4.足取
しかし、一大事だな。
ジャニィはぶつぶつと独り言を言いながら手帳に書き留めていた。
「そういや、王子だが」兵士が王子の事を話しだした。
「なんだ?」ジャニィは顔をあげた。
「この街にいたんだよ。昨日まで」
「なんだと!」ジャニィは驚いた。
「王子はどこに?」ジャニィは続けて質問した。
「さあ、あの爆発に巻き込まれてなければいいがな。昨日もユガレスの奴らと一悶着あってな。王子がそれを止めたんだが……」兵士が口ごもる。
「止めたんだが? どうした?」ジャニィが先を促す。
「どうしてもフッカ王に会いたいって言ってたんだ。それで、ユガレスの兵を引き連れて市庁舎に侵入したやつを探すとかで」
「市庁舎に侵入?」
「ああ、数日前だがフッカ王の暗殺未遂事件があったんだ。それでユガレスもピリピリしていたとこにまた侵入者だ。そいつがヴォーアムの領土に逃げ込んで来たもんだから、そいつを探し出して、フッカ王に引き渡すつもりだったんじゃないかな?」
「それで? その侵入者を捕まえたのか?」ジャニィが尋ねる。
「いや、それは分からん。だが、夜に新聞社のやつと王子が一緒に市庁舎の下水道に入って行くのを見たって言っていたやつがいた」
「王子が? 新聞社のやつと下水道に? 侵入者を捕まえるはずなのに、なんで王子が下水道なんかに?」
ジャニィには疑問だらけだった?
「だからそれは分からん。詳しく聞きたければ新聞社にでも行ってみたらどうだ? あの辺は被害も少ないだろうからな」
「そうだな。姉さんの事も心配だしな」ジャニィはボソッと言った。
「なんだ?」兵士が聞き返す。
「いや、新聞社はオボステムタイムズかい?」
「ああ、赤いベレー帽はそうだろうよ」
「そうか、大変な時にすまなかった。馬車に幾分かの薬がある、そこの御者からもらって兵たちに使ってやれ」
そう言うとジャニィは御者に薬を出すよう命令した。