2.形見
ジャニィが市庁舎跡に着くと、そこには既に人だかりが出来ていた。
その人だかりの制していたのはユガレス軍ではなく、なぜかオークオコイ軍だった。
オレンジ色のローブをベースとした軍服姿の兵士達が押し寄せる群衆と対峙していた。
その人だかりの中に身を屈めて這い出してくるユガレス兵の姿が見えた。
ジャニィは人だかりを縫って、ユガレス兵に近づいて行った。
「おい、ちょっと聞いていいかい?」
ジャニィはそう言ってユガレス兵の肩を掴んだ。
肩を掴まれたユガレス兵は一瞬体をビクンとさせ、振り向くと同時にジャニィに掴みかかった。
「うわぁ、なんなんだ?」
ジャニィはユガレス兵に押し倒された。
「この野郎、俺はオークオコイの捕虜になんかならないぞ!」
ユガレス兵が必死にジャニィを押さえつける。
「なんだよ? いきなり!」
ジャニィが手足をバタつかせて抵抗していると頭の上でアイソレシアの声が聞こえた。
「離しなさい!」
アイソレシアは覚束ない手つきで、所々剥げかけた赤いレインボーガンをユガレス兵の額に突きつけた。
するとユガレス兵は上目遣いでレインボーガンを見ると、ヒィと情けない声を喘げて一目散に逃げて行った。
「大丈夫?」
アイソレシアが猫の手をジャニィに差し伸べる。
「ふぅ、助かったよ。アイソレシア」
ジャニィはアイソレシアの猫の手を握り立ち上がると、服の汚れを手で払った。
「なあ、いつからそんなもんを持ってるんだ?」
ジャニィはアイソレシアのレインボーガンを見つめている。
「ママの形見よ」
そう言うとアイソレシアはレインボーガンを抱きしめた。
「アイソレシア、そのレインボーガン、姉さんのにそっくりだ」
その時、なぜかジャニィは消息の分からない姉が、もうこの世にはいないのかもしれないと感じた。