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Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
第一〇章 王宮書記官の旅5(真歴一四九八年二月)
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6.調査

 ジャニィと王子は、小屋の横にある墓を調べていた。

 どうやら、即席で作られた墓だが、犬用ではないみたいだ。

 ジャニィの目の前にある木材には、ダウリカと彫られていた。

「おい、これ人の墓みたいだぞ。ダウリカだって。そっちは?」

 ジャニィは右側で同じように墓を調べていた王子に問いかけた。

「うん、こっちはボーモンティア様の墓みたいだよ。でもなんで、こんななんだろ?」

 王子が疑念の表情を浮かべていた。

「普通じゃないよな? 荒れ地の領主ったって、一応王族だろ? こんなちっぽけな墓じゃないだろ、普通は……」

「そうだね。普通なら王宮の墓地に埋葬するはずなんだけど……」

 王子は腕を組んで何かを考えているようだった。

「ねぇ、ここにあるのは、ボーモンティア様とダウリカって人の墓でしょ? たぶんだけど、ダウリカってのは、この小屋を使っていた執事だと思うんだよね。で、アルバはマスケスが連れて行ったんだよね?」

「うん? そうだな……」ジャニィは王子の方を見た。

「じゃあさ、シンクフォイルは?」

 王子に聞かれ、ジャニィは辺りを見回したが、シンクフォイルの墓らしいものは見当たらなかった。

「ないな……、シンクフォイルの墓がないってことは、この墓を作ったのはシンクフォイルってことか? じゃあ奴は生きてるのか?」

「だよね!」王子の顔がパッと明るくなった。

「いや、そうでもないか?」

 ジャニィが、自身の発言をすかさず否定した。

「あっちを見てみろ。あの焼け跡、シンクフォイルは向こうで焼け死んでるかもしれないぞ」

「えっ! そんな不吉なこと言わないでよ!」

 王子が遠目で焼け跡を見ながら言った。

「じゃあ、向こうの屋敷をもう少し調べてみるか」

 ジャニィは王子を促すと、先ほどの焼け跡へ向って歩き出した。


「あっ、ちょっと待って!」

 ジャニィが振り向くと、慌てた様子で王子が自身の体のそこかしこを触っていた。

 何やってるんだ? あいつは? ジャニィがそう思っていると、王子が叫び声を上げた。

「うわ! ないよ! ジャニィ! 『王家の紋章』がないよ!」

「何がないって?」

 ジャニィは踵を返して王子の元へ戻った。

「なんだよ? 何がないって」

「『王家の紋章』だよ。ここに入れてたのに無くなってるんだ!」

 王子が胸倉に右手を突っ込んで、ワシャワシャとまさぐっている。

「旅で言葉を刻むっていう、あれか?」

「そうだよ! あれがないと『真王の証』を得たことにならないんだよ!」

「なんで、そんな大事なもん失くすんだよ? 小屋の中にでもあるんじゃないか?」

 ジャニィがそう言うと、王子は一目散に小屋へ駆け込んで行った。


 まったく、相変わらずポンコツ王子だな。あの頃からちっとも変ってないな。

 ジャニィは場違いと分かっていながら、なんとなく微笑ましい気持ちになった。

 しかし、それと同時にマスケスが言っていたことが引っ掛かった。


 民のために一刻も早く王になる?


 本当にそんなことを言うのか? この王子が?


 そこへ、青い顔をした王子が小屋から飛び出してきた。

「ジャニィ……、やっぱり無いよ……、どうしよう……」

 王子が情けない声で失望を顕わにした。


 民のため? 嘘だろ?

 ジャニィは王子の姿をまじまじと見つめていた。

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