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Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
第一〇章 王宮書記官の旅5(真歴一四九八年二月)
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11.王宮

 翌朝、ジャニィが燻る暖炉の炭を足で踏み潰していると、王子がフラフラと起きてきた。

「おはよう。早いね、ジャニィ」

「ああ、出発するぞ! お前も早く準備をしろよ」

「えっ! 出発って、王宮に戻るの?」

 王子はテーブルの前にある椅子に座りながら言った。

「そうだな。今から出れば夜には着くだろう」

 ジャニィは暖炉の火を消し終わると、テーブルの上に置いてあったパンを王子の前に差し出した。

 王子は、そのパンを取ると、小さくちぎり口に含んだ。

「あのさ……、ジャニィ」

「うん? なんだ? 飲み込んでから言えよ」

 王子は何事かを考えているのか、えらくゆっくりとパンを飲み込んだ。

「ジャニィ……、ちょっと言いにくいんだけどさ」

 王子は、またそこでパンをちぎった。

「なんだよ?」

 ジャニィは王子の言葉を待った。

「王宮に戻るのは止めにしない?」

「はっ! なんでだよ? 祭事長に話を聞くんだろ?」

 ジャニィは王子の提案に面食らった。

「そうなんだけどね。昨日は言い忘れてたんだけど……、『真王の証』の旅ってさ、言葉を得るまで帰っちゃ駄目なんだよね」

 王子はそこまで言うと、手に持っていたパンをゴニョゴニョと丸め始めた。

「なんだよそれ! しきたりなのか?」

「うん、だから僕は王宮には行けないんだよね……」

 王子は申し訳なさそうにモジモジしている。


 ジャニィは少し考えてから言った。

「そうか、じゃあ、俺一人で行くよ」

「えー! それは嫌だよ!」

「はっ? お前は行けないんだろ? だったら、俺一人で行くしかないだろうが! お前は、その間にでも『真王の証』の旅をしてろよ!」

「いや、それも無理じゃん! だって紋章無いんだよ。それに、僕は命を狙われてるんでしょ? ジャニィの護衛がないと、僕死んじゃうよ」

 王子が屁理屈のような我儘でジャニィに迫った。


 ジャニィにしてみれば、一刻も早く祭事長から事の真相を聞き出したかったが、王子の言っていることにも一理あると思った。この状況で、こいつを一人にすれば、確かに命を狙われる可能性もあるだろう。


「うーん……、じゃあ、どうすんだよ」

 ジャニィは唸った。

「シンクフォイルを追わない?」

 王子は、先ほどから丸めていたパンを口に入れると、そのまま続けた。

「シンクフォイルに会えばさ、紋章も返してもらえると思うんだよね。そうすれば、僕の『真王の証』の旅もできるし。それに、マスケスに何を言われたかも聞けるんじゃないかな?」


 ジャニィは腕を組んで本格的に悩みだした。

 シンクフォイルか……、たぶん徒歩で旅をしているはずだから、そう遠くまでは行っていないだろう。それに、王子が直接会って、生きていることを知れば、確かに紋章は取り戻せそうだよな。しかし、祭事長に何を吹き込まれたかは聞けても、祭事長の目的を知ることにはならないだろうな……。参ったな。


 そのとき、王子がまた話しかけてきた。

「ねえ、ジャニィ、紋章を取り戻して、僕が直ぐに言葉を刻めば『真王の証』を得る旅は終わらせられるよ。そしたら、王宮にも戻れるんだからさ。やっぱ、そっちのが良くない?」


 ジャニィは顔を上げた。

 そこには呑気にパンを頬張る王子の顔があった。

「おまえは相変わらずだな……、調子の良いことばっか言いやがって。分かったよ。取り敢えずシンクフォイルを探してみるか」

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