる『白霓の盾』ですな」


 マスケスは、シンクフォイルの変貌ぶりから、この『イソダムの所業』に書かれている場面が、現在の、いや、もしくは、これから先の未来で起こるシンクフォイルの姿だと確信していた。

 なぜなら、この『白霓の盾』はシュラバリーの呪い同様、シュラバリー家の人間にしか扱えないものであったからである。

 これは、王宮に居た頃のシンクフォイルから何度か聞かされていたし、現王エレファンからも似たような話を聞いたことがあった。

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