表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Journal Journey ~魔王罪として処刑する~  作者: 柚須 佳
第七章 印刻の鎧(真歴九九九年一月)
53/87

6.死とは

 王子がイソダムの家の扉を開けて中へ入ろうとすると、突然大声で中からイソダムが叫んだ。

「王子! ダメです! 家の中へは入れないでください!」

「なぜだ?」王子はそっとジェニーの身体を床に置きながら聞き返した。

「そのジェニーさんの身体はちょうど冷凍保存されている状態です。中に入れてしまえば身体そのものも死んでしまいます」

 イソダムが戸口までやって来てそう説明した。

「また分からないことを。冷凍保存だと? ちゃんと説明してくれ」

 王子はそう言ってジェニーの身体を再び担ぎ上げた。

「まずは外へ行きましょう」そう言ってイソダムと王子は家の外へ出て行った。


 王子はジェニーの身体をそっと雪の少ない軒先へ置いた。

「ここでいいか?」

「いいでしょう? 出来れば少し雪を掛けておいてください」

「雪を? 可哀想だろ?」王子が反対する。

「可哀想でも仕方ありません。保存ですよ。」イソダムが言う。

「しかし、足のところを怪我してるんだぞ。大丈夫なのか?」

 王子はジェニーの太ももの部分を指して言った。

「まあ、これくらいなら大丈夫でしょう。生き返らせる時に肉体も少し遡るはずですから」

 イソダムはあっさりとそう言って続けた。


「では、王子。今度は氷のドームを作るために氷の芯を集めて来てください」

「氷の芯だと? なんだ? それは?」

「氷の精霊の心臓みたいなもんですよ。これを五つ程集めて来てください」

「何に使うんだ?」

「ジェニーさんを生き返らせるには氷のドームが必要なのですよ。そこに光を集めて虹を作ります。その先は分かるでしょう?」イソダムはちらっと王子の方を見た。

「爆発か?」王子はやれやれと言う表情だ。

「で、それで本当にジェニーが生き返るのか?」王子が尋ねる。

「ええ、そもそもジェニーさんは死んでいる状態ですが、通常とは少し違います」

「と言うと?」王子が促す。

「ジェニーさんの肉体はここにありますが、本質はまだ未来にあります」

「本質? 魂みたいなものか?」

「そうですね。なので未来にあるジェニーさんの本質部分の時間を遡らせます。そうすれば元の身体と一致して生き返るでしょう」

「相変わらず分かりにくいな」王子が不平をもらす。

「そうですか? では、そもそも死とはなんでしょう?」イソダムがまた講義を始めた。

「考えたこともないな」王子が答える。

「死とは肉体時間の停止です。ですが本質である部分、王子の言うところの魂のようなものには時間の停止はありません。なので、すごく簡単に言ってしまえば魂の時間だけが過ぎ、肉体がついてこれなくなること。これが死となるのです。なのでジェニーさんの場合も基本的には死なのですが、本来とは逆で肉体だけが過去に戻ってしまった状態です」

「なるほどな。なんとなくは分かってきたが、お前の講義のおかげで、ずいぶん暗くなってきたぞ。氷の芯は明日でも大丈夫か?」

 王子は冷え込み始めた空気を吸い込み少し咽せた。

「そうですね……、問題ありません。明日でも大丈夫でしょう」

 イソダムはそう言うと王子を家の扉へ促した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ