5.ヒトノコ
不思議な子だ。と言っても、人魚の子を、人の子と比べて良いのかは分からない。
先ほど、祝福の儀式を終えると、体力を使い切ったのか、単純に睡魔に負けたのか、アンは腕の中でスヤスヤと眠ってしまった。
寝顔だけ見ていれば、可愛い少女なのだが、足元に目をやると、やはり、そこにあるはずの脚はなく、赤い鱗で覆われている。
紛れもなく人魚なのだ。
傍らで、話をしていると、つい忘れてしまいがちだが、やはり、この子は人ではない。
しかし、だから、なんだって言うのだ?
下半身が鱗に覆われているだけで、他の部分は人と同じではないか?
例えば、片足を失った人間だっている。指は? 腕は? 目は?
体の一部を失った人は、人ではなくなってしまうのか?
そんなことはないだろう。
であれば、両脚を失った人間と、脚が鱗なアンとの違いは、どこにあるのだろうか?
人というのは、どこまでが、人の形をしていれば、それを人と認識するのだろうか?
強いて言えば、人魚だから……そんな、悲しい理由だけで、あんなにも酷い目に遭う世界を許してしまって良いのだろうか?
しかも、ここは、フッカ王のユガレスだ。
あの寛大な王が治める国でも、この有様なのか?
世界というのは、こんなにも不寛容なのか?
王子は、改めて、この旅の過程で、フッカ王に会うべきだと思った。




